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飛竜討伐

 山の中腹にある崖の上、そこに飛竜たちは群れでたむろしていた。二十頭ほどだろうか、ギルドの受付嬢曰く「少し前から住み着いて、繁殖を始めてしまった」らしい。見れば、若い竜であることを示すはっきりとした緑色の竜が何頭か見える。その周りを、年経た竜の色である濃紺の飛竜が飛んでいる。

 ここは商人が通る街道でもあるので、飛竜が住み着いて行き交う人々を襲うのに困っており、報酬もそれなりに高額だった。

 それはいいのだが――。


「崖の上か。どう攻めるかな」

「問題ない。私が射よう。イルシュカ殿、奴らが向かってきたら援護を」

「あいあい。任された」


 射ると言っても、目視はできるがまだ遠い。俺の魔術弓など届くはずもない距離で、しかしトゥリアは弓を引き絞る。そしてよく見ると、つがえた矢が美しく輝いている。

 『流星のトゥリア』それがトゥリアの二つ名だが、初めて目の当たりにする。


「往け!」


 矢が煌めきと共に光の尾を引いて旋回していた飛竜へ突き刺さり、一瞬で魔術の爆発を起こす。悲鳴も上げずに爆散した飛竜に、他の飛竜が雄叫びを上げる。


「来たぞ。イルシュカ殿、頼む!」

「了解っ!」


 すぐさまこちらを見つけ、飛んで来ようとする飛竜の動きが鈍くなる。見えないが、おそらくイルシュカが風を操って動きを阻害しているのだろう。その間に二頭の飛竜がトゥリアの弓で射落とされる。

 まさしく流星のような矢が次々に空を裂き、飛竜へと刺さって爆発する。星の煌めきのような爆光は、トゥリアの二つ名を納得させるものだ。

 それはいい。それはいいのだが。


「私たち、やることないわね」

「……そうだな」

「まあ、皆が安全なのはいいことだ!」

「ふふ、それが一番ですわね」


 俺を筆頭とする近距離系や援護系の職種はやることがない。クロエやシウはやろうと思えば届かせられるのかも知れないが、この距離だと効果が薄い。近寄ってくれば攪乱のために呪術や歌を歌うだろうが、今の所は出番がない。

 そして近距離の俺とラ・ミルラは言わずもがな。万が一に備えて飛竜たちから注意を逸らしてはいないが、まるで鴨撃ちのようにトゥリアとイルシュカの連携で落としていくので、今の所危機感はほとんどない。

 よくよく考えればトゥリアは金空級であるし、イルシュカも元は金空級の実力を持っている。銀翼級が担当するような飛竜討伐は余裕ができて当然か。

 結局の所、半数の十頭を落としたところで飛竜が飛散し、そのまま山の向こうへと消えていく。


「……ひとまずはこれでいいか。まだ様子を見なければならないが」


 トゥリア曰く、飛竜は自分たちが不利になるとすぐさま逃走し、しばらくするとまた元の場所へ戻ってくるらしい。今回は繁殖していたためか、半数になるまで粘っていたが、一方的な展開でさすがに逃走していった。

 しばらく日を置いてまた偵察しに来て、飛竜が戻ってきているのかどうかを確認しなければならない。


「……それはいいが、あの討伐した飛竜の死骸、討伐した証を持って行かなきゃならないよな?」

「……」


 俺の疑問に皆が押し黙る。遠距離で一方的に攻撃できるというのは、戦いにおいて理想だ。無傷で敵を叩けるのだから当然だ。

 当然ではあるが、その後戦場へ向かわなければならない状況であれば、それも時に欠点となる。


「まあ、そう言うこともある」


 トゥリアが事も無げに告げる。

 距離もそうだが、崖の下は鬱蒼とした森だ。落ちた飛竜を捜索するのも一苦労だろう。

 多少げんなりした気分になりつつとりあえず向かおうとすると、シウが首を傾げる。


「近付けば、わたくしの歌で探れますよ?」

「え、マジ!?」

「ええ。反響と杖で森にあらざるもの、死体など探れます」


 その言葉に皆の顔が明るくなる。


「さっすがシウだ! よし、じゃあすぐに行こう。ぐずぐずしていると魔獣に死体が喰われることもあるからな」


 森の魔獣は貪欲だ。飛竜の死体も、明日の朝にはもう骨だけになっているだろう。今でさえ食いついてくる魔獣はいるかもしれない。

 現金な俺の態度に苦笑しながら、皆が着いてくる。

 結局落とした内の六頭だけが証拠の牙を剥ぎ取れ、あとはトゥリアの爆破で飛び散り、あるいは鼻の効く魔獣に食い荒らされてしまっていた。

 それでも、普通の依頼よりは実入りがいい。俺たちは満足して帰路へとついた。

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