天馬優駿という転校生
優駿君は目を見開いて驚いているようだ。
そりゃそうだ……こんな格好のクラスメイト目撃したら、驚くよね。
「吉田さん、何してるの? 」
改めて聞くか?
カァ〜、と顔が赤くなってきた気がする。
「えっと、あ……バイト」
「そ……そうだよね。ごめん、バカな質問して」
優駿君も顔が真っ赤になってます。
「ううん、……じゃあ、ごゆっくり」
内緒にしてくれていたらいいけど、ダメだろうな〜。
明日学校で笑い者かな。
覚悟して登校したけれど、学校でからかわれたり、聞こえる範囲では噂になってないみたい。
優駿君黙っててくれてるのかな。
放課後、レストランにバイトに行くと、優駿君がまた一人で来店した。
そんなにこのお店が気に入ったのかなぁ〜。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか? 」
「はい」
「ショー付きのお席と、ショー無しのお席がございますが、どちらに致しますか? 」
そう。このレストラン、二階はショー無しで食事して帰れるようになっているのだ。ショー付きの席は観劇料として、お一人様プラス300円を戴いている。
「今日のショーはなに?」
と、優駿君が聞いてきた。
学生にはプラス300円は決して安くないのに、本格的にお気に入りなんですかね。
「『美人くの一vs.織田信長』ですね」
私も観たことがないから詳しくは話せないけど、今日の演目はそうらしいよ。
そして、美人くの一はオススメです。
優駿君の顔がボワンと赤くなった。
何を想像したの?
お風呂シーンは無いよ?
「吉田さんは、どっちのホールの担当なの? 」
「……一階ですが」
それがどうかした?
「じゃあ、ショー付きで」
毎度ありぃ。
「では、こちらへどうぞ」
営業スマイルを貼り付けて、優駿君を席を案内した。
……その後も何故か頻繁に優駿君は店にやってくる。
一人でショーレストランに来ていることを知られたくないからか、私のことも噂にならないから、いいんだけどね。
お店で差し障りのない会話だけだけど、ちょこちょこ話をするせいか、何となく話しやすくなって、クラスでも優駿君とお喋りをするようになった。
学校での優駿君は、明るくて会話が上手くいつも友達に囲まれている。
転入早々サッカー部に入って活躍しているらしい。
転校してきて一ヶ月なのに、その溶け込みようといったら大したものだね、とボンヤリ眺めていたら、優駿君から声を掛けられた。
「吉田さん、次、教室移動だったよね?場所連れていってくれないかな?
まだあんまり覚えてなくて 」
……友達のいない可哀想な子だと思われているのかな?
確かに二年生になって、由希ちゃんとも優理花ちゃんともクラスが離れちゃったけど、友達いない訳じゃないよ?
なのに、優駿君は近くにいる友達じゃなくて、必ず私に訊いてくる。
レストランで、あれこれ質問してくるのが習慣化したんだろうか?
仕方なく席を立って、優駿君の取り巻きと共にゾロゾロと教室移動するのだった。




