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私の彼は忍者  作者: 紅葉
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お楽しみってなんですか?

惜しかった。もうちょっと、一緒に居たかった……。


でも、でも!

大事に食べるから、だって!!


ニヤけてしまう頬に力を入れて、電車に乗ると、中には由希ちゃんと優理花ちゃんが乗っていた。


二人ともこちらをニヤニヤして見ている。


「あれ?先に帰ったんじゃなかったの? 」


と、つい口に出てしまったが、1時間に1本の電車しかないんじゃ、当然か。


「先輩と二人きりにしてあげようかな〜って、先に帰ってあげたんだよ。 こんなに直ぐに駅に来ると思わなかった」


「いい感じだったじゃん、告白出来た?」


!!

いやぁ〜、告白なんて、滅相もない。

頭をブンブン横に振れば、

「残念〜」と返ってきた。

何だか二人とも不満顔をしている。


「まあ、仕方がないよね。理沙と藤波先輩だもんね」

と、由希ちゃん。


どういう意味でしょうか。


あ、油断したら顔が弛む……。




次の日。日曜の部活は午前中だけだ。


今日も基礎の稽古に加えて、試合形式の稽古が繰り返された。


ちらちらと藤波先輩の様子を伺うけど、先輩はいつも通り、稽古に集中している。


……ちぇっ、意識してるのは私だけか〜。



部活が終わって、いつもの三人組で剣道場から部室棟へ歩いていると、藤波先輩が後ろから追い付いてきた。


「ねえ、この後用事ある? 」


ドキン。

心臓が跳ねた。


きゃーー!!藤波先輩がナンパ?

似合わない!!

と、由希ちゃんと優理花ちゃんが後ろで笑ってる気がする……。


「あ。あたしたちは用事あるんで、吉田だけ連れていってあげてください!! 」


最後まで聴かずにニヤニヤしながら、私の背中をぐいぐい先輩の方へ押してくる二人。

……どうやら応援してくれているらしい。


確かに昼からは暇だけど。


三人を均等に見ていた藤波先輩の視線がわたしに固定され、返事を待っている。


「あの、私でよければ」


上目遣いに反応を伺ってしまう。


にこりと微笑んでくれた。


「昨日のところで。また後で」


と、言い残し先に行ってしまった。


当麻先輩と何やら楽しそうに話しながら、二人のイケメン男子は部室に消えていった。


「やったー!!デートじゃん?? 今度こそ、告白しちゃいなよ!!」


と、背後で盛り上がる二人。


他人事だと思って、発破をかけてくれるな。


でも、据え膳食わぬは武士の恥といいますから、喜んで行っちゃいますよ!!


女子部室では、制汗スプレーを振ったり着替えたり、忙しく時間は過ぎていった。

部室の掃除も済ませて準備万端!!


鍵を掛けたら副部長は、いつになく挙動不審な理沙を怪訝に思いながらも由希ちゃん達の連係プレーによって連れていかれてしまった。


男子部室は……今日はもう施錠した後か。男子は大所帯ながら、着替えなどは早い。ドアノブを触ってみなくてもガヤガヤと賑やかな声は聴こえなかった。


階段に座ってみる、


ジャリっと砂を踏む音に、パッと立ち上がる。


人違いか。


ストン、とまた座る。

何となく階段の手摺の壁にもたれて隠れてみたり。


はぁ……


ドキドキドキ……


心臓が跳ね回る。



2月の柔らかな日射しが作った私の影に、誰かの影が重なる。


ハッっとして顔を上げると、藤波先輩のお姿……。


「お待たせ、行こうか」


「はっ、はいぃ!! 」


「……」


先輩に続いて黙々と歩く。


相変わらず、会話は弾まない。


「先輩、どこに行くんですか?」



「……着いてからのお楽しみ」


「……」


ゴクリ。


お楽しみですか?


何かヤバいとこに連れていかれたら、どうしよ〜。


いや、藤波先輩とならいいけど。


ホントにいいのか!?私?


今日、下着どんなだっけ?


いやいや、ちょっと待て私!!


そんなわけないない!!


そういうお楽しみじゃないから!!


まだ告白もしてないのに!!それは、ナシ!!


……理沙が煩悶としている間にも、二人の足は歩みを止めない。


 



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