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始まり

「すみません……ここに行きたいのですが」

露店でお土産を売るおじさんに声をかけた。


都市ダマスに着いたリリーは、地図を見ながら事前に契約したアパートをめざす。


ダマスは音楽と明るい人の声で賑やかな印象だ。

路上では楽器を演奏する人がいて、拍手をおくる観光客がいる。

スーパーや洋服、花屋そして本屋まで、たくさんのお店が並んでいる。

駅前の大きな広場には時計塔があり、多くの若者が集っていた。


「お嬢ちゃん、外国人だね。旅行かい?」


「留学で。今日到着したばかりです。」


「そうかい。イスラーンは活気あふれた街だよ。楽しんでいってな!」

ワハハと笑いながら背中を叩かれた。


「この先のスクーを通った先にあるよ。」そういい地図に印をつけてくれた。


おじさんにお礼をいって、アパートを目指して足を進める。


…………


「わぁ!」

一歩道に入ると、おじさんが言っていたスクーという市場が広がっていた。

大通りとはまた違った異国の風景。

近隣の国の食べ物から雑貨などいろんなものが売っていて、買い物がとっても楽しそう。



「いろいろ見て回りたいなぁ!きっと多様な文化だからこその市場なんだろうな…」


写真をとろうと携帯をひらくと、時間がないことに気づいた。


「いけない!アパートの大家さんとの時間があるんだ。急がなきゃ」

スーツケースを運びながら、急いでアパートに向かった。


「こんにちは~リリーさんですか?」

アパートの前に椅子に座っているおばあちゃんが話かけてくれた。


「そうです!お待たせしてすみませんでした。」私は汗だくで答える。


「ようこそ、イスラーンへ。私はディルマよ。今日からよろしくね。」


「あなたの部屋は2Fの203号室よ」部屋を案内してくれた。


ドアを開けると、アンティークな家具が置かれていた。

木で作られた物ばかりで温かみを感じ、すぐに心惹かれた。


「可愛いらしい部屋で気にいりました!」笑顔で答えるリリーにディルマは微笑んだ。



それから水回りや火の使い方、ゴミ出しからスーパーや銀行など生活に欠かせないことを丁寧に教えてくれた。



「本当にありがとうございます!」


「はじめで不安なことばかりかと思うけどいつでも相談してね。」

ディルマは私の両手をとってぎゅっと握り笑顔で言ってくれた。


これはイスラーン流、【私は貴方を受け入れる】という、はじめましての人に心を許したらする行動だ。


私は胸ぎゅっとし、そっとディルマさんの手を握りかえした。



「よし。片付けよう!」

目の前にはす事前にシンから送った段ボールが積み上げられていた。



「さっさと終わらせるぞ~」長い髪をゴムでしばり気合いをいれた。



……3時間後



その後無事片付けもひと段落し、この日は近くのお店で夕飯をテイクアウトした。


明日は午前中に領事管理局にいって諸々の手続きを行わなければならない。

一週間後にはいよいよ学校がはじまる!!




■■■■■


次の日….


