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第1話 先生は伝説の魔術師

拙い文ですがご一読ください。文のミスから今後の展開、もちろん作品に対する感想もなんでも気軽にコメントください。できるだけ皆さんの意見を取り入れながら執筆していくつもりです。ご愛読よろしくお願いします。

 おっ、いいねが49にリツイートが12か。まあバズりにはほど遠いが、いつものいいね1桁、リツイート0に比べたら随分マシだ。やっぱりバカッコイイ魔法動画は安定してなかなか伸びるな。



 朝起きて始めにすることはいつもと同じこのいいねとリツイートのチェックだ。これは大手SNSのMYLIFEによる機能の1つの、短文と短い動画や数枚の画像を組み合わせる「呟き」において自分のフォロワーを含めた全国の人から受ける「呟き」に対する評価のようなものだ。



 これが千や一万いいねとなると一般的にバズったと言われる。語源は俺もよくは知らない。こんどMYLIFEの雑学袋で聞いてみるとしよう。



 ふとスマホの上部を見ると6時50分の文字が映し出されていた。まずいな、始業は8時、このままゆったりスマホを見ていては間に合わない。俺はスマホをコンセントに挿しっぱなしの充電器に再び繋ぎ、朝の支度を急いだ。




 時計の針は7時45分を指している。なんとか身支度が間に合った俺はいつも通り1年寮の南口から徒歩1分の桜の木広場で親友の中西伊吹を待っていた。



 入学式の時にはまだ今にも爆発しそうな赤い蕾だった桜たちはいまや満開を超え、1枚、また1枚と地面におちはじめている。その花びらたちは広場の中心にそびえる桜の木からその周りを囲む池にたどり着き、花びらが水面を染める幻想的な風景を作り出している。



 水面と俺の間を割って長身の男が視界に入ってきた。こいつが中西だ。俺の驚く顔を見てケラケラと笑っている。子供心がまだ彼の内部には存在しているため、いいやつではあるんだが、たまにムカつく時もある。


 こいつは俺が小学校の頃からの馴染みで、この学校にも一緒に受験勉強に励み、無事に2人で合格を果たした。まあ、本当は3人のはずだったんだがその話はまたいつかにしよう。



 水面にまた1枚桜の花びらが落ちた。不運にもその花びらは着水直後に風に煽られ、沈んで行ってしまった。



 俺たちが合格し、通い始めてから約1週間が立つこの高校は「国立ソルセルリーアカデミー」という由緒ある魔法学校である。



 魔法学に特化した国立の高校がほとんどないのは言うまでもなく、さらにこのソルセルリーアカデミー、俗に言うSSAは国内でも3本の指には入る名門校である。



「うぇぇい! ディアーブル! おっはよう」


「お前よく2分も遅刻しといてそんなテンションマックスで話しかけれるな、あとディアーブルはやめろよ。慣れないから」


「おいおい? せっかく校長が入学時に決めてくれた魔法使いとしての俺たちの名前だぜ? 俺のこともイブって呼んでくれよな?」


「お前の場合は伊吹もイブもキがつくかどうかだしどっちでもいいだろ」


「あー? 言ったなお前? 俺もそこ気にしたんだから言うなよな」


「絶対校長適当に決めたよな、お前の名前」


「それな」



 中西は少し不貞腐れた表情で短絡的に返事を返し、話を終わらせた。時計の針は7時56分を指している。どうやら俺たちは今日もギリギリ学校の門をくぐれたようだ。



 そうえば今日は担任発表の日。ここは他の学校とは違い最初の1週間は一般人が魔法の世界に入るための様々な儀式やテストが行われるので本格的な授業が始まるのは毎年入学からしばらくたってからとなる。



 ま、とは言っても国のお偉いさんや魔法世界のお偉いさんの話を毎日何時間も聞いていただけで、そんなに俗世離れしたことをしていたわけではないが。もちろん寝てなんていない。うん。断じていない。



