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恋のチカラ  作者: 夢遥
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恋のチカラ

不良の男の子が嫌いだった、主人公が段々と男の子に接近して、恋するお話です。


良かったら、読んでみてください!!

 それは、いつものように、友達の早川実紅の恋バナから、1日が始まった。


「ねえ、莉菜!学校の裏で、祐希先輩が塀を軽やかに越えて裏庭に入るの見ちゃったー。カッコよかったー!」


 あたし、藤井莉菜は、興味なさそうに、実紅の話を聞いていた。


「聞いてるの?莉菜?」


「うん。聞いてる。でも、そんなに好きなら告白すればいいのに」



 あたしは、呆れ顔で言う。



「でも、なかなか近づけないし……」


 実紅は、ためらった顔をさせた。



 真鍋祐希。耳にはピアス。髪は染めていて、あたしより1つ上の高3。不良グループのリーダー。


 あたしも含め、みんな先輩が怖くて近づけないでいた。それに、先輩の周りには、不良グループの子達が、ざっと、10人くらいいるし、それも近づけない理由でもあった。


「でも、高校入学してから、ずっと先輩のこと好きなんでしょ?」


 あたしは、改めて実紅に聞いてしまう。


「莉菜には言ってなかったけど、中学から先輩のこと好きだったのー」


 実紅と真鍋先輩は、同中だったことは、知っていたけど、そのことは初耳だ。



「いけない!1時間目から移動教室だよ。早く行かないと」


 実紅は、チラッと時計を見る。


「行こう、莉菜!」


 実紅は、急いで教室を出た。


「待って、実紅!」


 あたしは、急いで、実紅の後を追っていった。


 ドンー!!


 慌てていたせいか、廊下の曲がり角で人にぶつかってしまった。



「ごめんなさい!!」


 あたしは、慌てて頭を下げると、相手の顔を見た。


「ー!?」


 あたしは、思わずその場で固まってしまった。


 ぶつかった相手が真鍋先輩だったからだ。


 先輩は、表情も変えずに、あたしのことを睨んでいた。


 こ、怖い!


「ほ、本当にごめんなさい!!」


 あたしは、もう一度、頭を下げると一目散に逃げ出した。


「ちょっと、莉菜!今の祐希先輩じゃない!」


 実紅の所へ行くと、実紅は顔を輝かせながら、あたしの肩をバンバン叩いた。


「いたた……。先輩にぶつかるなんて最悪ー。あとで、言いがかりつけられたらどうしよう」


 実紅に叩かれた所をさすりながら、あたしは身震いをさせた。


「何、びびってんのよ!祐希先輩は、ぶつかっただけで、言いがかりつけるような人じゃないよ」


「……」


 実紅は先輩のこと、信じてる?んだ……。


「莉菜が思っているほど、怖くないし。ケンカはするけど、悪さしている不良を退治しているためだし」


 実紅は、少し強めの口調で言った。


 実紅が、先輩の話になると長くなるんだよねー。


「わかったから、もう行こう!授業が始まっちゃう」


 あたしは、実紅を促した。


 真鍋先輩が、怖くないなんてありえないよー。さっきだって、謝ってるのに睨まれたし……。





「実紅ー。帰りに、ドーナツ食べてかない?」


 その日の放課後。


 帰り支度をすると、実紅を誘った。


「ごめーん!今日、バイトなんだ」


「あ、そうなんだ……」


「本当にごめんね!この埋め合わせは、あとでするから」


 そう言うと、実紅は、忙しそうに先に帰って行った。


 仕方ない。独りで帰りますかー。



 いつもは、バス通学だけど、今日は寝坊して電車にしたけど、帰りはどうしよいかなー。


 そんなことを考えながら歩いていると、横断歩道を、腰を曲げたおばあちゃんが、重そうな荷物を持ちながら渡っていた。


 半分まで歩いて行ったところで、歩行者用の信号が点滅を始めた。


 横断歩道を渡っている人は、おばあちゃんが大変そうでも、見て見ぬ振りをしていて助けようとはしなかった。


 何て、みんな薄情なのー!


 その場にいれば、助けたいけど、少し離れているから、おばあちゃんの所まで行くには、間に合いそうもない。


 あたしが、ハラハラしている時だった。


 高校生くらいの男の子が、おばあちゃんに近づくと、おばあちゃんをおんぶして、急いで横断歩道を渡った。


 あたしは、心の中で拍手を送った。


 周りの人ができなかったことをやるなんて、どんな人だろうー?


 男の子の顔が見たくて、あたしは急いで近づいて行った。


 近くまで行くと、男の子の着ている制服はうちの学校の制服だった。


 うちの学校の人かぁー。でも、待って……。あの人の金髪の髪の色、何処かでー?