イスラーンの朝は祈りの音とともにはじまる。


「~~~~~~」「~~~~~~~」


「う….なにこれ?」


外からいろんな祈りの音が聞こえる。

イスラーンは多文化国家のため様々な宗派がある。そのためそれぞれ違う祈りがあるのだ。


はじめは音にびっくりし目が覚めたが、すぐに祈りであることに気付いた。

「シンにはなかったことが、ここにはある。世界は広いなー。」


少し早い時間ではあるが、せっかく起きたため一日の準備をする。



窓から外の景色を見ながら朝食を食べた。

「シンとは違う風景だな~異世界って感じ!」




その後領事管理局へと向かう前に、隣人に挨拶に向かった。

とっても素敵な若いご夫婦が住んでいた。



「シンからきたのか!遠かっただろ。ようこそイスラーンへ!」


「何か困ったことがあったらいつでも言ってね。」


「ありがとうございます!」


旦那さんはブラヒムさんで、奥さんはフェリスさんという。

週末に一緒にご飯を食べことになった。



「みんなとってもいい人たちばかりだな~」

イスラーン人は外国人に対し、寛大で自国愛に溢れている人が多いと感じた。



1階に降りるとディルマが掃除をしていた。


「ディルマさんおはようございます。」


「リリーさん、おはよう。気を付けていってらっしゃい。迷ったら近くのお店に入って聞くのよ~」


すると他のアパートの住人がぞろぞろ1階に降りてきた。


「あんた昨日飲み過ぎたんじゃないの?気を付けてね。」


「おはよう、ミーシャ。今日も暑いからね。」


「はは、ディルマさんにはバレバレだな~」


「ディルマさんも気を付けてね。いってきます。」



ディルマはこのアパートのお母さんのようで、住民全員に挨拶をしてくれる。




「ここのアパートにして本当によかった。」

彼らの会話をきいて安心した。


リリーは背を向け領事管理局へと向かった。



■■■■■


「ここが領事管理局….大きい……」

リリーは門の前にたち見上げた。


バスと徒歩でなんとかついた領事管理局は、とっても美しい建築物だった。

歴史もあり世界遺産にも登録されているようだ。


ここ領事管理局では、外国からきた人たちの住民登録や在留カードそして血液検査も行う。

また市役所のように生活のことを支援してくれる、外国人専用の窓口だ。



「結構混んでるなぁ。端っこに座って待っていよう。」


リリーは番号カードを持ち、自分の番号が呼ばれるのを待った。



今ここにいる外国人は、イスラーン近隣の西の人や北の人たちばかりだ。

しばらくすると自分の番号が呼ばれ、窓口に向かった。



「こんにちは~遠い異国ヤンから来る人って少ないから珍しいねぇ」

陽気なお兄さんが手続きをしてくれるそうだ。


「留学できました。」


無事必要な手続きも終わったが、陽気なお兄さんとの会話ははずんだ。

そこで少しばかり、リリーがここイスラーンでしたいことを話してみた。



「実はアルバイトとボランティア活動をしたくて…何か私でもできることってありますか?」



「偉いね~。アルバイトならいくつか求人広告がでてたからちょっと待ってて~」


ゴソゴソと棚から求人広告を探す。


「はい、どうぞ!」

その用紙には様々な職種が載っていた。

―レストラン、カフェ、外国人向け観光ガイド、スーパーのレジ打ち…―


「ありがとうございます。結構ありますね…学校と家から近いところはっと…」

リリーは地図と見比べた。


「ボランティアについては俺の管轄外だからちょっと待ってな~」そういい近くを歩いていたスタッフに声をかけた。


「ノア~これお願いできる?」


「はいはい。」


ノアというスタッフとお兄さんは同僚で仲が良さそうだった。


リリーはノアを見上げた。彼はイスラーン人ではなく外国人のようだ。

ブロンドヘアにグリーンの目で北の人の特徴だ。


「お忙しいところすみません。」私は頭を下げ事情を説明した。


「ボランティア活動がしたくて。」


ノアは私の顔をみて、一瞬驚いた。


「君どこかで…いやなんでもない。」


「…?」私はノアさんと出会ったことないよね?


ノアはいくつかボランティア団体のチラシをみせてくれた。


「教会なら毎週水曜日に身寄りのない子どもたちに向けてボランティアの人が学童保育を行っているよ。」

「あと日曜日には、宗派別のイベントのボランティアや都市病院で入院している人たちへの行事の手伝い

とかもあるね。」


「下に問い合わせフォームがあるから、興味があるところ連絡してみてね。」

丁寧に説明したくれた後、ノエは自分の仕事に戻った。



「一つ一つ丁寧にありがとうございました!」


リリーは2人に挨拶をし、今日もらった書類やチラシを鞄にしまった。


そしてウキウキした気持ちで領事管理局をでた。



”これからイスラーンでの生活がはじまるんだ!”




■■■■■


一方…


「シンからくるなんて珍しいね~」

昼休憩に入り、受付のお兄さんとノアは手続きにきた女の子について話していた。


「勉強にアルバイトとボランティアもか~。

俺が若かったころはもっと遊んでいたけどでなぁ」


「ノアどうした?」リリーの書類をみているノエに声をかけた。


「いやあの子どこかで見たことあるような気がして…」


「そうなの?若いのにしっかりしてるな~」


「いや。彼女俺らの一個下だぞ。」


書類に書かれている生年月日をみる。


「ええええええええええ」


シンの人は見た目が若かく見られる。

アパートの住人もリリーのことを、学生だと思っていたことは後から分かるのであった。


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