005
ハルトシミュ機は宇宙空間に飛び出した。背後には白い壁が広がる。
「コロニーの外殻か。……さて、ヤマダの機体はどこだ」
索敵するうちに、ピピッとアラームが鳴る。
「被ロック! どこだ!?」
前後左右を確認するも、姿は見えない。
「上か!」
前面のバーニアをふかして急速交代。そのままレーザーライフルを狙いもつけずに乱れうちする。
そのうちの一発が花火のように拡散して消える。
「爆発、じゃないな。コーティングがシールドか。だが、とらえた」
背面バーニアの出力を上げ、一気に接近をかける。
ヤマダ機も接近を探知したようだが、その挙動は、遅い。ハルトの動きに対して三歩は遅れ、そして一つ一つの動きがつながっていない。まるで一歩歩いては立ち止まり、一歩歩いてはどうやって動かすのか確認しているかのようだ。
いや、実際に確認しているのかもしれない。
そのまま接近してヤマダ機の右手を取り、後ろ手に回して関節可動域ぎりぎりのところをせめる。
『くそっ、放しやがれ!』
「おや、通信がつながった。接触回線まで再現してるのか」
『何を言ってやがる!』
「ま、これで終わりだけどな」
レーザーライフルの銃口をコクピットブロックに接触させ、トリガーを引いた。
◇
「ぼろっかすに言われたな」
「少佐、大丈夫ですの?」
「まあ、ゼルエス以外のクラスメイトとは仲良くしてこなかったからな」
「だからといって階級が上である少佐に対してあんな口を利くのはおかしいですの」
「ま、良くも悪くも感覚がまだ一般人なんだろ。その分ネヌエットナ少尉に絞られるだろ」
「ちがいませんの」
「で、だ」
マシナリーナイツ格納庫の奥の奥。マシナリーナイツの搬出入用としては格段に大きい扉を前に、二人は足を止めていた。
「こんなところに連れてきて、何があるんだ? 告白なら受けるのもやぶさかじゃないが」
「それはまたの機会にしますの。この中には、発掘調査の成果が収められているのですの。わたくしたちでは解析できなかったもの。それを見てほしいですの」
ステイシアが壁面のコンソールに自身の端末をかざすと、重苦しい排気音ののちに、巨大な扉がゆっくりとスライドし始めた。
ステイシアに促されてハルトが中に入ると、センサー感知式なのか次々に明かりがともり、その中におさめられた、岩から突き出た巨大な人型の上半身を照らし出した。
「こいつは……」
「マシナリーナイツであることは確かですの。でも、それ以上の解析はできませんでしたの。わたくしたちが使っている第二世代型、記録に残っている第一世代型。そのどちらよりも三回りは大きいこの機体。データには一切残ってないですの」
「………破斬」
「え?」
「破斬。それがこいつの名前だ。ははっ。そうか。さすがに五百年もたっていれば完成もするか」
「少佐、ご存じですの?」
「ご存じ? ご存じも何もこいつは俺が作った機体だ。すべてのマシナリーナイツのひな型になるようにな」
「ナニャニニュリュア司令からの伝達ですの。この、破斬、でしたか。この機体が動く様になれば少佐にお任せしたい、と」
「命令承知した」
この時のことをステイシアは個人的な業務日誌にこう記述する。
まるで新しいおもちゃを手に入れた子供みたいでしたの。
と。