 あたしは、目を凝らして、男の子の顔を見た。


「……!?」


 あたしは、その人の顔を見て呆然としてしまった。



 だって、おばあちゃんを助けた男の子は、真鍋先輩だったからー。


「親切にどうも、ありがとうねー」


 おばあちゃんは、顔をしわくちゃにさせながら、何度も頭を下げてお礼を言った。


「良かった。間に合ってー」


 先輩はホッとした顔をさせた。



「……」


 気のせいか、先輩が少し微笑んでるように見えた。


 あの先輩が、人助けするなんて……。

何かの間違いじゃないの?


 半信半疑で、先輩を見つめた。


 でも、先輩が優しい人だと確信するのは、何日か過ぎてからのことになる。




「乗りまーす!」


 あたしは、慌てて走って行くとバスに乗り込んだ。


 ここのところ、寝坊しないでバスに乗れたのに。今日は、何故か寝坊して朝食もとれないまま家を出てきてしまった。


「はぁー。間に合ったー」


 空いていた2人席の座席に座ると、一息つく。


 バスが発車して、次のバス停に止まると、実紅が乗ってきた。


「おはよー。莉菜!」


「実紅、バスなんて珍しいね」


 実紅は、いつもは、自転車通学。


「目覚ましが壊れてて、寝坊したー」


 実紅は、少し唇を尖らせながら、あたしの横に座る。


「あたしも寝坊して、朝食抜きなんだよねー」


 あたしは、苦笑いをする。


「あはは……。あたしも、食べる暇がなくて、朝食抜きだよー」


 実紅は、自分のお腹を抑えた。


 こんな調子で、結構、実紅とは気があって、高校に入学してからずっと連んでいる。




「今日は、文化祭の催し物について決めたいと思います」


 学活の時間。クラスの実行委員がみんなに言った。


 去年のクラスは、お化け屋敷をやって、大盛況だった。


 みんな、それぞれ意見を出し合って、写真館やお化け屋敷、喫茶店など、いろいろと出てきたけど、最終的にはメイドカフェに決定した。



 衣装は、何故か、演劇部に沢山のメイド服や執事の服があるので、貸してもらうことになった。




「文化祭、楽しみだね!」


 学活の時間が終わって、次の体育の準備のため、更衣室へ行こうと、渡り廊下を歩きながら、実紅がうきうきした笑顔で言った。



 あたしも、釣られて笑いながら外を見た時だった。


 ちょうど、建物の死角で目立たない場合に、何人か集まってもめているのが見えた。


「あれ、祐希先輩じゃない?」


「……」


 あたしは、目を凝らして見てみると、先輩を始め不良グループ5、6人が、2人の男子生徒を囲んでいた。


 先輩は、2人の男子生徒の胸倉を掴んで、今にも殴りそうな感じだった。


「た、大変!あたし、先生を呼んでくる!」


 あたしが、慌てて先生を呼びに行こうとしているのに、実紅は慌てもせず、あたしにこう言った。


「祐希先輩のことだから、何か理由があるはずだよ」


「何、呑気なこと言ってるのよ!?このままじゃ、ボコボコにされちゃう!と、とにかく。あたし、先生を呼んでくる!」


 あたしは、急いで先生を呼びに行く。


「こら!廊下を走らない」


 職員室へ先生を呼びに行く途中。生活指導の山口先生に注意された。


「先生、大変です!向こうで真鍋先輩達が、男子とケンカを……」


「また、真鍋かー!!」


 山口先生は、重い溜息をつくと、先輩がいる方へ向かった。


 真鍋先輩の所へ行くと、先生はすかさず、飛んでいくと、


「こらー!お前ら、何をやっている!!」


 大声で怒鳴りつけた。


