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004

「ようこそ五百年後のくそったれな世界へ。私が軍司令官のキョナキュニア・ナニャニニュリュアだ」

 ステイシアに案内された軍司令部で紹介されたのは、三回舌を噛んでおつりが来そうな名前の女性。

「ちなみに私は自分の名前を略して呼ぶことを許していない」

 何の拷問ですか。

 およそすべての部下に共通する思いだろう。

「早口言葉で五回繰り返すことを推奨する」

 罰ゲーム的な何かに使われるのは問題ないらしい。

「初めまして。ハルト・サマーリア元特務中尉です。いや、退役した覚えがないから現役なのかな?」

「なるほど。五百年前の軍人か。軍での配属は?」

「マシナリーナイツの初期設計などを少々」

「は?」

 ステイシアとキョナキュニアの動きが止まる。

「はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」




「いや、大変失礼した。まさか今の我々の生命線の開発者が出てくるとは」

「まあ、当時でも機密扱いでしたから」

「なるほど」

 司令官室に置かれた応接セット。三人の間にある机に置かれたコーヒーが香る。

「さて、君を呼んだのは今後の身の振り方を決めるためなんだが」

「開発に籍を置いたほうが手っ取り早いですよね?」

「うむ。戦闘部に行ってもらおうかと思っていたが、出自を聞いてしまうとな」

「戦闘もできますが」

「できるのか」

「実戦経験はないですが。自分の作ったものくらいは使えるつもりです」

「なるほど。では両方でお願いしてもいいかな? むろん給料はその分優遇する」

「わかりました」

「では現時点をもって少佐の位を与えることとする。書面は後程になるが、これは戦闘において独断専行が許されるものである」

「拝命いたします」

「同時にステイシア・フォクネス衛生大尉」

「はっ」

「サマーリア少佐の副官に任ずる」

「拝命いたしますの」

「よし。っとそうだ、少佐。これを返しておく」

 ことり、と机に置かれたのはハルト愛用の腕時計型の端末だった。

「とりあえず、今の通信網も問題なく使えるようだ」

「ありがとうございます」

「では、退出を許す。そうだ。先に起きたクラスメイトに会っていってはどうか?」

「そうさせていただきます」





 ハルトのクラスは総勢三十名。それだけの人数が、司令部から少し離れた訓練棟のシミュレーターを使っていた。

「十番十三番撃墜」

 軍服の女性の言葉とともに、その番号が振られたシミュレーターが開く。

「二十一番二十五番三十番撃墜」

 続けて開いていく。

「ああくっそ! あとちょっとだったっつうの!」

「そこ、うるさい。訓練中は私語厳禁だと何度言ったらわかる」

「申し訳ありません教官!」

 指摘された少年は即座に気を付けの姿勢をとる。が、その目は納得していない。

「ふん。三番五番九番十二番撃墜」

「やってるですのアストナ」

「む? ステイシア大尉。失礼しました。そちらは?」

 バッと空気を切る音を立てて敬礼をするのはアストナと呼ばれた女性。それに対してハルトとステイシアは答礼を返す。

「アストナは相変わらず固いですの。ハルトさん、こちらはアストナ・ネヌエットナ少尉。わたくしの友人でクラスメイトさんの指導教官をしていますの。アストナ。こちらはハルト・サマーリアさん。コールドスリープユニットから解凍された最後の一人で少佐に任じられましたの」

「少佐!? それは失礼いたしました!」

「ハルト・サマーリア少佐です。少尉、よろしくお願いします。」

「なんでお前がいきなり少佐なんだよ!」

「ヤマダか」

 ゲルゲニウム・ヤマダ。五百年前はハルトとあまり仲は良くなかった生徒だ。

 というより、ゼルエスしか仲が良くなかったといったほうが良いかもしれない。

「コールドスリープから起きられないやつが本当に少佐になれるのかどうかオレがみてやるよ!」

「やめんか!」

「いや、大丈夫。少尉、シミュレーター借ります」

「ハルト」

「よっ、ゼルエス久しぶり。話はまた後でな」

 そう言いおいて、ハルトはシミュレーターにもぐりこんだ。遅れて隣からもシミュレーターが閉まる音が聞こえる。

「操作系はそのままか」

 ハルトがスタートキーを押せば、すぐに見慣れた画面が、ハルトが作ったままのOS起動画面が表示される。

「うげ。バージョンもそのままかよ。機体名は……黄丹か。」

 そのまま特に困ることもなく起動手順をこなしていく。

「乗せてるパーツから言って第二世代かな。訓練用のマイナーカスタム機を作るマンパワーはないだろうから、これが正式採用量産型か」

 最後にまともに動かしたのは第一世代先行量産機の最終調整の時以来か。そんなことを考えながら、ハルトは状況の投影を始めたモニタを見据える。

「状況、開始」



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