龍と死とただ一つの願い(改稿済
今回と前回、一応は、マグナ君の心の中と伏線張りです!ワッセワッセ
次回へと繋げて読んだら、分かりやすい話だと思うので、楽しみに待ってて下さい!笑
見てはいけない、俺の本能が直ぐに逃げろと叫んでいる。
警告の警鐘がガンガンとうるさく頭の中で鳴り響く。
だが、それに反して俺は見てしまった。
赤と青の二匹の龍の深くて極寒のように冷たい四つの眼光を。
暗く全てを吸い込むかの様な瞳を。
(あ、駄目だ。)
俺は、獲物を見る龍の捕食者の目に本能的に諦めかけた。
更に二匹の龍は上位龍ということもそれに拍車をかけた。
しかし、俺のそんな中、師匠に訓練されたおかげか生存本能だけは諦めなかった。
ステータスに差があろうとも逃げに徹すれば手足の両方もしくはどちらかで済むかもしれない。
四肢より命。
そう思い、逃げようとした瞬間....龍の間にこんな所にはあるはずのない髪が見えた。
見間違いかと思ったが、俺は無意識にこの常識外な出来事に思考が麻痺していたのだろう。
脇目もふらず逃げるべきであったが、俺は見返してしまった。
俺の視線の先には人間の見た目をした少女がいた。
その少女は麦わら帽子と白いワンピースを着ているのがかろうじてみえた。
140cm程度の身長だった。
後ろ姿だったから分かりにくかったが、確かにそれは人間の少女に見えた。
そして少女は白い長髪とともに、再び龍の間に消えた。
(何故少女が!?食われてしまうぞ!)
俺はそう少女に叫ぼうとして、自分の今の状況を思いだし、上を向いた瞬間には赤龍の口の中が光ったという事だけは分かった。
気付くと俺は何十mも離れた壁にバンッと勢い良く叩きつけられていた。
べちゃっと液体を垂らしたような嫌な音がする。
余りの痛みに絶叫。
のたうち回ろうとするが腕しか動かない事に気づく。
視線が嫌でも下に向くと、どうやら下半身は俺の上半身とさようならしたようだ。
(熱い!熱い!)
ブレスを吐かれたという事は漠然と分かり、体が焼けて焦げる匂いに吐き気を催しながらも、全身が灼熱に焼かれて熱いのに不思議と体が、頭が、急激に冷えていくのが、死に向かって行くのが、自分でも分かった。
(ごめん師匠。やっぱ調子乗ってたかも)
先ずは師匠に道を次げずに死んでしまう事を謝る。
師匠の言い付けを守らずに行動した結果がこれだ、師匠は本当にまだまだ修行するべきだと思っていたのだろう。
自分を拾ってここまで手塩をかけて育ててくれた師匠に申し訳なくて自分が本当に情けなかった。
(これが師匠の領域か。師匠は俺を一捻り出来るモンスターより強いのかよ。)
そんな師匠の凄さを認識して、最上種である龍を切った師匠を尊敬しなおす。
(だが生憎、俺には俺の人生をかけてまだすることがある!師匠にも恩があるんだ!死ぬわけにはいかないんだ!)
そう思い、死に抗おうとするがそんな事は半身が吹っ飛んでいては不可能で、徐々に頭も体も動かなくなっていき、俺が働かない頭で考えたのは
(あぁ、俺がどうせ生まれるなら、この過酷な人生を生きるんだったら、強く有りたかった。)
俺は、願った。
(人間のような最弱種ではなく、強いモンスターにでも生まれて、全てを守れる力が欲しかった。)
そして、
(いまいく。フィーネ...)
最後に好きだった幼なじみを思った.....。
『面白いわね』
そんな声が聞こえて、俺の体は光に包まれた気がしたが俺の意識はブラックアウトした。
目が覚めると俺は真っ白な部屋の中にいた。見渡しても見渡しても白。白。白。
更に、体がだるく、重い。
(酷い倦怠感だな。ステータスが下がった時の様だ。それよりここはどこだ?俺は死んだのか?)
