生きて帰りましょう!
第三次大戦後、核の嵐が過ぎ去った地上へ、点在するシェルターから人々が恐る恐る顔を出した。
「本当に大丈夫なのかしら?」
ナノは調査隊に任命されたが、地上に出るのはとても怖かった。
「大丈夫だから派遣されるんだろ?」
ケンがそう言ってナノを元気づけた。
完全装備のキャタピラ車で荒野を進む。
「こちらサンダー号。応答願います」
ピー、ガガガ
「おかしいな?」
シェルターとの連絡がうまく行かない。
ドーン、ドドーン!
「なんの音?」
「わからん。とにかく慎重にいくぞ」
ナノたちの乗った装甲車は瓦礫の山をくぐり抜けて急停車した。
「何?」
どうやら、シェルターごとに調査隊が出ていて、お互いに攻撃しあっているらしかった。
「巻き込まれないうちに戻ろう」
その時、ナノは、シェルターとの通信装置が自立して、単体で動き始めるのを見て悲鳴を上げた。
「ナノ!ヘルメットつけて気密状態にしとけ!」
ケンがそう言いながら自分も身支度した。
「これ!通信機じゃなかったの?」
通信装置が変形して数本の脚で操縦席まで這い寄ると、操縦の主導権を握った。
「ナノ!装甲車から出るぞ!」
「なんでぇ?外はまだ生存に適さないのに!」
「だから気密状態にしてるんだろ!急げ」
二人が装甲車の扉を開けようとしたがロックがかかっていた。
ケンはシートを引っ剥がして車の骨組みをむしり取り、扉に差し込んでテコの要領でこじ開けた。
「ケン!ケン。なんてことすんの!?車壊れたらシェルターへ帰れなくなっちゃうじゃない!」
ナノが泣きじゃくりながら言った。
ケンが走行中の車からナノを抱いて飛び降りた。
ドガガガガ
無人の装甲車は他のシェルターから去来した乗り物と闘いを始めた。
「戦争は終わっていなかったんだ」
「ケン。ありがとう。あのまま乗っていたら逃げられなかった」
ナノが泣き止んで言った。
「さあてと。これから元のシェルターまで歩いて帰れるか?」
「戻っても中に入れてもらえなかったら?」
「その時は、その時考えるさ」
「わかったわ。…生きて帰りましょう」
「ああ。もちろん!」
二人は長い道程を歩きはじめた。