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蜥蜴人の集落

ふう、人との会話がワンパターン化してる気がする。

 俺は、着いてから直ぐに大きな藁の様な物を被せた木の家に連れてこられ、その中の一室に放り込まれた。

 これから俺はどうなるんだろうか?


 幸いにも、魔道具や、イシュリアからのメッセージが入っているコートは没収されていない。

 周りも呪いの道具では?と、見たことがない服なので不気味に感じているようだ。


 そんなことを考えながら、部屋の中にある寝床なのだろう藁や草が敷かれた場所に座っていると、不意に声が投げ掛けられた。


 「すいません、入ってもいいですか?」


 俺が軽く了承すると、天幕を退けてメス?の蜥蜴人が入ってくる。


 彼女の見た目は、真っ白い色の艶のある鱗に、赤い瞳が特徴の150cmの蜥蜴人だ。


 「何か用ですか?それとも俺の処遇が決まりましたか?」


 そう聞いている俺だが、心の中は、


 (ヤバい、これ俺殺されないよね?大丈夫だよね?最後に女当てとこうみたいな要らない気遣いじゃないよね?俺、爬虫類に興奮出来ないよ?)


 そんなアホみたいな事を考える俺への返答は意外なものだった。


 「いえ、一応謝っておこうと思いまして。」


 その返答に俺は


 「へ?何で謝るんですか?何かされましたか?」


 と、少し情けない声を出してしまい、恥ずかしさで若干体温が上がった気がした。


 「いいえ、記憶すら無いあなたが、私達の都合でもしかしたら殺されてしまうかもしれないのです。私の唯の自己満足ですが、謝っておかないと気がすまなくて。」


 俺はその瞬間、自分をぶん殴りたい気分になった。


 (最低だろ俺。こんないい子相手に何考えていたんだろ。)


 そんな罪悪感まみれの俺に、更に聞いてくる。


 「すいません、名前覚えてますか?何て呼んだらいいか分からないので。あ、もし覚えてなかったらごめんなさい。悪気はないんです。」


 そう恐らく笑いかけてきているのであろう彼女に、罪悪感が更に募っていく一方のまま、俺は返答した。


 「ええ、大丈夫です。殺されるにしてもあの場所にいた俺が悪いんですから。名前は一応覚えていますよ、マグナ・アルトと言います。貴方の名前も聞いても良いですか?」


 マグナ、マグナ・アルト。

 と呟いた彼女は


 「やはり、ここら辺では聞かない名前ですね。あ、失礼しました。私はクィルと言います。一応族長の娘です。」


 そう聞いて、俺は焦り始めた。


 (ヤバいよこれ、何かあったら俺の首飛ぶんじゃね?てか、俺と会っていて大丈夫なのか?)


 そんな疑問を今更だが持ち、聞いてみる。


 「今俺と話していて大丈夫なのですか?皆さんは俺の事について話しているのでは?」


 すると、クィルは笑顔?で答えた。


 「ええ大丈夫です。抜け出してきましたから。」


 (はい、アウトオオォォォ!大丈夫じゃないからあああぁぁ!)


 最初の良い子という評価と、罪悪感はどこか空の果てまで飛んでいった様だ。

 俺は焦りも露に言う。


 「俺の事はもう大丈夫ですから。おとなしく待っているので、皆さんが心配しているでしょうしもう行ってください。」


 するとクィルは


 「ええ、そうですね。もう行くとします。」


 にこやかにそう答えたので、俺はホッとする。


 (これ以上何かあったらひとたまりもない。)




 そして、出ていった彼女と入れ違う様に蜥蜴人が入ってくる。

 俺はその蜥蜴人が最初にいた中でも、まだ話していない最後の一人の蜥蜴人である事に気付く。

 彼は、赤みがかった黒い鱗をしていて、165cm程度の身長をしており体格もがっしりしていて鍛えている事が分かる。

 しかし、彼は俺に好感持っていないのが一瞬で分かる位に睨み付けてきている。


 「出ろ。二度は言わない。」


 敵意たっぷりの奴だがここで平和に行くためにも文句は言わない。

 何も言わず歩いていくので後ろに付いていく。

 無言で気まずい空気のまま歩いていると、やがてしっかりとした天幕が見えてきた。


 「入れ。ここだ。」


 まるで、必要なこと意外は絶対に話さないという態度の彼は華麗にスルーして天幕の前に立つ。

 自分がどうなるのか少し緊張してしまう。

 だが、悪いようにはならないだろうと思い考えていると、急かすように彼が背中を押してくる。


 「早く入れ。余所者。」

 

 最後の一言要らねえだろ!いちいち鼻につく野郎だな、と思ったが俺は心が海より広い大人なので許してあげる。

 天幕を開けて入ると、そこは大きなテーブルがある部屋で、部屋の中央にテーブルはあり、その周りにぐるっと並ぶように4人の蜥蜴人達が並んでいる。

 

 「来たかい青き者よ、まず覚えているならでいいのだが、名を聞こうか?」


 中央に座る年を取ったというより、歴戦のと表す方が相応しい蜥蜴人が、手を広げながら話しかけてくる。


 「俺は、マグナ・アルトと申します。名前は覚えていますがここに来るまでの記憶が一切ありません。」


 なるべく丁寧に、相手を不快にさせないように話す。

 捕まった以上俺はまだレベルが1で、逃げられそうにも無いので素直に(嘘を)話す。


 「そうか、名前は覚えているのか。失礼名乗っていなかったね。私はこの村の族長をしているグドラという。この私の右側にいる黒い厳つい奴がギザードだ。」


 「族長、厳ついは要らないぞ。マグナ君ギザードだ。これから宜しく頼む。」


 一番最初に話した、騎士の様な堅苦しい口調が特徴の蜥蜴人が挨拶してくる。


 「そして私の左側にいるのが、ガームだ。彼はこの村一番の剣士だ。」


 「族長の次に、だがな。ガームだ。宜しく。」


 目を閉じながらそう挨拶する蜥蜴人は、寡黙な蜥蜴人のようだ。

 緑色と黒が混ざったような、深緑色の鱗をしている。

 少し師匠に似ている所もあり、師匠元気にしているかな?などと考えるが、師匠が病気になる所など想像出来ないので、元気だろうと結論を出す。


 「そして、両端にいるのが、私の愛娘のクィルと、ザーグだ。」


 「宜しくお願いしますね。マグナさん!」


 「...。」


 クィルは先ほど訪ねてきたメスの蜥蜴人で、ザーグが先ほど案内した蜥蜴人のようだ。

 