「先生ー。先輩達が、急に言いがかりをつけてきて……」


 真鍋先輩達に殴られそうだった男子の2人が、声を揃えて言った。


「はあー!?弱い物いじめをする、てめーらが悪いんだろ!?」


 真鍋先輩は、ギロッと男子を睨みつけた。


「真鍋ー。言い訳はいいから、生活指導室へ来い!!」


 山口先生は、真鍋先輩の腕を掴むと、無理やり連れて行こうとした。


「離せよ!」


 真鍋先輩は、先生の手を振り払うと、一瞬、あたしの方を睨みつけて、チッと舌打ちすると、その場から仲間と離れた。


「こら!真鍋ー。待たないか!」


 先生は、慌てて後を追って行く。


 その光景を見ながら、あたしは冷や汗をかいてしまった。


 今、あたしのこと、睨んでた……。それに、舌打ちまでしてた……。


「先輩、莉菜のこと怒っているみたいだったねー」


 隣で実紅が、ボソッと呟いた。


「や、やっぱり……?」


 あたしは、少し声を震わせる。


「祐希先輩のことだから、理由があるって言ったのに。それなに、先生を連れてくるんだもんー」


「……」


 そう言えば、男子が弱い物いじめをしたとか言っていたー。

「どうしようー。実紅ー」


「何かあったら、あたしが、助けてあげるから心配いらないって!」


 実紅が、ニコニコしながら、あたしを脅かすようなことを言うものだから、何だか不安になってしまった。




 でも、そんな気持ちを忘れるくらい、平和な日々が続き、文化祭の準備も順調に進んでいき、いよいよ、文化祭の当日。



「実紅ー。このメイド服のスカート短くないかな……?」


 メイド服に着替えると、恥ずかしそうに膝上のスカートへ手をやった。


「え?そうかなー。あたしは、この方が好きだけど」


 実紅は、平気な顔で言った。


 制服のスカートより短いのに、恥ずかしくないなんて。やっぱり実紅は、堂々としていて凄い……。


「莉菜!お客さんが来たよー」


 実紅は、さっさとお客さんの方へ近づいて行くと招き入れた。


 あたしも、頑張って仕事しなくちゃー!


 あたしは、次に入って来たお客さんの注文をとりに行った。


「あたしはカフェオレ」


「あたし、レモンティー」


 女性のお客さんから注文を受けてから、調理場との連携プレーで、すぐに運んで行く。


 一般公開だから、結構、他校の生徒も来ていて、席もすぐに満席状態になった。


「お帰りなさいませー。ご主人様!」


 あたしは、笑顔で次のお客さんに対応した。


「ヒュー!君、可愛いね」


 柄の悪い連中が2人、席に座っていた。


「あ、あの……。ご注文はー」


 あたしは一瞬で、顔がひきついてしまった。


「注文なんていいじゃん。これから、俺達と遊びに行こうぜ」


 そう言って、前の席に座っていた男が、あたしの手を掴んだ。


「やだ!離してー!!」


 あたしは、男の手を払いのけようとしたけど、びくともしない。



 どうしよう……。先生は、ちょうど、足りない材料を家庭科室に取りに行っているしー。


 あたしは、周りに助けを求めようとしたけど、怯えた顔で、見ているたけだった。


 そんな中で、実紅だけが助けに入った。



「莉菜の手を離しなー!!」


 実紅は、威勢よく立ち向かっていくと、男の手を掴もうとしたけど、反対に捕まってしまった。


 早く、先生戻ってきてー。


 あたしは、唇を噛みしめた時だった。


 急に男の手が緩んだかと思うと、誰かに突き飛ばされて椅子ごとひっくり返った。


「何するんだ!邪魔すんじゃねー。ボコボコにしてやる!!」


 誰が助けてくれたんだろうー?


