奔走戦闘編 3
まずは学園視点から開始。
翌日も襲撃が発生する。授業中ではなく、昼休み中なのが幸いか。
「あ、ごめん。行かないと」
「また? 続くねー。先生には言っておくから、気を付けてね」
「うん、ありがとう相良さん」
いつも通り屋上に向かう三人。すると道中三年生の女子に注意を受ける。
「そこの三人廊下は走らない……って例の! 急いでるって事はあれなの?」
「え、えっと、はい」
いきなり声をかけられた事に動揺する三人。
「そう。あーいきなりでごめんね、私生徒会長の泉小百合。応援してるからね」
一礼し急ぐ三人。それを見送る生徒会長。
「私も空飛んでみたいなー」
視点変更、長月荘の私から彼女達へと接続を開始。
「場所は南西の……山の中かな? 何も無さそうな場所。敵影は四体で全て小型。山の奥まで入られるとまずいかも。追跡に支障が出る可能性があるので急ぎます」
サイキの分析報告では大きな被害の可能性は無いだろうな。しかし学校とは正反対の位置なので移動に時間が掛かりそうだ。
「またえらく遠い所に出たな。移動までのエネルギー消費を考えると痛いな」
「リタの予想では往復で2%くらいの消費だと思うです。大丈夫です」
思ったよりも消費が抑えられるようだ。しかしナオが何かに気付く。
「ちょっと待って、一体レーダーからロストした。まさかステルスって奴じゃないでしょうね……」
「考えるのは後だ。まずは今見えている奴らを倒す事を優先しろ」
数分後到着。現場は山の中にある峠道のようだ。交通量はほとんど無い。
「雨だから余計見通しが悪い……散開して各個撃破しましょう。オーケーね?」
ナオからの指示で三人は別個に行動を開始。
「こう木が多いと動きにくい。一旦上空から探すわ」
既に紅葉も終わり、葉の散った山中ではあるが、枝に阻まれて中々探索が進まない。そうこうしているうちに青柳から状況報告が入る。
「先ほど一体レーダーから消えたという話がありましたが、恐らくはトラックに轢かれたものと思われます。子供を轢いたと運転手からの通報があったのですが、場所的にも間違いないかと。追加情報が入り次第お伝えします。それから警官隊の到着まではまだかなりかかる見込みです」
「トラックに轢かれる侵略者なんて初めて聞いたです」
確かに侵略者と言えば強いという先入観が先行していて、トラックに轢かれるだなんて思っても見なかった。リタも戦場に出ていた訳ではないので、相手の強さを未だに量りかねている嫌いがある。早く慣れて欲しくもあり、本当ならば慣れる事も無く平和に過ぎて欲しくもある。複雑な心境だ。
「相手が小型ならばトラックに轢かれて倒されるっていうのは充分考えられるわよ。忘れた? 以前警官隊の人達だけでも小型を一体倒せたじゃない。動きは素早いけど、やろうと思えば生身の大人数人でも倒せるのよ」
「俺でもか?」
と冗談交じりに聞いてみる。
「おじいちゃんは無理しちゃ駄目よ」
なんだ傷付くなあ。否定は出来ないが。
最初に目標を見つけたのはリタだ。
「ターゲット発見です。うーん……」
「リタ、まずは広い所に追い込みなさい。狙うのはそれから」
リタの様子からすぐさま指示を飛ばすナオ。最初は心もとなかった参謀だが、すっかり一人前になったな。
「こっちも見つけた。丁度道路に出たから一気に叩く!」
少しの間の後「一体目撃破!」の報告。サイキはナオと合流。しかしナオ側は中々見つけられない。枯れた笹やぶの中に潜んでいるようだ。
「どうしようかしら……よし、サイキはリタの所に行って。リタはサイキが到着次第交代でこっちに来て」
「何か妙案でも?」
「まあね」
どうやら自信有り気なご様子。ならば知将の腕前を見せてもらいましょうか。
「リタ地点に到着。ターゲット確認。任せて!」
「サイキ任せたです。リタはナオと合流するです」
サイキは得意の高機動を見せ、小型を追い込む。リタもナオの地点に到着する。
「リタ、なるべく広範囲に弾をばら撒いて頂戴」
「散弾はそうそう当たらないですよ?」
「いいの」
高度を取り、ショットガンに持ち替えて広範囲を狙うリタ。一発、二発、三発。
「……動いた! いっけー!」
わざと広範囲に弾をばら撒いたのは、小型侵略者をあぶり出すためだったのか。術中にはまり逃げ出す小型が見える。完全に狙いを定めたナオが槍を投擲した。
「やったか?」
背丈のある笹やぶが邪魔をして撃破の確認が出来ない。
「……やった、かな。レーダーからの消滅を確認。一応目視でも確認するわね。リタは念の為狙いを定めておいて」
高度を下げ、槍の刺さった場所を目指すナオ。そして青柳が不吉な一言。
「フィクションでは逆襲を受けて死亡するシチュエーションですね」
「ちょっと、嫌な事言わないでよ……」
一気に慎重になるナオ。最早おっかなびっくりと言ったほうが正しいな。
「二体目撃破!」「わぁっ! ちょっとサイキやめなさいよ!」
わざと大きな声で撃破報告をするサイキ。それに驚くナオ。
「戦闘中です」
冷静に、そして呆れたような声のリタ。それに対して二人と青柳が謝る。まるでコントだ。
「ねえ、別のレーダー入れたんだよね。それ使ってみようよ」
サイキの案に乗り、エネルギー消費のあるレーダーを使ってみる三人。
「結構消費あるね。わたし2%減った。でも反応は無し」
「これなら撃破と認定してもいいと思うです」
「そうね。じゃあ三体目撃破しました。えーと四体目はトラックに轢かれたんだっけ。一応現場を確認しましょうか」
空中から槍を回収したナオ。やはりこの機能は便利だな。
問題の四体目。パトカーとトラックが止まっているので場所はすぐ分かった。パトカーの後部座席に乗せられているトラックの運転手には見つからないように、トラックの下を覗き込む三人。
「ねえここ、新しそうな傷がある、消滅時に付いたのかな。リタどう思う?」
「……恐らくそうだと思うです。さっきのレーダー索敵でもここら辺の反応は無かったです。トラックに轢かれた小型侵略者がそのまま消滅したと考えるのが妥当です」
「じゃあ四体目も撃破を確認、戦闘終了って事でいいわね?」
サイキとリタも同意。青柳も了承し、三人は帰って行く。
「やばっ、もう休み時間過ぎてるよ!」
こりゃ家での復習必須だな。
その後トラックの運転手は動物を轢いたのではないかという事にして無罪放免。被害もトラック前面の凹みと運転手の精神的ダメージのみで済んだ。三人はというと、時間が掛かり帰りが遅かった事を心配されたと言っていた。それを話す彼女達の表情はどこか嬉しそうであった。
夜になり再度青柳から連絡が入る。明日私のみが警察署に呼ばれた。怪しいと勘繰る三人だったが、診断書を渡すだけだというので警戒はすぐに解けた。彼女達が来てから、すっかり私の日常は様変わりしてしまったな。その代わりと言っては何だが、十五年前のあれ以来、ここまで充実している日常は無かった。
良くも悪くも彼女達と侵略者のおかげだな。