 「後もう一人いるんだが、彼女は少し変わっていてね、ここには来ていないんだが、まあいずれ会うときもあるだろう。」


 もう一人いるようだが、この場にはいないようだ。

 紹介が終わり、俺も軽く挨拶をする。


 「マグナ・アルトです。名前と武器は剣が使えること以外何も覚えていません。これから宜しくお願いします。」


 そう、自己紹介が終わると一回話が区切られ、族長、グドラさんが、話を始めた。


 「では本題に入ろう。君はこの後何をしたい?内容によっては出来る限り答えたいと思っている。しかし、一つ条件がある。私達は今隣の山脈にすむナザクの部族と争っていてね。話し合った結果、君が記憶を失っているとは限らない。木々を破壊した敵の差し金とも考えられる以上解放するわけにはいかないんだ。なので、君は暫くこの森で住んでもらうよ。」


 俺には願ってもいない話だ。

 今後、俺がどうしたら良いか分からないし、拠点を探すにも大変だった。

 ここで、魔物を倒しながら生活出来るなら俺も万々歳だ。

 俺がその木々を破壊したのだがな。


 「俺は、この村で出来るなら魔物などを倒して生活したいと思います。そして、争いが終わるか、和平等で安全に通れるようになった場合に安全に生きていけるようなら、出ていきたいと思っています。」


 すると、グドラさんは


 「そうか、ではこの村のトレタスのダンジョンに潜るといい。あそこは、非常に階層が多くまだ誰も攻略していないが、浅い階層では、初心者でも潜れるダンジョンで死亡率も低いからね。」


 じゃあ!解散とばかりに話は終わり部屋を出て、拘束が解かれて俺は物凄いホッとした。


 (助かった、か。)


 明日にも、ダンジョンに潜って強くなっていきたい。

 この村の族長のグドラさんがとても良い蜥蜴人だったようで、非常に安心した。




 外を歩いていると、周りの蜥蜴人達は、奇異なものを見るようにこちらを見てきた。

 その視線をあまり気にしないように、無視しながら歩く。


 今俺は、クィルに案内されながら、自分の住む所に移動している。


 「もう少しで着きますよ。それにしてもマグナさんは名前が二つあるんですね、凄い珍しいです。」


 そうクィルは言ってくる。

 この集落は、あまり文化が発達していないようで、家名などは存在していないようだ。


 「ああ、何故かは分からないがな。もしかしたら俺は遠い所から来たのかもしれないな。」


 そんな風にごまかしながら話をする。

 そして、周りの家からポツンと離れた場所に俺の家は建っていた。


 「ここは、前に狩人の蜥蜴人が住んでいたんですが、つい最近ナザクとの争いでなくなってしまって空いてしまったんです。その人も元は旅人だったということもあり、ダンジョンにも近くてあなたが住むのにピッタリでは?という話になったんです。」


 そう話され、確かに俺も旅人の様なものだし住みやすそうだ、と思う。

 ダンジョンに近いというのも良いし、あまり大きい家でない所も管理に手間がかからなくて良いポイントだ。


 「あと、これ食料です。毎日扉の所に袋に入れて掛けておくので、日の終わりに袋は私の家の所に置いといて下さい。」


 袋を開けて見ると、木の実の様なものがたくさんと、少量の干し肉と干し魚だった。


 (少ないな。)


 内心はそう思ったが貰った物であるし、食料を分けて貰える時点で有難い。


 「ありがとうございます。仕留めた獲物などは持ち帰った方が良いですか?それとも、自分で処理しても良いですか?」


 クィルはその質問に、


 「ご自分で、と言いたいところですが今は争いで食料も足りていないのです。獲物を仕留めたら是非持って帰って来て貰えるととても助かります。」


 だから食料は、結構少なかったのかと心の中で納得する。


 「分かりました。明日はダンジョンに潜っていこうと思っているので、今日はもう休みますね。」


 「そうですか!分かりました。では、明日ダンジョンに案内させてもらいますね。あと、敬語は堅苦しいので、崩してもらって良いですか?」


 そう言ってくるが、何か言われたら大変なので遠慮しておく。


 「いえ、俺は泊めていただいている立場なので大丈夫です。それに、礼儀はしっかりとしないといけませんから。」


 するとクィルは残念そうに、


 「そうですか。では、もっと馴染み始めたら敬語は止めてくださいね?ナザクとの争いは続きそうですから。」


 そう言い残すとクィルは家へ帰っていった。

 俺は、自分の家となった小屋に入る。


 内装は必要最低限の物しか置いていなく、俺と似たような考え方の蜥蜴人だったのだろうと思った。

 この家の前の持ち主に親近感を持ちつつ、早速今さっき貰った木の実などを食べて、色々あり疲れた体を休める事にした。


 (はあ、結構俺って散々な目に遭うな。けど、明日はダンジョンだ。これからどうなるかな?)

 

 そうして、俺の意識は闇の中に落ちた。

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