【「やまと」~戦乙女との現代戦争奮戦記~─Another Story─】
ここは二〇二〇年、【中亜戦争】を辛勝した日本の話……
「やまと」の乗員と艦魂の活躍により麻生政権率いる日本は「勝った」と言えよう。
もちろん多大なる犠牲もあった。
弾道ミサイル攻撃による沖縄の被害も決して忘れてはならない。
とある陸軍軍人が少年時代に巻き込まれたが、それはまた別の話。
そして……
戦艦大和の名を継ぎ、数々の伝説を生み出した1隻の艦があった。
海原を突き進む最新鋭巡洋艦。その名は……
【「やまと」~戦乙女との現代戦争奮戦記~─Another Story─】
日本公共放送のアナウンサーが淡々と解説する。
【 国 会 中 継 】
【 参議院予算委員会 ~第1委員会室より中継~ 】
テレビ中継等で国民に広く開かれ、国会の花形とされる予算委員会だが、中亜戦争の影響で予算審議は難航していた。
女性議員が質問に立つ。
「……君」
戦争による被害、政権の対応を力説する議員。
質問が終わると、ひとりの男が立ち上がる。
【 内閣総理大臣 麻生新造 】
弁を振るう麻生。
中亜戦争のあらましについて、その特徴的な口調で説明していた。
国防大臣が答弁をしたがっていたが、麻生はそれを許さなかった。彼はまだ若手だ。答弁に瑕疵があれば、政権の崩壊に繋がる。
第一次政権でリベラル系野党に追い込まれた麻生はそれを痛いほどわかっていた。
これしきのことで、負ける訳にはいかない。
日本の復興は、これからなのだから……
* *
数ヵ月後。
勇ましい巡洋艦や駆逐艦をバックに華々しい音楽が鳴り響く。
銀河の名を冠したハイテク戦艦の進水式のBGMが欲しいところ。
メカニカルな灰色の艦艇だが、この日ばかりは、色とりどりに飾られている。
大規模な国防海軍のイベントだ。
車椅子をスタッフに押してもらい、老人が入場してくる。
トークイベント司会役の若い幹部が気づいた。
『おっ!ここでスペシャルゲストの登場です!』
老人の名は……
『──元大和乗組員、新澤正一さんです!!』
トーク席に座っていたゲストらが起立し、一斉に敬礼する。
彼らは帝国海軍の遺伝子を受け継ぐ日本国防海軍だ。先達に対する敬意は本能的に持っている。
車椅子に座りながらも、正一は見事な答礼を返す。
ゲストを代表して、国防海軍高官が挨拶する。
「光栄です新澤さん。海上参謀長の戸村です。帝国海軍の『軍令部総長』と言えば分かりやすいですかな?」
「おお……」
目を見開き、おぼつかないながらも、正一は立ち上がる。そして敬礼。
固い握手を交わすふたり。カメラのフラッシュが焚かれる。
同時中継にテロップが出る。
【海上参謀長、戸村幸一海将】【元大和乗組員 新澤正一】
ふたりのトークが始まる。
沖縄特攻作戦のこと、当時の戦況……
貴重な体験談に皆が聞き入っていた。
* *
艦魂。
中亜戦争は、“やまと“を始めとする戦乙女との奮戦記であった。
新澤大樹少尉と“やまと“との出逢い……
今やふたりが深い仲になっていることは、周知の通りであったりする……
手すりにもたれかかり、話すふたり。
「大樹さん……もうすぐ大樹さんのお祖父さんが……」
「ああ。乗ってくる。もうすぐトークイベント終了だしな」
「──私……」
“やまと“は心情を吐露する。
沖縄特攻の道半ばで沈んだ自分が、どんな顔をして元乗組員に会えばいいのかと。
大樹は彼女の気持ちを聞いてやる……
そして……
再びフラッシュが焚かれ、杖をつきながら正一がやまとに乗艦する。
「これがやまとか……」
感慨にひたる正一。75年の時を越えた邂逅だ。
織田艦長が歩み寄り、やまとの説明を始める。
視線を上げる正一。何かに気づいた様子だ。
「…………」
「新澤さん?」
「爺ちゃん?」
正一が見たのは、一体…………?
【「やまと」~戦乙女との現代戦争奮戦記~─Another Story─】
To be continued──