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第7話 特別試験の始まり

 20時30分615室


 先生から夕方渡されたメモだ。この時間にこの部屋で特別試験の説明があるそうだ。講堂のような広い場所で全員一斉にうけると思っていたから人によって時間と場所が違うのは意外だった。



 ご飯をホテルのレストランで終わらせた俺と中西、さらに同じくルームメイトの夏目は留学生のジンクも誘って4人で人生ゲームをしていた。



「あ、ボク。セツメイノジカンダ。」


「おお、ジンクもう説明かよ。ちゃんとルール聞いてこいよな」


「イワレナクテモ!ワカッテル!」



 すぐにジンクに返事をするあたり中西はジンクを気に入っているようだ。



 20分ほどたってジンクが帰ってきた。俺たちとしてはジンクがいない間は人生ゲームを進めるわけにも行かず暇をしていたのでやっとか。という雰囲気だった。



「おい?ジンク!試験ってどんなんだったんだよ?」


 やっぱ中西ジンク好きだな。うん。


「ヨクワカラナイケド、カードクバラレタ。」


「カード?!」


 思わず声が出てしまった。と、言うものも俺はこれまでの魔力の総テストだとか、模擬試合とかそんな感じだと思っていたのでちょっと意外だった。


「ウン。ソコニハ人狼ト市民ガカイテアルヨ」



 ごめんジンク。その説明じゃまるで人狼ゲームをするみたいじゃないか。それだと本気で遊びに来ていることになるじゃないか。俺たちは理解に苦しみ、とりあえずジンクが説明を理解しきれなかっただけだと言うことにして人生ゲームを再開した。




 時計の針は20時20分。そろそろ行かないとな。時間に遅れたら試験失格とか言われても困るし。俺は部屋を出て呼び出されたホテルの部屋に向かったがタイミングがタイミングだ。



 それも俺がちょうどギャンブルで負けて総資産100万円越えの1位から借金420万円をかかえる最下位まで転落した直後に部屋を出ることになったのでこれでは不貞腐れて逃げたみたいではないか。



「秋月って意外とこどもなんだなーw」


「あー、あいつは昔から人生ゲームガチ勢だからな」


「ニゲチャッタ」



 ほら案の定、扉の向こう側から悪口が聞こえてくる。てかなんで中西は昔からとか適当なこと言ってんだよ。俺、お前と人生ゲームしたの今日が初めてだよ。



 失意の中で615号室に向かう俺だったがエレベーターに見たことある顔が乗り込んでくる。



「あ!あなた秋月くんね」


「あなたはたしかーー、あ、そうだ同じクラスの梅園さん!」


「そうそう梅園莉子よ」


「あの、もしかして特別試験の説明会ですか?」


「え?う、うん。そうよ」


「もしかして615号室だったりしますか?」


「え、秋月くんもなの?」


「うん。よろしく、梅園さん」



 (ごめんねー、カノン)

 そんな心の声が流れていたことは当然秋月の知ったことではなかった。



 615号室に入るとそこにはもう1人見たことある顔がいた。



「お、梅園、秋月。君たちと同じグループだったのか」


 声の主はクラス1の優等生、一条英治だ。やっぱ優等生ポジ取ってるだけあって、来るの早いな。



「あ、一条くんと同じグループなら安心だわ。楽しんで試験を受けられそう」


 ちょっとその理論はわからなかったけど俺も同意しておいた。部屋の中に他にいたのは1組の女子1人と5組の男子2人組の計6人だ。



 時計の針が30分を指したところで部屋の中に若いムキムキの大人が入ってきた。たしかこの人は3組の担任の松中って人だ。



「ひーふーみー、、、ん?1人足りんぞ?いきなり失格者か?」



 声は予想以上におっさんだ。てか、怖い。

ドアがガチャっという音を立てて開いた。あー、やばいなー。この先生絶対ぶちぎれるぞ。15秒遅刻だ!失格!!とか言って。



「あ、遅れてすいませーん。1組の西園寺です!」



 ヤッベーーー、頭お花畑系だー。練習試合のあの雰囲気からは感じ取れなかったあー。



「うむ。あと1分遅かったら失格だったぞ。早くそこ座れ」


「先生の器のデカさに感謝でーす」


「ギャーギャー喚くな遅刻者が」


「すんませんー、」



 終始見ていてイライラするほどのナメくさった態度だった。普通ならば初見で生理的に無理なタイプだが、何を隠そう彼は1年生にして先日の練習試合で俺の研究室の先輩達を破っているのだから。



「遅いよーー、西園寺くーん!私1人かと思ってドキドキしちゃったよ」


「ごめんごめん村田!ちょっとエレベーター渋滞でさーー、」



 え、1組の大人しそうな女の子も頭お花畑系なの?嘘でしょ。。え、てかエレベーター渋滞って何、。



「ちょっと黙ってくれるか?早く説明させてくれ」



 これにはさすがの松中先生も参ったという表情だった。ようやく2人が黙ると松中先生は俺たちの前にカードを7枚置き話を始めた。



「とりあえず好きなカードを1人1枚取ってくれるか?あとその役職は絶対にこのグループメンバーに教えるなよ。教えた瞬間に特別試験は落としたと思え」



 俺を含めてグループメンバー全員は内容を把握しきれないままとりあえずカードを1人1枚引いた。俺のカードには「人狼」と書いてある。



「んじゃ、そのカードの内容よーく覚えておけよ。盗み見防止のためにカード回収するからふせて床においてくれ」


 カードを回収したのち松中先生はこう続けた。



「君たちの今のカードは特別試験における自分の役割を決めるカードだ。特別試験では人狼ゲームを行ってもらう…」



 まじで人狼ゲームだったのかよ。



 その後の松中先生の説明をまとめるとこんな感じだ。



 7枚のカードには人狼が2枚。市民が3枚。占い師が1枚。霊媒師が1枚。


 特別試験は先生たちが作る特別フィールドで行われる。当然マジックルームになっているため生徒達に傷は残らない。


 市民陣営(市民、占い師、霊媒師)の勝利条件は30分生き残るor人狼を全滅させる。人狼陣営は市民陣営を全滅させること。


 占い師は自分の指定した1名の役職を見ることができる。霊媒師は死者1名の役職を見ることができる。人狼は自身の魔力量が1.5倍になり、さらに相手の人狼が分かる。


 自身の勝敗や生存時間。勝利までの時間などにより個人の学年順位が決定するそうだ。



 そして俺は人狼。言ってしまえば市民は30分フィールドに隠れていればいい上に、占い師に2/5の確率で狼が誰かバレてしまう。仮に占いが外れてもあと役職不明は4人。そしてうち2人が人狼なのだ。もう分かるだろう。このゲームは狼側が圧倒的に不利なのだ。


 さてどうするか。とりあえず相方か俺のどちらかが占い師を騙らないとな。あ、そうだ相方。相方誰なんだよ。



「あー、そうそう。占い師と霊媒師には結果伝えるためのアドレスを後でスマホに送っておく。人狼にも相方が誰かを伝えるメールをあとで送っておく。んじゃ解散!次のグループが控えているからすぐ出てくれ」



 部屋を出て自分の部屋に戻る途中誰かからメールが来た。周りに人がいないか確かめたのちにメールを確認すると、そこには「相方西園寺龍平」と書いてあった。



 よりによってあの脳内お花畑か。それでも実力があるやつがペアだった。言ってしまえばこいつは1年生の中では頭1つ抜け出た実力を持つ。これはもしかしたらあるかもしれないぞ。そう思うと俺はやけに闘志が湧いてきた。


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