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第4話 沙羅双樹

すいません。今回の話は主人公一人称視点だけでは物語を書くのに無理があるので3人称視点も取り入れています。東雲室長を呼び捨てにする場面などは基本3人称視点と思っていただければ大丈夫です。

体育館通路で荒川研究室側はピリピリとしている東雲研究室側の真逆で談笑を楽しんでいた。



「室長!今日の対戦相手はあの沙羅双樹の東雲っすよね!あの東雲以外強いやついないってので有名な東雲研究室っすよね!」


「あまり調子に乗るな、一年坊主。東 雲 も 強 く な い」


「あっはー、そっか。我らが荒川さんに関われば東雲なんて取るに足りませんよねー」


「もういっぺんふざけたこと言ってみろ。レギュラー落とすからな」


「ええ?怖いこと言わないでくださいよ室長〜」





荒川研究室は簡単に言えば校内屈指の強豪チームだった。


室長にして校内トップの戦闘能力を誇る荒川を始めとしてレギュラーはもちらん、それ以外の選手までかなりの実力を保持している。



そして決戦のとき。我らが東雲研究室からは東雲室長、西宮副室長、桜野先輩、水谷さん、山田さんだ。


東雲先輩は魔法学名シャラソウジュ。平家物語の沙羅双樹が思い出されるが、その学名の本当の意味を知っているのは校長だけだ。


まもなく戦いが始まる。直前の作戦会議では東雲先輩が単体で突撃し、敵戦力を削ると言っていたが果たしてあの荒川研究室相手に勝つことなど可能なのだろうか。



バンッッ!!!!



銃音が体育館の中に鳴り響く。



始まるやいなや、東雲陣営から大きな噴煙があがり、またたくまに体育館全体に噴煙が広がりあたりが全く見えなくなった。正面戦闘で劣る東雲研究室側はやはり当初の予定通り奇襲作戦で行くようだ。その後、俺と中西が息をするのも忘れるほど試合に見入るのは言うまでもないだろう。






その頃、東雲叶人は自らたちあげた噴煙の中を駆け、荒川陣営へと向かっていた。オールルッキングという強化系魔法によりこの噴煙をものともしてないようだった。



(見えてきたな。が、いきなり旗を取りに行くのはさすがに危険だろう。まずは手堅く1兵削る!)



人影に東雲が急接近し、アイスカッターという氷の剣を生成する技で剣をつくりあげた。剣は日本刀に酷似しており、東雲は殺気を隠しながら両手で持ち直し、スッと剣を構えた。



残りはバッサリ切り、手堅くまずは1人死亡させるだけだった。



ちなみに今回を含めて試合中は先生によりマジックルームという空間が作られ、怪我を負ったり死亡した場合もも試合開始前と同じ状況に戻れるという安心安全のシステム付きなので容赦なく相手を沈めにかかることができる。



東雲の剣が人影を切りつけた。人影は真っ二つにわれ消滅した。なお噴煙は当たりに覆い続けている。



さらにもう1人沈めようと試みる東雲だったが1人目を沈めた手応えになにやら違和感を感じた。



(やられた。これは人間じゃない。)



東雲の直感は当たっていた。人影は敵チームの魔法によって作られた精巧なダミー人形だった。そしてダミー人形の念が消えたことにより敵チームに東雲の位置がバレた。



「エアブレイカーァァア」



荒川は強烈な風魔法を東雲付近にぶつけた。

噴煙は晴れた。東雲にとっては隠密な暗殺作戦から急に5vs1の正面戦闘の形へと移り変わった。それは悪夢以外のなんでもなかった。



(撤退しなければ、、、)



