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007

「お待たせしましたですの」

「いや、今来たとこ」

 翌日になってもまだまだ破斬のクリーニング作業が終わらっていないことを確認したハルトとステイシアは、ステイシアの提案により、買い物に出ていた。

 昨日、風呂上がりのハルトの服が、全く同一のものだったため問い詰めた。

 しどろもどろになりながら答えたハルトに対して、「支給された以外の服を買わないなんて信じられないですの」と、つぶやいたそうな。

 ちなみにハルトは、準備金の名目で、自由に使える金をすでに手にしている。

「いざ出陣ですの!」

「いや、何か適当に着れるものがあれば……」

「何言ってるんですの! ちゃんとした服を買っていただきますの!」

「買うのは俺のであって、ステイシアの服じゃないよな?」

「当たり前ですの。ハルトさん、ご予算はいかほどですの?」

「こんなもんで……」

 ハルトが提示した金額にステイシアは頷き一つ。

「それならこちらですの」

「お手柔らかにお願いします」

「覚悟しておくですの」

 引きずられていくハルトは、

 ―――――かわいい格好のステイシアの隣には、さすがにこんな格好じゃ立てないか。

 なんてことを思っていたとかいないとか。





 ハルトはあるファストフード店の屋外席でつぶれていた。

「くそう。ステイシアの買い物上手め……」

 横の椅子には服が詰まった紙袋が五つ。

「言葉は褒めているのに、態度がそれを否定していますの。どちらですの?」

「半々……」

「むふぅ。まあ、これくらいで勘弁するですの」

「ただでさえ女の子の買い物のときの体力は底なしだと聞くのに、軍で鍛えるとさらに底なしになるのか……」

「否定はしないですの。逆にハルトさんは体力なさすぎですの」

「俺は技術将校だからいいんだよ。それに無くした体力の半分はコールドスリープのせいで、もう半分の大半は大量の試着のせいだ」

「破斬が出来上がったら戦場に出るのではなかったのですの?」

 暗にもっと鍛えやがるですの、と伝えてくるステイシア。

「うううう。善処します。でも、今日はもう無理……」

「まったく。女の子と買い物デートに付き合えないようではいろいろ失格ですの」

「これ、デートだったの?」

「お嫌でしたの?」

「デートでいいなら、うれしい……」

 ガクッと力が抜けるハルト。

「メディック、メディーック! は、わたくしでしたの。しょうがないから背負って帰りますの」

 衛生兵。それは傷を負った屈強な男でさえ治療の際押さえつける剛の者。

 よってステイシアは、ハルト一人と戦果の服を丸ごと抱えても余裕があった。

「お部屋に寝かしつけますの」

 ハルトの男の矜持は無事でいられるのだろうか。

 知らぬが仏。

 南無。


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