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私の彼は忍者  作者: 紅葉
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そして、2 月14日 3

藤波と共に剣道場まで戻ってきた理沙は、もう一度ヤカンを持って貰ったお礼を言った。


「ありがとうございました!! 」


ペコリ。


藤波の手からヤカンを受けとる。


「じゃあ、後で」


口角を少し上げるような小さな微笑みを残して、藤波は先に剣道場に入っていった。


くぅ〜。あのクールなところが堪らない!!

さりげない優しさといい、はにかむような微笑みといい、理想の沖田様〜。


ていうか、『また後で』って……まさかのお呼びだし成功ですか?


どうしよう、ホントに呼び出してしまった……。


これで優理花ちゃんたちは許してくれるかな。二人がチョコを渡すためのお呼びだし……何故か胸がチクリと痛んだ。

そういえば、先輩は私が来るって思ってるよね……言葉が少なかった為に先輩を騙してしまった?


あわわわ。

どうしよーー!!

何とかしないと!!


そうだ!!

私もチョコを一緒に渡せばいいんじゃん。

ーーって!!私のチョコ〜!!

さっき当麻先輩に紙袋に入れたまま『その他多数』とともに渡しちゃったじゃん!!


誰のところに行っちゃったんだろ〜、私の藤波先輩用スペシャルチョコ。


部活始まる直前だったし、もう既に男子に配られたとは言え、まだ食べていないはず。

かくなるうえは……。



ともあれ、ヤカンを持ったままいつまでも煩悶とはしていられないので、道場に戻る。

既に休憩に入っていた部員に優理花ちゃんと由希ちゃんに手伝って貰ってお茶を配る。


「で?首尾は? 」


由希ちゃんが顔を近づけて訊ねてきた。


「首尾は上々」


訊いておきながら由希ちゃんは、へ〜、という顔をする。


何でしょうか。


「たださ、ちょっと誤解が……」


お茶を配りながらじゃ話せませんが……。


「後で聞くわ」


そう言って離れて行った由希ちゃん。今度は優理花ちゃんと近づいて、何やらゴニョゴニョ。

嬉しそうな顔で顔を見合わす。


……。チクリ。


お茶が行き渡ったのを確認して、「ちょっと御手洗い〜」と道場を抜け出す。


部室棟までダッシュ!!


さっと行って、さっと帰ってくれば休憩時間の間に戻ってこれるはず。


いかにも『忘れ物取りに来ました〜』なフリをしつつ、部室棟の階段を駆け上がる。


男子部室の前に立つ。


ゴクリ。緊張で喉が鳴る。


これって、見つかったら犯罪だよね。

チョコを入れ替えるだけ、入れ替えるだけ。


ブツブツ言いながら、ドアの取っ手にてを伸ばす。


が、鍵が掛かっていてドアノブは回らなかった。


犯罪者にならなくて済んでホッとしたような、チョコ入れ替え作戦が出来なくて残念なような……。


仕方がない。諦めよう。


とぼとぼと道場に向けて戻って行った。




道場に戻るなり由希ちゃんと優理花ちゃんに捕まった私は、今度は道場の裏に連行された。


「理沙、よくやった! で、誤解とは? 」


「緊張しすぎて『部活の後、お時間ありますか?』としか言えなくてさ〜、藤波先輩が『また後でね』って言ってくれたから、オッケーってことなんだろうけど、私、優理花ちゃんと由希ちゃんに頼まれたって言いそびれて……」


報告を受けて、キャアと手を取り喜ぶ二人。

「別にいいじゃん。一緒に居れば」


「だって……変じゃない。私だけチョコ持ってないのに。」


「告るわけじゃないんだし、付き添い居たって変じゃないよ」


「う〜ん。私のチョコ何処に行ったのかなぁ」


「義理だと思われたとしても、理沙は先に渡してるんだから」


「そーそー。グズグズ言ってないで、呼び出したのは理沙なんだから、一緒に来るのよ! 」


なんだか無茶苦茶な理論ですが……。そういうことになってしまった。



20分の休憩を終えて、再びお稽古。


今度は理沙も防具を着けて面打ちや小手面の練習をする。

集中しているうちに、あっという間に時間は過ぎていった。


12時になり、持ってきたお弁当を部室で食べる。


殆どみんながお弁当を食べ終えて、ゆったりと休憩をしていた頃。

吉備先輩がおもむろに立ち上がり、手を打ってみんなの注意を引いた。


「ちょっと皆、聴いてくれる?」


お菓子を開けて食べていた先輩も、お喋りに夢中になっていた先輩も静かになって次の言葉を待った。


「4月に全国高等学校剣道選抜大会があります。新2年生も出てもらうから、そのつもりで稽古頑張って下さい。

午後から1年生は、対戦形式の稽古をつけていくからよろしく。以上です」


えーー!!

私らも??



1年生の反応を見るために、近くに来てくれた吉備先輩は、

「実力試しだと思って、やってみようね」

と、微笑んだ。




午後の稽古は吉備先輩の予告通り、対戦形式での打ち合いとなった。


なんだかワクワクするねっ。


そんな逸る気持ちを抑えて、先輩の指示に合わせて二人一組になる。


「立礼」

当麻先輩の声が道場に響く。


まずは提刀。左手で竹刀を軽く持つ。持つ位置は日本刀だったら鞘の鍔に近い辺りね。

手は自然に伸ばして、戦意を見せないお座敷で、刀を腰から抜いて手に持つお侍さん風。


次に『これは、これは。新撰組の近藤氏とお見かけいたす』『これは、これは。市中見廻り組の方々』という感じで、目線は相手に据えたまま、腰から礼をする。


「帯刀」


『ふん。多摩の田舎者の分際で! 』 と、鼻で笑われたつもりで、

『無礼もの!! 』

と、竹刀を持つ左腕を曲げ、腰の辺りに付ける。いつでも鯉口を切れるように親指を鍔にかけるっと。


「抜刀」


『成敗してくれるわ!! 』

と、竹刀の柄に右手をかけ、抜刀する。


「蹲踞」


抜刀したら中段の構えのまま腰を落とす。この辺から新撰組妄想では追い付かないんだよね。低い態勢での礼らしいんだけど。

ふらつかないように気をつけてっと。

「納刀」


竹刀を上にしてから、身体の横を通って左手で腰の位置に納めて〜。

帯刀のまま、すらっと立ち上がる。

提刀に戻して、礼。


……納刀した左手を見る。


しまった…。峰が上にきてる。

上下逆だぁ〜。


こっそり手の内で竹刀を回す……。


「吉田〜!!」

吉備先輩のよく通り声で注意された。


すいませーん。


この後、理沙は竹刀の弦が回転しないように納刀出来るまで何度も練習されられた。



今回も理沙の妄想全開です。

真面目に剣道されている方、されてきた方、どうもすみません。

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