 クラスに入るとどこかで見た顔の白髪の老人がいた。



「おい、だれだあのじーさん?まさかあれが俺らの担任か?」



 中西が俺に耳打ちしてくる。遅刻寸前と立ち話とは我ながらご立派な御身分なことだ。



「いや、ありゃどっかで見たことある顔だ。この学校のお偉いさんか、なんかだろ」


 そうは思いつつも俺は中西に耳打ちで返事を返した。


「だ、だよな?さすがに担任が爺さんは萎え萎えだぜ?この学校は可愛い先生が多いから入ったみたいなもんなのよによ」


「でもなんでそんな人がこのクラスにいるんだろうな」



 耳打ちで俺と中西が謎の老人について話しているとその老人が下に向いた目線を急にこちらに向け



「そこ!もう8時過ぎてますよ!早く自分の席に座りなさい」



と、注意してきたため、俺たちは慌てて席に座った。



「今日はギリギリ遅刻だねえー、ディアーブル」



 こいつは隣のクラスの夏目、下の名前はまだない。こいつはスポーティーな見た目とは裏腹に休み時間には数人でずっとスマホをいじっているようなオタクだ。



 オタクの定理なんて知らないが知識のない俺からしたら棒振って踊ってるのも学校でアニメを見ているのも同じオタクだ。


「うるせえよ、あの爺さんのせいだ。ってか俺のことディアーブルって呼ぶなってば!俺には秋月遊馬っていう名前があるんだよ」


「わかったわかった、秋月くんw」


「ほらそこ! ごにょごにょうるさい! 静かにしなさい!今から担任発表ですよ」


「おい、お前のせいで怒られたじゃねーか夏目。」


「すまんすまん秋月」



 クラス全員(と、言っても俺と隣の席の夏目だけだが)が静かになったことを確認した老人はふーーっと一度ため息をついた後にゆっくりと話し始めた。



「えー、ご存知かと思いますが私は副校長の道重です。」



 おう。すまないが初耳だ。



「このクラスは他のクラスと違って特別な先生に担当してもらうことになったので私が紹介に参りました。どうぞー、月城先生」



 月城先生。その言葉で生徒の大半がとある人物を浮かべた。月城十六夜。この国の5大魔術師の1人であったが昨年33歳という若い年で突如現役引退し、後続育成にあたると発表した僕たち魔術師見習いの憧れである人物である。扉が開き月城先生が入ってくる。



 嬉しいことにこの淡い期待は当たったようだ。そこには小さい頃テレビで幾度も見た月城十六夜の姿があった。



 こういう時は意外に落ち着いているものだと聞いたが実際その通りだった。数人の女子生徒は興奮した様子で奇声をあげていたが、それを除くほとんどの生徒は喜びを胸に隠して冷静を装っていた。



「月城十六夜です。担当教科は戦闘魔術を主として魔術系全般。あ、あと数学の免許も一応持っています。」



 普段のロングコートのような魔法服とは打って変わり、キッチリとしたネクタイとスーツでそれは伝説というよりは平凡という言葉が似合う長身の男だった。



 よって俺が抱いた印象はテレビで見る自分への自信に満ち溢れた人物とは違い、どちらかというと謙虚な印象だった。しかし、その謙虚なセリフすらも中学の先生とは次元の違う重みがあるため元5大魔術師と言ったところだろう。



ばっ!!!



 誰かが勢いよく手をあげたようだ。まあ有名人を前にしろ浮かれ上がってしまったバカでもいるんだろうと音の方を見ると、残念ながらそれは中西だった。



「先生はなんで先生になったんですか?」



 しかも予想以上にストレートな質問だった。



「ごめんね、えっと、、中西くん。その答えは記者会見で話したから見といてもらえるかい?」



 そうは言っても記者会見で月城十六夜が話した引退の理由については今は答えられないの一点張りでその内容を明らかにしていなかった。そして当然中西もそのことを知っていた。



「でも記者会見では今は答えられないしか言ってませんでしたよね?その答えるときが今なんじゃないすか?」



 うわーー。中西のやろうそこ追求するのかよ、礼儀なさすぎだろ。昔からだけど。そんなんだから年上の魔術師希望の先輩たちと何回も喧嘩になるんだろうが



「中西。もう一度だけ言うぞ。答えられない」



「そこをなんとかお願いしますよー」



 まずい、それは攻めすぎだろ中西。俺の嫌な予感があたり月城十六夜の顔はみるみる今までのニコニコとした雰囲気の表情から真っ黒な雰囲気に変わっていき、目が殺意に帯びた様子に変わっていった。それはテレビで見る伝説の魔術師そのものだった。声も気のせいか少し低くなったような気がした。



「氷魔法アイスエイジ」



 中西の方に向けられた男の右手から氷塊が次々と連立して生成され、その集合体は中西を貫いた。いや、正しくは中西にぶつかる直前で分裂して中西をすっぽりと覆って拘束した。



 その時の俺を含めた生徒たちは当然大パニックだった。いや、大パニックというよりは静かに混乱していたという所だろうか。各々の頭の中に負の感情が乱立しキャパオーバーしていた。



「次はないぞ、中西。いやお前たち生徒全員だ。先生が嫌だと言ったことはやめてほしい。もしやめられないなら実力行使に入るぞ。ここでは教育目的の体罰は後遺症が残らない程度なら認められているということを忘れるな。」




 中西は泣きそうになりながらうなづいていた。そしてそれと同時にその他の生徒も男への期待と歓喜の目から怯えたような小さな目へと変わっていた。



「では朝のホームルームはこれで終わりだ。1限は魔法化学だから遅れないように急いで第1化学室に向かえよ。理科棟3階だぞ。」



 その男。いや、月城先生はすでに最初の表情に戻っていた。そしてこの朝のわずか1分足らずにしてこの先の学園生活が多難なものになることが分かり、さらにはそれを乗り越えた先にはこの学校でもトップクラスの魔法使いになることができることは誰の目にも明確だった。







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