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第19話 花火

 幼少期、俺には『二重花火』というあだ名があった。自分の同級生や先輩後輩に留まらず、町の大人たちまでもがそのあだ名を知っていただろう。もちろん全員が全員そのあだ名で俺を呼んでいたと言われれば、それは間違いになるが知名度が異常に高かったのは事実だろう。



 その知名度のレベルはもちろんぽっとつけられたあだ名のそれらとは明らかにレベルが違った。脱糞野郎とか好きな人の名前があだ名になるとか…、どちらかというとそういう系統の【なんらかの記憶に残るようなインパクト】を残した上で付けられたあだ名だった。



 ただ残念ながらそのインパクトのレベルが告白とかうんこ漏らしなんかとは1段階も2段階も違ったのだ。



 俺は幼少期、自身の身体をホタルのように発光させることができた。ただ発光させるくらいは町の一流の魔法使いなら簡単にできたことだが、小学校低学年の段階で発光させられる…。それも髪の毛一本に至るまで全身をさせれるのは全員にインパクトを与えるには十分だった。



 身体が光るだけなら俺は才能がある少年として町で崇められていただけに済んでいただろう。



 だが、それにプラスして俺には発光している間のみ自身の運動能力、魔法能力、知能、さらに運に至るまで全ての能力が元の10倍以上高くなるという原因不明の特性を持っていた。



 幼き無邪気な俺は理性という言葉を知らずその能力を欲望を叶えるために使ってしまったことが幾度かあった。




 誤解しないで欲しいが、これはサイコパスとかではなく、虫を悪戯に踏み潰すような誰もが経験したことのある幼少期の出来事となんら変わりはない。



 ただ規模が違いすぎただけだ。



 さらに不思議なことに発光能力使用中の記憶は能力使用終了後1つたりとも残らなかった。周囲の話によると発光中の俺は普段の俺より暴力的かつ野心的な性格だったそうだが実際のところは本当に何も知らない。だから能力が上がっているかどうかも正直わからない。



 要するに俺は能力を使用することで異常に強い別人格の俺に変わってしまうという特殊な魔法を幼き頃から持っていたのだ。いや、魔法かどうかすら正直なところ分からない。



 本当に謎の能力だった。



 そして俺はもう1人の自分に恐怖を感じ、そのうちその能力を使わなくなった。



 きっと核と名乗るやつが言ってる能力はこれのことだろう。






 「それで使うんか?使わへんのか?はよ決めんかい、エデンのお前はそう長く持たんのや」



 「悪いがあの能力を使う気はないんだ。」



 「なにいってんねん兄ーちゃん。あんたに負けてもらうわけにはいかんのやってさっきから何度も言うてるやろ」



 「何度言われても嫌なものは嫌だ。あの能力を使って勝利するくらいなら俺は負けを受け入れる。」



 「なー、兄ちゃん。なにがそんな嫌なんや?昔はバシビシ使ってたやないか。それに能力を使いこなせるようになるのは兄ちゃんの在校中の目標の1つやないか」



 「たしかにそうだけどそれは夢みたいな目標とあって現実性はほとんどないんだよ、できればいいな…みたいなやつで別に入学当初のこの時期から取り組もうなんて思ったなかったんだよ」



 俺が核に言ったことは全て事実だ。俺はたしかにもう1人の自分を使いこなせられるようになりたい。使いこなせれば俺はきっと世間に名が広く知られるような魔法使いになれるはずだ。



 それでもこんな特別試験中に発動していい能力じゃないと思うのもまた俺の本音だ。



 論争を続ける俺と核だったがその論争をは唐突に打ち切られることになる。。数分(時計はないため体感だが)論争したところで核が



 「もーーーええわ!ごちゃごちゃやかましいねん兄ちゃん。もう優しく説得するのは終わりやで、使えゆうたら使わんかい!このアホタレが」



 その言葉の直後、学校の校内アナウンスを彷彿させるような少し反響した音がその空間全体に響き渡った。



 『おい無能な俺、悪いがそこ…どいてもうぞ』



 その短い放送の後のことは覚えてない。俺がふと気がついた時には視界にはエデンの世界が写っていた。そして何故だか梅園がいなかった。ああ…やってしまったな…。



 耳穴から外れ、その場に垂らされたイヤホンを再びつけるとそこからは『おい、応答しろ。大丈夫か?』という西園寺の声が聞こえてきた。



 『ああ撃破した。』



 それだけ伝え、その場を離れるために俺は窓から飛び降り夜の街を走った。

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