東雲は体を急転回して徹底を開始した。が、それをホイホイと逃す強豪荒川研究室ではない。5人に囲まれた東雲はとある覚悟を決めた。



「吹雪」



東雲は急ぎ口でその言葉をいい辺りに吹雪を吹かせた。だが、たかが吹雪。敵に与えるダメージは皆無でせいぜい一瞬怯ませる程度だった。



せいぜい?いや。強者同士の戦いにおいてこの一瞬は命取りとなった。


東雲はその一瞬の隙をついてアイスツリーを荒川に展開。荒川は足にまとわりついた針葉樹林型の氷塊をとくまでに数秒の時間を有した。



もう結果は言わなくとも分かるだろう。東雲はその数秒の間に体を張って守りに入った荒川陣営の2年生の炎魔法を受けながらも荒川を切りふせた。



東雲叶人という男は1vs5という不利な状況で自分をはるかに超える戦闘力を持つ荒川を倒したのだ。が、しかし対する東雲のダメージも大きかった。



切る直前にもろにくらった炎魔法のせいで自身が深いダメージをおったのは勿論。



さらに唯一の武器アイスカッターを失った。普通ならば全力で逃走する場面だが残念ながらこの男、東雲叶人は違った。



その場でもう一度小規模ではあるが噴煙を放出し、敵チームにあたかも撤退を仕掛けるように見せかけた。

だが当然、彼が仕掛けたのは撤退ではなかった。



「アイスフォレスト!!!」



普段は滅多に大きな声を出さない東雲が大声で技を叫び相手の3年生女子の腹部を巨大なツララのような氷塊で貫いた。東雲は小規模で濃い噴煙に紛れ3年生女子に急接近、強力な氷魔法を用いて一撃で沈めたのだった。



その後、残る3人にも果敢に戦いを挑む東雲だったが、結局、土魔法で拘束され、そこに雷魔法。炎魔法をぶつけられとうとう倒されてしまった。



が、東雲1人で2人を撃破した。しかも1人は残る東雲陣営全員で当たっても恐らく勝てないだろう正面戦闘の大物荒川だ。



荒川研究室vs東雲研究室。その開幕戦は室長、東雲叶人の頭脳プレーにより東雲研究室の完全勝利と言っていいだろう。たしかに東雲の損失は大きいがそれ以上に得たものが多かった。それが勝ち負けなのだ。



「お前らしくなかったな、東雲」


「あの時おれに逃走成功は不可能だった、ならば出来る限り足掻くのは不思議なことじゃないだろう」


「さすがに油断したぜ。噴煙を晴らした時点で完全に東雲は潰したものだと思ってしまってた。すまねえな」



東雲と荒川は強制転移させられた先の控え室で試合の行方を見守りながら話していた。



「だが、終わったな東雲。お前が死んだ時点でお前のチームがうちに勝つことはできない」


「こちらは4人。そっちは3人だ。旗取り合戦において数的有利は直接勝利につながる。」


「だからなんだ。混戦の中でお前のとこの雑魚を1人叩き潰せばそれでもう数的有利はなくなる」


「たしかに個々の力でお前のとこのやつに勝てる駒はもううちには残っていない。しかし駒と駒を合わせれば相手の1駒を取ることなんて容易い。」


「アホかおまえ。それなら6人必要だろう」


「そこが脳筋なんだよお前は。戦況の運び方1つで2vs1を何度も行うことなんて簡単だ」


「まあ、試合の結末を見れば分かることだ」




他の学校の3倍も4倍もある広大な体育館の端と端で3人の荒川研究室チームと4人の東雲研究室チームが睨み合っている。



互いに微動だにしない緊張感が数秒続いたのち、東雲研究室チームの西宮先輩と桜野先輩が体育館の逆側に駆け出したのを合図に逆サイドからも1年生1人を旗の防衛につかせ上級生が体育館中央に走り始めた。



直後体育館中央で大きな爆発が起きた。西宮先輩はこんなに大きな爆発を起こせない。相手によるものだろうか。



そして、その爆風とともに弱々しい西宮先輩が倒れ出してきた。そして間髪置かず、吹き飛ばされるように相手の上級生が吹き飛ばされてきた。



西宮夕輝の得意魔法。それは他の人がこんなの魔法でもなんでもないと軽視していた自己筋肉強化系魔法だった。



恐らくこの学校に彼ほど重い一撃をもったパンチをうてる生徒はいない。



まして爆発をもろに受けながら敵を殴り飛ばすなど、常人のできることではない。





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