進め!私立トロロ学園探偵部 ―超高級フランス料理ケータリング事件―
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◆進め!私立トロロ学園探偵部 ―超高級フランス料理ケータリング事件―◆
作/ぽー
【登場人物】
安見良夫・・・・・・ トロロ学園の2年生。探偵部メンバー
小林勇三・・・・トロロ学園の2年生。探偵部メンバー
明智明子・・・・・ トロロ学園の2年生。探偵部メンバー
篠崎文子・・・・ トロロ学園の2年生。探偵部メンバー
金田満・・・・・・ トロロ学園の2年生
薄井幸代・・・・・ トロロ学園の2年生
大田先生・・・・ トロロ学園教師。安見の担任
店員A・・・・・・・・・・・・・・ 高杉ケータリングサービスの店員
店員B・・・・・・・・・・・・・・ 高井代ケータリングサービスの店員
ナレーター
【本編】
○トロロ学園の教室
大田先生の授業を受けている生徒達(安見、小林、明智、篠崎、金田、薄井)。安見は一番後ろの席で、その横が薄井である。チャイムの音とともに昼休みが始まり大田先生が退出。安見と小林が話し始める。他の生徒たちは互いに話したり、ノートをまとめたりしている。
ナレーション:ここは、私立トロロ学園高等部。都内某所に存在するそこそこの進学校だが、生徒は超個性的な自由人ばかり。なかでも探偵部は筋金入りの変わり者集団だった。
安見:ふぅ!やっと昼休みかぁ、あーまじで腹減った!
小林:安見。お前、今日は学食?それとも弁当?
安見:おう小林か、今日は弁当かな。そう言えば……!
小林:何?
安見:お前んちのお隣は、また特製松坂牛の弁当、持って来ないのかよ?あれ食いたかったなあ!
小林:あれはお隣が懸賞で当てたモノなんだよ。そんな簡単に当たらないよ
安見:はあぁ?なんだそりゃ!だったらお前が応募しろよ!
小林:何でだよ!やなこった!
ナレーション:そんなとき、またしても大事件が起こった!!
店員Aが入ってくる。一斉に店員Aを見つめる生徒たち
店員A:こんにちは!高杉ケータリングサービスです!
安見:はあ?ケータリング?
小林:突然、なんだろうね?
安見:なあ小林、ケータリングサービスってなんだ?新型ケータイの配達か?
小林:バカか!ケータリングサービスってのは、調理済みの料理の持ち込みサービスを言うんだよ!
安見:そうなのか
小林:し、しかも高杉ケータリングって言ったら、超高級ケータリングサービスで有名だぞ!
安見:ま、マジかっ!誰だよ昼飯にあんなの呼び出した奴!
薄井:あのう、それってどこか他の間違いでは?
店員A:そ、そうですか……おかしいなあ?フランス料理フルコースの注文が来てるはずなんだけど?
薄井:校長先生か誰かが注文したのかも……職員室へ行ってみては?
店員A:なるほど、そういうことですか!
安見:待て!これは事件だっ!
明智:はぁ?アンタ何言ってんの?頭大丈夫?
安見:間違いない!何者かが、クラスの混乱を狙ってケータリングに注文をかけたんだ!
篠崎:誰がそんなことするっていうんですか?
安見:ううむ……それは……。分かったぞ!犯人は金田満!お前だ!
金田:えっ、ボ、ボク?
安見:そうだ!金田財閥の御曹司のお前ならこれくらいやりかねねえ!金にモノを言わせて、ケータリングを呼び、オレら庶民に権力を誇示する作戦なんだろ!でも、そうはいかないぞ!!
金田:し、知らないよ……ボクは、毎朝、夕飯の残りで弁当作って持ってきてるよ!
安見:とぼけるな!夕飯の残り弁当がそんなに豪華なハズないだろ!弁当がフォアグラとキャビアとトリュフのローテーションって絶対おかしいだろ?
金田:ひどいなあ……毎日そればっかりじゃないよ!マグロやマツタケの日もあるよ
明智:ちょっとアンタ!何、証拠もなく金田君を犯人に仕立ててるのよ!
金田:ん?ははぁ、明智。お前、さては金田に買収されたな!
明智:何言ってんの?確かに、金田君は嫌味で金持ちでイケ好かないけど、学校にケータリング呼び込む程の度胸はないわよ!
小林:そうだ!明智の言うとおりだ!金田は嫌なヤツだが悪いヤツではないぞ!
篠崎:いくら見た目がキモいからって犯人に決めつけるのはあんまりですよ!
金田:うう……ママ、ボク、もう泣きそう……
店員A:チェッ、仕方ないですね!今日のところは撤収します
ナレーション:こうして、店員さんが引き上げて何とかその場は収まった。その日の放課後、探偵部の部室では緊急会議が開かれた!
○トロロ学園の探偵部部室
長机の上にミステリー小説がおいてある乱雑な部室。部室に集まった探偵部の面々(安見、小林、明智、篠崎)。
安見:やっぱり犯人は金田に違いない!オレはアイツを見張るぞ!
明智:ちょっと!いくらなんでも乱暴すぎでしょ。それは!
小林:そうだ、たとえアイツが犯人でもきちんと証明して自白させるのが探偵ってもんだぞ!
篠崎:あ、あのう……私思うのですが……
安見:何?
篠崎:犯人がこれで引き下がると思えません……。またケータリングをかけるはず。その時にいろいろ聞き出せば……
小林:確かに、今日は店員さんからは何も聞けなかったなあ
安見:よし!待ってろよ金田満!必ずお前の正体を暴いてやる!
ナレーション:翌日、安見は朝から金田を監視した。そして、事件が起きたのは二時間目の授業中のことだった!!