 あたしは、相手の顔を見た。


「……!?」


 あたしは呆然としてしまった。


 助けてくれたのは、真鍋先輩だったからだ。


 男は、よたよたと立ち上がると、


「邪魔するんじゃねーよ!!ボコボコにしてやる!!」


 凄い勢いで、先輩に殴りかかっていった。



 でも、威勢だけで、口ほどにもなく、すぐに、先輩に投げ飛ばされてしまった。


「キャー!!」


 さすがに、クラス中が、大騒ぎになる。


「何事だー!!」


 騒ぎに気づいて隣のクラスの先生が、教室に入ってきた。



「真鍋ー!!何をやっているんだ!」


 先生は、後ろから先輩の身体を押さえた。


「せ、先生!先輩は悪くないです。あの人達に絡まれたところを助けてくれただけで……」


 あたしは、慌てて訳を話した。


「ん?そうなのか?しかし、理由はどうあれ、学校内では暴れるのはー」


 先生は困った顔で、顎に手をやった。



 あたしと先生の会話を聞いて、実紅も口を挟んだ。


「暴れるもなにも、変なことされそうになって、祐希先輩に助けてもらっただけです!だから、あの人達を追い出してください!!」


 実紅は、男達の方を指差した。


「わかったー。今回だけは、見逃すけど、今度、暴れたら停学になりかねないからな!」


 先生は、先輩に念を押すと、男達を教室から連れ出した。



「あ……」


 あたしは、お礼を言おうとしたけど、真鍋先輩は、さっさと教室を出て行ってしまった。



 お礼、言えなかった……。


 でも、てっきり、この前、先生を呼びに行ったことを怒っているいるのかと思っていたのに、助けてくれるなんてびっくりだ。



「莉菜!大丈夫だった?」


 実紅が、心配そうにあたしを抱き締めた。


「うんー。実紅、ありがとう……。助けてくれて」


「ううん。あたしは、何も……」


「でもー。どうして、真鍋先輩は助けてくれたのかな?怒っているみたいだったのに……」


「莉菜が先生を呼びに行った日は、少し距離があったし、莉菜だってわからなかったのかもよー?」


「……」



 そうなのかなー?あたしを見て、舌打ちした時は、そんなふうに、見えなかったけど……。


「でも、ああ見えて、困っている人を見ると助けたくなるのが、先輩なんだよねー。ますます、好きになっちゃったー!」


 実紅は、胸をときめかせながら言った。


「……」


 この前、先輩は、横断歩道で困っていたおばあちゃんを助けていた。


 やっぱり、あれは、見間違いじゃなかったんだ……?




 トラブルはあったけど、2日続いた文化祭も無事に終わり、冬が段々と近づいてきていた。




「今日も、祐希先輩。生活指導の先生に捕まってたー」


 暖房がついた教室で、お弁当を食べながら、実紅は溜め息をついた。



 以前は、実紅が、先輩の話をするたび、「怖い人」と、思っていたのに、文化祭で助けてもらってからは、そんな気持ちも薄らいでいた。



「日直ー!悪いが、次の授業に使う社会の資料を用意しておいてくれないか」


 社会科の金森先生が、教室に顔を出した。


「あたし、日直だ!」


 あたしは、食べ終わったお弁当を片付けながら、声を上げた。


「あたしも、手伝おうか?」


 お弁当を片付け終わると、実紅があたしに言う。


「ありがとう。助かるー!」


 あたしは、実紅の言葉に甘えることにした。


 資料室へ取りに行くと、地図帳や年号、その他、いろいろ

あって、2人で持つので精一杯だ。


「もぅー!大体、あの先生、人のことこき使いすぎなのよ。それも、こんなに一杯ー。独りで持てるわけないじゃない!」


 実紅は、文句を言いながら荷物を運んだ。


 あたしは、苦笑いをする。




「真鍋!」


 職員室の前を通った時、生活指導の山口先生の怒鳴り声が廊下に響いた。


「また、祐希先輩が怒られてるよ……」


 実紅が、職員室をチラッと覗く。


 あたしも、つられて覗いた。

「いつもいつも言っているだろう。その髪、どうにかならないのか」


 どうやら、髪の色で怒られているらしい。


「何よ!髪の色くらいで、うるさいのよ。あの先生!」


「でも、校則違反だし……。怒られるのも仕方ないよ」


 あたしは、溜め息混じりに呟いた。



 山口先生の説教が終わったのか、真鍋先輩が職員室から出て来た。


 先輩は、あたし達に気がついて、ジロッと睨みつけた。


 怖い気持ちが薄れたと言っても、まだ、怖い気持ちは心の片隅に残っている。


 でも、文化祭の時に助けてもらったお礼も、まだ、言っていないし……。



「あ、あのー。真鍋先輩、文化祭の時は、助けてくれてありがとうございました……」


 あたしは、勇気を振り絞ってお礼を言った。


「……」


 でも、先輩は無言のままで、あたしは、どうしていいかわからず、おろおろしてしまった。


「祐希先輩!文化祭の時、メイドカフェであたし達が、柄の悪い連中に絡まれた時、助けてくれたの覚えてませんかー?」


 すかさず、実紅がフォローに入った。


「……ああー」


 実紅に言われて、先輩は思い出したのか、小さく頷いた。


「と、とりあえず、お礼だけ言おうと思ってー。じゃあ、先輩!あたしたちはこれで!」


 あたしは、実紅を促すと教室へ戻った。




「ちょっと、莉菜!もう少し、祐希先輩と離していたかったのにー」


 資料を先生の机に置きながら、実紅は不満そうな顔をさせた。


「だってー。お礼を言うのが、やっとで……何だか、話しづらいんだもん。実紅は、先輩と話せてよかったね」


「先輩は、一言だけだったけどね……」


 実紅は、苦笑いをすると、自分の席へ戻って行った。





 放課後ー。


 日直の仕事を終わらせると、急いで帰る用意をした。


 バスの時間、大丈夫かな……?


 あたしは、腕時計をチラッと見る。


 あと、5分足らずでバスが来てしまう。


「これじゃ、間に合わない」


 あたしは、がっくりと肩を落とした。


 仕方ない。電車で帰りますかー。


 電車なら、まだ、時間は間に合うはず。



 あたしは、重い足取りで、昇降口に向かった。


 靴を履いて外を出た時だった。


「みゃーみゃー!」


 どこからか、子猫の鳴き声が、聞こえてきた。



 何処で鳴いているんだろ?


