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別世界からの下宿人  作者: 塩谷歩
変則戦闘編
201/271

変則戦闘編 1

 月曜日に、週間天気予報を確認。

 「テスト期間中は雨だな。これはお前達大変だぞ」

 「うーん、先生にちょっと交渉してみようか?」

 「テスト期間中に襲撃があった場合の事? 代替日は用意してくれるとは思うけれど……まあとにかくやるしかないわね」

 「国語の時間にだけは出てきてほしくないです。今回リタは、本気でサイキを追い抜くつもりですよ」

 「何の、わたしなんてナオと並ぶつもりだもん」

 「ふふっ、私はオール百点狙いなのよ? そうそう簡単に並ばれてたまりますか」

 うん、雨の事はどうでもよくなったらしい。

 「ちなみに土日は晴れだから、もしも天気が変わらなければ、金辺市の自衛隊駐屯地にお邪魔出来そうだ」

 「ならば余計に頑張るですよ!」

 やはり一番反応がいいのはリタだな。



 登校中の三人に視点を移す。

 「……ねえ、という事はやっぱり、リタはもう一度帰る事になるんだよね?」

 「もしも今週末が晴れならば、武器技術が手に入ったならば、帰るです。でも最後まで一緒ですよ」

 「最後か。そろそろ、よね」

 三人の表情は複雑である。

 「おはよー。あれーなんか暗いよー?」

 何でもないようにと振舞ったつもりの三人だが、あっさりと中山に看破されてしまった。

 「おはよう。……まあね、考える事があってね」

 「えーなになにー?」

 「教える訳ないじゃないのよ」

 すると一条が一言。

 「悪い事だな」

 それに対して、サイキとナオは少し困った表情だが、珍しくリタが反論をした。

 「悪い事ではないです。情報を教えてもらい、それをリタ達の世界に伝える予定を立てていたですよ。いつも通り、何も変わらないです」

 ちらっと二人の顔も見るリタに、サイキもナオもその意味を理解した。例え自分達がいなくなったとしても、侵略者など最早出てくる事はなく、皆の日常が変わる事はない。そうしなければいけないと。

 「うん、何も変わらないよ。だから皆が心配するような事は何もないんだ」

 真剣な表情ではなく、あくまで笑顔でそう話すサイキ。

 「ふーん、あたしは元から心配してないけど」

 相良の一言でその場は終わった。


 放課後になり、三人のうち代表としてナオが職員室へ。

 「失礼します。孝子先生、ちょっとお話が……」

 「おっ、丁度いい所に。今呼び出そうと思っていたんだけど、先にそっちの用件から聞くよ」

 「テスト期間中の事なんだけど、天気が悪いみたいなんです。テスト中に戦闘があった場合、私達はどうすればいいのかなって」

 「あはは。こっちの用件も同じで、これから職員会議で決める予定なんだよね。決まったら私から長月荘に電話入れるから、心配いらないよ」

 「そうですか。良かった」

 ほっと胸を撫で下ろすナオ。

 「それで一応あんた達の予定を聞いておこうかなってね。多分今週土曜日が代替日になると思うんだけど、都合が悪ければ考えるよ」

 「……えっと、土日は晴れたら金辺市の自衛隊駐屯地まで行こうかっていう話になっていて、なるべくならば週末は避けてもらいたいのよ。……もらいたいんです」

 思わず素の言葉が出てしまい、恥ずかしくなり顔が赤くなるナオ。

 「ふふっ、近しい間柄だと敬語も忘れちゃう事があるよね。うん、あんた達優先で考える予定だから、任せておきなさい。それも含めて工藤さんから聞く事」

 「はい、分かりました。それじゃあ失礼しました」

 職員室の扉を閉めると、ほっと一息のナオ。一人で職員室に来る事などまずないので、実は緊張していたのだった。



 再度、視点を工藤一郎へと変更。

 私とエリスは買い物ついでにカフェへ。

 「いらしゃいませー」

 以前はエリスもサイキもすぐさまくっ付いていたのだが、最近は落ち着いている。しかし一人足りないな……と思ったら来た。

 「遅れましたーって二人とも来てたんだ。後で孝子先生から連絡があると思うわよ」

 「連絡? ああテスト中の戦闘の事か。了解したよ」

 のんびりと私はコーヒーを、エリスはココアを頂いていると、見た事のある顔が店に入ってきた。青柳だ。

 「おや、普通にこんな所で会うとは珍しいな」

 「たまに来るようになったんですよ。子供達の監視も含めてですけど」

 すると青柳は何もせず、サイキが紅茶を運んできた。

 「お前紅茶なのか。顔に似合わないな」

 「余計なお世話です」

 と言いつつ紅茶を嗜む青柳。それはそれは似合わない。


 「……ああついでなので一つ。三月に入ってから最長で十日ほど、もしかしたらですけど、私の代わりに別の方が監視役に入るかもしれません」

 「青柳遂にクビか」

 「嫌な事を言わないで下さい。……他の部署の人員不足で呼ばれる可能性があるという事です。私の元の部署なので、嫌とも言えませんから」

 そう言いつつも嫌そうである。元の部署が嫌いなのか、今の生活が楽しいのか、さてどちらだろう。そこにいたサイキを手招きして、この事を教えておいた。

 「うん。分かりました。……戻ってくるんですよね?」

 「ええ、単純に手を貸すだけですし、それ自体がなくなる可能性も充分にありますので」

 「よかった。二人にも伝えておきます」

 にっこり笑い手伝いに戻るサイキ。一方の青柳は、どうしてかとても嬉しそうである。表情は相変わらずであるが雰囲気がそうなのである。

 「どうした?」

 「……え? あ、いえ。よかったと言われて、嬉しくなっていました」

 「ははは、やっぱり頼られている実感があると身が入るよな」

 「ええ。なんというか、感謝される事も嬉しいですが、頼られるとまた別の嬉しさがありますね。自分の価値を認めてもらえたというか」

 自分の価値か。果たして私自身の価値は如何ほどなのであろうかな。


 のんびりしていると青柳の携帯電話が鳴った。そしてそれを私に。

 「もしもし?」

 「あーやっぱり。孝子先生ですよ。長月荘に電話しても出ないから、秀二さんと一緒じゃないかなって思ったら、正解でした」

 「ああすまんな。今カフェに来ているんだよ」

 「いいなー、私もお茶したい。あーそれでね、テスト期間中に襲撃があった場合どうするのかが決まったので、そのご報告を。月曜日か火曜日に私が直接長月荘に行って、そこでテストする事になりました。元住人だから出来る事、かな」

 「ははは、また迷惑かけるね。子供達には伝えておくよ」

 という事で次はそこにいたリタを手招き。青柳の事は既にリンカーで情報が回ったそうで、テストの事もすぐ二人に情報を回したそうな。ちらっと二人を見ると、両者とも頷いたので了解したという事だろう。



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