○トロロ学園の教室
静かな教室で淡々と授業が進む。安見、ひたすら前方に座る金田を監視中。
金田:ううう、ずっと安見君に見張られてて落ち着かないよ……。何だかお腹がいたくなってきた!
金田:(挙手して)せ、先生!すみませんちょっとトイレに行ってきていいですか!
大田先生:仕方ないわね!さっさと行って来なさい
安見:何っ、トイレだと!
金田:す、すぐに戻ります!
金田、腹を押さえて急いで教室から出ていく。
ナレーション:10分ほどして、金田は教室に戻ってきた!
金田、晴れやかな顔で教室に戻ってくる。
金田:ふう!すっきりした!
ナレーション:それからは何事もなく昼休みを迎えた。そして……!
チャイムが鳴り、授業が終わる。大田先生が退出し、生徒たちが雑談を始める。
安見:う〜ん、今日は何も起こらないのかな?
小林:そうだな。昨日は本当に間違いだったのかもな
店員Bが入ってくる。一斉に店員Bを見つめる生徒たち
店員B:こんにちは!高伊代ケータリングサービスです!超高級イタリアンフルコースの配達に参りました!
安見:来たぞ!!
小林:すみません?その注文はいつ頃誰がしましたか?
店員B:えっ?10時ごろメールで入りましたが、何か?
安見:じゅ、10時って言ったら金田がウンコしに行った時間じゃねえかっ!
金田:ええっ、ぼ、ボクはトイレに行っただけだよ!
安見:とぼけるな!お前トイレでスマホからメール打って注文したんだろ!
金田:ち、違うよ!ボクはそんなことはしてないよ!
明智:安見!金田君の言ったことは本当よ!
安見:な、なんだって!
明智、カバンからスマートフォンを取り出す。
安見:そ、それは金田のスマホ!明智、なんでお前が持ってるんだ!
明智:金田君には悪いけど、アリバイの確認のため、私が朝から預からせてもらったわ!
小林:コンピューター室のPCは隣のクラスが授業で使ってるし。金田のアリバイはほぼ確定だな
安見:だ……だったら誰が!10時は授業中のはずだぞ!
篠崎:授業中でも……メールは打てます
安見:ウソだ!オレはこの一番後ろの席で見張ってたけど、誰もスマホなんか触ってなかったぞ!
明智:アンタは確かに見張ってたわ。前の席はね……でも、隣はどうかしら?
安見:隣?オレの隣だと!
明智:そう、隣。まして、スマホじゃなくてガラケーですもの。送信ボタン押すだけなら机の中からでもできるわ
篠崎:もう自白してください。薄井……薄井幸代さん!
安見:な、なんだって!薄井さんが真犯人だと!!
薄井:そ、そんなこと!私は……
安見:そうだよ!薄井さんがそんなことするわけねえよ!なぁ薄井さん?
明智:そう言うなら!見せてよ!送信履歴!
明智、薄井の持っていたケータイ(ガラケー)を奪い取る。
薄井:あ、ちょっと、止めて!何するの!
安見:やめろよ明智!薄井さん嫌がって・・・・・えええ!これは!注文履歴じゃねえか!
安見、明智からケータイを取ろうとするが、もつれる内に画面の注文履歴が目に入る。宛先は高伊代ケータリング!
明智:ね、証拠ならあるっていったでしょ!
薄井:どうして……?どうして、私がやったってわかったの?
明智:バカな男どもの目はごまかせても、女の目はごまかせないわ
篠崎:毎日毎日、金田君のお弁当凝視してるんですもの……疑うのも無理ありません……
安見:ウソだ!秀才で特待生の薄井さんが!こんなことするなんて!うちのクラスで学費免除なのは薄井さんが……
薄井:わ…私…その……ごめんなさい!!
明智:ちゃんと全部話してもらおうかしら!お店を騙して罪を他人になすりつけるなんて!警察呼ばれてもおかしくないわ!
薄井:私、許せなかったんです!金田君が!私は毎日バイト先のスーパーの残り物を弁当にしてるのに……アイツときたら毎日毎日ムダに豪華な弁当ばかり!それに……学費が払えない私は、毎日必死に勉強して特待生の地位をキープしてるのに……金田君ったら初めから浪人するつもりで、ちっとも勉強せずに寝てばかり……もし貧乏な私が金田君の家に生まれてたら、東大だって夢じゃないのに……
安見:金田ぁ!!許さん!
金田:えええっ!ボ、ボク犯人じゃないのに……
明智:確かに金田君は犯人じゃないわ!でもこの事件の一因ではあるわね
小林:とりあえず金田にここの料金払ってもらおうぜ!それでいいか?
金田:何だか良く分からないけど……みんなに怒られるのよりいいや!わ、分かったよ……払います!
店員B:どうも!19万6千円になります!毎度!
金田:そ、そんなにするのか!
篠崎:あのう……私思うんですけど……
安見:何?
篠崎:金田君が毎日、薄井さんの分のお弁当を持ってきて、代わりに薄井さんが勉強を教えるというのはどうでしょう?
小林:なるほど!薄井さんは豪華弁当が食べられて、金田は勉強のサポートが受けられるって訳か!
安見:おおっ!いいじゃないか!それ!
明智:そうね!明日からそうしましょう!二人はそれでいい?
金田:いいよ!あまりモノならたくさんあるから。二人分くらい余裕だよ!
薄井:私もOKです!勉強を教えるのは家庭教師のバイトでやってますし……
篠崎:どうやら解決したみたいですね!
安見:二人ともよかったな!
ナレーション:こうして、薄井さんと金田君が、お互い協力し合うということで、この事件はめでたく解決したのであった!
(おわり)