 あたしは、鳴き声がする方へ歩いて行った。


「いた!」


 子猫の鳴き声は、校舎裏にある1本の木の上からだった。


「みゃーみゃー!」


 どうやら、登って下りられなくなって鳴いているみたいだ。

 あんな小さいのに、どうやって登ったんだろう……?



 あたしは、助けようと木に近づいて行った。


 ガサッ!!


 あたしは、木の葉の音にハッとした。


 よく見ると、誰かが木に登っている。



 どうやら、子猫を助けようとしているらしい。


 一生懸命、登って行くのを見ているうちに、あたしは、夢中で応援していた。


「あともう少し、頑張って!」


 その人は、子猫に手が届く所まで登っていくと、優しく子猫を抱っこした。


 木の葉で顔がよく見えないけど、どんな人が助けたんだろう……。



 その人が下りてくると、あたしは、無我夢中で駆け寄った。


「……!!」


 子猫を抱いて下りて来たのは、真鍋先輩だった。


「確か、あんたはー」


 先輩は、真っすぐとあたしの顔を見る。


 悪いことしていないのに、何だか、先輩を見るのが怖くて、子猫の方に目を逸らした。


「よかったね!助けてもらって」


 子猫の頭を優しく撫でてあげると、安心したのか、喉を鳴らしながら気持ち良さそうにしていた。


「おーい。助けてやったのに、何とか言ったらどうなんだー?」


 真鍋先輩は、優しく微笑んだ。



 先輩が、笑ってるー。


 おばあちゃんを助けた時も、こんな笑顔だった。


「笑うんだー」


 あたしの口から、ポロッと声が漏れてしまって、慌てて口を押さえた。


「ぷっ!猫は笑わないぜ」



 先輩は、また、笑い出した。


 先輩って、こんなに笑うんだ……。



「そ、それより……。子猫の親はー?」


 あたしは、辺りを見回して見たけど、親猫らしき姿は全然、見あたらなかった。


「どうしよう……。この猫」


「飼ってあげるのが一番いいんだろうけど。俺んちは、アパートだから飼えねーしな」


 先輩は、困った顔で子猫の頭を撫でた。


 どうしようー。この子を置いていったりしたら、食べ物もないだろうし、野良犬とかの標的になりなねない。


「じゃ、じゃあ。うちで飼えるか、お母さんに相談してみる……」


「助かる。えーと……名前ー」


「藤井莉菜です」



 あたしは、自己紹介をした。


「この猫、一晩だけなら、うちで面倒見られる。藤井は、明日の放課後、校舎裏に来てくれよ」


 先輩は、ぶっきらぼうに言う。


「う、うんー」


 あたしは、小さく頷いた。




 早速、うちにかえると、お母さんに聞いてみた。


 お母さんは、2つ返事で飼ってもいいと言ってくれた。




 早速、翌日の放課後に、校舎裏へ行くと、そのことを真鍋先輩に話した。


「お前、飼い主が見つかったぞー。良かったな」



 そう言って、ブレザーの胸元から子猫が顔を出した。


「みゃー!」


 てっきり、うちに置いてきたのばかり思っていたから、学校に連れて来ていたなんて、びっくりだ。


「おいで!」



 あたしは、子猫に優しく手を差し伸べた。


「ほら、ポップ。ご主人様が呼んでるぞ」


 真鍋先輩が、そう子猫を呼んだので、あたしはキョトンとした顔で、先輩を見る。


「ポップって、この子の名前?」


「あ、悪い。勝手に名前をつけてー。うちに連れて帰ったら、暴れまくって、跳ねかたがポップコーンに似てたから」



 先輩は、顔に似合わず、可愛いい名前をつけるんだー。


 あたしは、思わずクスッと笑ってしまう。


「名前ー。そんなに変か?」


 先輩は、睨みつけるようにあたしを見た。


「ご、ごめんなさい!!変とかじゃなくて、可愛い名前だなと思って……」


 先輩に睨まれて、あたしは慌てて謝った。


「あ、いや……。悪い、怖がらせてー。俺、視力が悪いから、よく見たい時に目を細める癖があって、睨んでいるように見られがちでー」


 先輩は、あたしに頭を下げた。


「……」


 何だ……。そんな事情があったのかー。



 そんなことを知ってからか、先輩と会っても、怖くなくなって、ポップのことがあってか、前より話す機会が増えていった。

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