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夢と現実

ここはどこ…?

真っ暗な世界から光が差し込む。


私は左右を見渡す。

気づくと目の前には見知らぬ街が広がっていた。


足元をみると、石畳の道がつづきここは外国のようだ。


少し道を進むと、赤い光が見えた。


熱い…眩しい..


目の前に広がる光景をみて私は息をのんだ。


戦火の海となった街に避難勧告のサイレンと叫び声が聞こえる。


ボォォォォ


ウ~ウ~ウ~ウ~


逃げろ――― 


きゃああああああああ


気づくと横に見知らぬ子どもがいた。

その子どもが私に手を伸ばしてきた。


「お姉ちゃん……助けて」


■■■■■


ピピピピ…ピピピピピ。


「は!!!!!!」

目覚まし時計が鳴る音で目がさめた。


「夢か…」汗をびっしょりかいて目を覚ました。

リアルに感じた夢だった….


夢を振り返るように、ぼーっとしていると、家を出る時間を知らせるアラームが鳴った。


リーンリーンリーンリーン


「やばい!!時間ないじゃん!」携帯で時間を確認し、バタバタと出社をする準備をする。


…………


ガタンゴトン…ガタンゴトン…


「なんとか間に合った…」息を切らしながら、空いている席に座る。


周りに注目されていないかと恥ずかしくなった。


息をととのえ、周りの乗車客を見渡すと携帯をじっと見つめている人ばかりであった。


私は窓の外をみた。


マンションやショッピングモールを通りすぎる。


少し過ぎると海が広がった。


―今日もいつも通りの1日がはじまる―


会社からのメールを確認する。


到着まであと20分…。イヤフォンをし音楽を流す。


外の景色を見ながら、今日の一日の流れをイメージするのがルーティン。


……今日もキラキラ光る海がとても綺麗だ……



ここはシンという、私が生まれ育った国だ。


農業も教育も盛んで、国民全員の生活水準が高く住みやすい国。


なんでも手に入り、自由に生きることができる。


当たり前に義務教育をうけられ、自由に職につけ、食にも困らない。


休みの日は、趣味のショッピングもガーデニングもできる。


そんな世界で私は生まれ、穏やかに生きてきた。


■■■■■


会社に到着し自分のデスクに荷物を下ろした。


すると向かいに座る後輩の女の子がすでに出社をしており、笑顔で挨拶をしてくれる。

「リリーさん、おはようございます!」


「おはよう、ナナちゃん。週末ゆっくり休めた?」パソコンの電源を入れながら、たわいのない会話をする。


スタッフ全員が出社をし、軽いミーティングをして1日がはじまる。


「週明けだから、バタバタするけれど優先順位をつけて一つずつ処理していきましょう。」

上司のアメリアの一言で、スタッフの士気が高まる。


私が務める会社は、貿易会社。様々な国と日々やり取りをしている。


忙しい日々ではあるが充実している。


この会社に勤めてもうすぐ6年がたち、気づけば後輩がたくさんできた。

元気いっぱいで積極的に働く後輩たちに、会社に新しい風と光がそそぐ。


もちろん仕事は、楽しいだけではなく年数を重ねるごとに仕事の量や役職も変わり、人間関係に悩まれることもあった。


けれどそれが自分への成長にもなった。

チームで働く上で、自分と他人の仕事の姿勢には違いがあり、同等のレベルを求めてはいけない。

そして己の価値観を押し付けるのではなく、相手の価値観に寄り添ってみることを学んだ。


コミュニケーションは難しい。伝え方一つで人を傷つけてしまうのだから。


…………


お昼休憩になり、ナナが旅行雑誌をみていた。

「今年の夏休みは海外にいきたいです~」


「どこにいきたいの?」リリーの同期、ミラが雑誌をのぞく。


「彼氏と南国にいってゆっくりしたいです!」恥ずかしそうに顔を隠すナナ。

「先輩たちはどこか行ってみたい国ありますか?」


「私はこの前の取引き先でお世話になった北の国に興味があるわ~」ミラは北の国がかかれたページをめくる。


「旦那さんとのハネムーンで、ですかね?」ナナがニヤニヤして聞く。


ミラは先月結婚式をあげたばかりで、ハネムーンは夏休みに取る予定のようだ。


そんな2人を私は微笑ましくみる。


「リリーは?」ミアが私に雑誌を渡してくれた。


私はふと夢でみた国を思い出した。


「そうね~。気になるところはあるんだけど、名前が分からないのよね….」

ページをめくるが、どれも似つかない風景。


「リリーさんっていつも一人旅ですよね?友だちとか恋人とかと行かないんですか?」

ふとナナが質問をした。お土産を渡す度に、誰とどこに行ったか質問されるため、みんな私が一人旅派であることを知っている。


「一人の方が好き勝手にできるから楽なのよね。」そういい視線を雑誌に戻した。


実は過去のトラウマもあり、私は恋愛に対し苦手意識が強いのだ。

どうしても相手に心を開くことができない。


「リリーはまだ元カレの言葉引きずっているの?」ミアがラテを飲みながら聞く。


う…。ミアは相変わらずストレートに痛いとこをつく。


これまでミアに恋愛相談をしてきて、私の弱さに幾度も怒られてきた。


腕時計をみて昼休憩が終わるのに気づいた。


「いつか本当に好きな人にあえるといいな~。はい!昼休憩おわり!戻りましょう!」

逃げるように自分のデスクに戻った。


「もう!リリー逃げない!」ミアの声が背中から聞こえるが無視をする。


ミアは私に幸せになってほしいといつも言う。

その気持ちだけで私は十分に嬉しい。


傷つく自分が嫌なのだ。


自分のことは自分がよくわかっている。


私は弱い生き物だ。






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