相互評価が何故問題になったのか
この前までは、相互評価そのものに対して批評をしてきた。
だが、この作品を見ていただいた読者の中には、相互評価問題が何故おきて、それが具体的にどんな事態を引き起こすのかという実感がわかない読者もいることだろう。
なので今回は、なぜ、今になって相互評価が問題となってきたのか。
そのことについて語って行こうと思う。
結論から言えば、今になって相互評価が問題となった要因。
それは『ジャンル別のランキング』の実装により、1ptの価値が激増したからである。
昔はランキングと言えば、作品のジャンルを問わず、すべてのジャンルの作品が一緒くたとなった『総合ランキング』のみが存在していた。
そのため、必然とランキングを故意に操作するのに必要なptも現在とは比べ物にならないほど多く、相互評価やptを用いてランキングを故意に操作するという行為の難易度が、現状よりはるかに高かったのである。(ランキングを捜査するのに必要なptが減少した理由については後述する)
しかし、現状はどうだろうか。
昔に存在した『総合ランキング』に加え、1ptの価値が非常に高い『ジャンル別のランキング』が実装されたことで、累計ランキングよりもはるか簡単に故意にランキングを操作できる場が生まれてしまったのである。
となればどうなるか。
昔は、無名のなろう作家が自作をランキング入りさせたい場合、新着一覧の中にある自作を何人かの読者に読んでもらうことで、総合ランキングへと這い上がる必要があった。
もし、そのシステムの中で相互評価や副垢によって意図的に自作をランキングに入れようとした場合、それは莫大な手間がかかる上、総合ランキングの端に引っかかるのに必要なptも多く、ちょっとやそっとの相互評価では雀の涙程度にしかならないのである。
だが、運営によって、故意にpt操作を行うことがより容易な『ジャンル別のランキング』が実装されたことで、新着一覧の中にある自作を何人かに見てもらうことでジャンル別のランキングに入り、更にその中から選ばれた作品が総合ランキングに入る。という一本道に、途中参加が可能な抜け穴が存在することとなったのだ。
つまり、本来は新着一覧→ジャンル別ランキング→総合ランキングという一本道を走らなければいけない所なのに対し、相互評価や副垢によって故意にランキングを操作できる人たちにとっては、総合ランキングに乗りたい無名の作者達のスタート地点となっている「新着一覧」での戦いをすっ飛ばし、いきなり「ジャンル別ランキング」に乗ることが可能となったのである。
現状、小説家になろうというサイトのシステムから考えれば、総合ランキングに乗る作品の九割九分は、ジャンル別のランキングから選定されたものとなる。
なら、もしもジャンル別のランキングが相互評価をはじめとした故意に行われたランキング操作によりランキング入りした作品が溢れた場合、どうなるかは誰でも想像がつくだろう。
そう、相互評価によるランキングの操作の影響が、ジャンル別の日刊ランキングだけではなく、総合ランキングへも拡大するのである。
当たり前の話だ。
ジャンル別の日刊ランキングを勝ち上がった作品が総合ランキングに乗る現状、ジャンル別の日刊ランキングのほとんどが、相互評価によって作品の評価と関係なくptを獲得した作品で埋め尽くされれば、必然的に、総合ランキングもそういった、作品の面白さとは関係のないptでランキング入りした作品のみになってしまうことは当然なことだろう。
また、ランキングというものの性質上、より上位のものが読者たちに「今伸びている作品」として注目される。
そういった中で、相互評価を使わずに新着一覧から這い上がってきた作品と、相互評価によってあらかじめ50pt(ptの数は仮定)を獲得している作品。
このどちらがより勝ち残りやすいかは、読者の想像に易いことだろう。
今言ったこれらのことは、ランキング、すなわち、小説家になろうというサイトそのものの信用低下にもつながる恐れがあるほど、大変影響度の高い、危険な行為のはずだ。
ランキングの価値が低下し続け、もはやランキングというものがあてにならなくなった場合、小説家になろうのほとんどのユーザー数を占める、ランキングから好みの小説を探すような、いわば読み専の人達が小説家になろうというサイトを利用しなくなる可能性は非常に高い。
また、相互評価の影響力も高くなり、その効果が十二分に発揮される『ジャンル別ランキング』という場があることは、作家の中から、相互評価によってランキングを不正に操作する集団が次々と現れてしまう可能性も十分にありうる。
それだけ、今のなろうにおいて、「1pt」の価値は高騰してしまったのだ。
と、ここまで長く語ってしまったが、結局のことを言えば、ここまで相互評価の問題が深刻なものとなったのは、運営によって実装された『ジャンル別ランキング』の影響がないとはとても言い切れないと私は考える。
とはいっても、私はその『ジャンル別ランキング』そのものに反対しているわけではないのだ。
そもそも、『ジャンル別ランキング』の実装は、異世界転生・転移しか日の目の見ることのないなろうにおいて、コンテンツの多様化、更には、読者にとっても、比較的マイナーなジャンルの作品を探しやすくするといった、数々の転換をもたらしたものであり、相互評価によるランキングの操作の影響が深刻化したことを考慮しても、『ジャンル別のランキング』が実装されたことが悪とは言い切れるものではないのだから。
今回は、相互評価が何故問題として上がってきて、それが何故問題なのかについて語ってきた。
なので次回は、相互評価による故意的なランキング操作を防ぐため、小説家になろうのユーザーと運営が取るべき手段について語って行きたいと思う。
日刊エッセイランキング1位を取ることができました。
これもこの作品を手に取り、読んでくださった読者の皆さんのおかげです。
本当にありがとうございました。