見渡してもどこも真っ白、更に死んだはずの俺が生きているという事自体に混乱しつつも痛む頭を押さえつけて考えていると、
「おはようマグナ君。ここは、オレを写し出す鏡さ。」
と、後ろからケタケタ笑う聞き慣れた声が聞こえた。
振り替えって見るとそこには悪戯が成功したのを喜ぶようにニタリと笑う、真っ黒い俺がいた。
「どういうことだ?何故俺が二人いる?」
今日は常識を越える出来事にしかあわないな。
まるで、非常識のオンパレードだ。
そんなことを思ったがそんな事を言っていても始まらない。
今は一つでも状況や情報が知りたい。
俺がそう思い訪ねると、黒い影の様なそいつは
「そんなことどうでもいいだろう?今大事な事はお前がこの後どうなるかだろう?色んな意味でな。」
変な含みを持たせたような言葉に俺はイライラするが我慢して話を聞いていく。
するとまたケタケタと気分が悪くなるような笑い声をあげ続けながら奴は俺に言った。
「オレはお前に一つ聞きたいんだよ。お前は何がしたいんだ?お前には欲望が感じられない。何故だ?強くなると言っておきながら、死ぬ気で努力もしない。何故だ?だから何も救えない。それであの時もお前が守ると言ったやつらが死んだときお前が強ければ救えたんじゃないのか?なのに何故求めない?お前が復讐を成し遂げたいなら力だけを求めて修羅に落ちれば良かっただろう?」
奴はそう言った。
俺はその言葉に鋭い針に突き刺されたかのような痛みを胸に感じた。
だが俺はそれを無視して言い返した。
「違う!あの状況では何も出来なかった!俺は悪くない!俺が求めないのは俺があの時出来なくとも結果は変わらないからだ!」
すると奴はそれを聞いて、実に面白い事を聞いたと言った様子で、ゲラゲラと笑いながら
「お前それ本気でいってんのか?あひゃひゃひゃ、ふー。ふー。あんまり笑わせんなよ。オレが笑い死ぬだろうがよ。あんまりふざけたこというなよ。」
奴は急に真顔になると俺にいった。
そのあまりの変わりように不気味さを感じて俺は押し黙る。
「お前が強ければ誰も死ななかった。お前もずっとそう感じてきただろう?お前が皆を殺したんだ。お前がフィーネを殺したんだよ。そして一番お前がそれを一番分かってる。だからお前はその時、一番力を欲しいと思ったんじゃないか。」
俺はその名前、幼なじみの事が出ては何も言い返せない。その姿を見た奴は唇を吊り上げて、
「だが、お前はそれを忘れて日常に戻った。復讐者にはいらない世界を選んだんだ。なのにお前は、死んだフィーネや、皆の死の原因を忘れて復讐ごっこだ。復讐をしたいならもっと死ぬ気でやればもっと強くなれただろう?全てを切り捨てるべきだった。修羅に落ちるべきだった。お前は皆の死を忘れてまた新しい日常を言い訳をつけて繰り返そうとしている。」
確かに俺はそれで悩んできた。
これでいいのかと、もっと早い道があるだろうと、だが俺は今までそれをなあなあにして過ごしてきた。
俺はこんな中でもまだ言い訳をしようとする自分にも関係ない奴にも苛立ちを感じて言った。
「黙れ!そんなことはお前には関係ないだろう!俺は確かに復讐ごっこをしているだけかも知れない。だが、その道は自分で選んだんだ。お前に言われる筋合いはない!」
俺はそういい、奴を無視しようとしたが、奴が喋りかけてくる方が早かった。
「関係ないとは酷いな。俺はオレなのになぁ。オレはお前の事を一番分かっている。なぜならオレはお前で、オレがお前だからだ。分からないって顔してるな教えてやるよ。この世界はお前の潜在意識、まあお前が心の中で気付かずに考えていたことその記憶の集合体が俺なんだよ。だから例えばこんな事も知っているぞ。お前がフィーネの死を復讐したあとには、生きる目標がない事とかな。」
その言葉は俺の確かに今までの俺の悩みを射ていて、何を考えてもやりたいことが浮かんでこなかった俺の心のがらんどうになってしまった部分をさしているかの様で、俺の胸がドキリと跳ねた気がした。
「俺は....俺は....。」
俺が図星を当てられて口ごもり何も言えないでいると、奴が語りかける様にいってくる。
「お前は、ただフィーネを忘れられずにそれだけの為に、他人ともう安らかに眠りたいだろうフィーネを巻き込んで、自分勝手に目的を作って皆の死を冒涜している。」
これ以上邪悪な笑みがあるのかといった表情を浮かべて奴は言う。
「お前も分かっているんだろう?自分は害悪なのだと。復讐なんか諦めてフィーネも忘れてしまえよ。楽になるぞ?」
俺は自分が知らず知らずの内に息を荒くしているのに気づいた。
俺は、確かに害悪なのか?俺は、俺は。
「違う!違う、、違うはず、なんだ....。」
そう絞り出すように言い、俺は、俺がした約束を、夢を、生きてきた理由を思い出す。
「だけど....だけど、俺は剣聖になりたい。これだけは俺の本心だ!フィーネと約束した!俺が全てを守って見せると!俺もその場所にたどり着いてみせたい!それを邪魔するなら、潰す!」
俺がそう叫んで奴を振り払うと奴は透けるようにだんだんと薄れていく。
「結局最後の最後までお前は過去に囚われている。だが、その強い願いと意思は絶対に忘れるな?フィーネとの約束であり、お前の生きている価値だ。そうでないとお前は死を冒涜し続ける。フィーネの願いを踏みにじる事になるんだからな。」
奴は最後にそう意味深な事を言い残し消えて行った。
そして、白い部屋は崩れ落ちた。
次回からモンスターになれると思います!
感想、ブクマ、評価よろしくお願いします!あんまり多くもらえると、作者は発狂します笑