全国高等学校剣道選抜大会 2
理沙が再び応援席に戻ると、ちょうど先輩が試合場に出てくるところだった。
間に合って良かった〜。
「今から藤波先輩の試合ってことは……当麻先輩、終わっちゃった?」
恐る恐る優理花ちゃんに聞いてみれば、さっき終わったばかりだとのこと。
見逃しちゃった……。
まあ、いいか。部長の事なら一回戦突破してるはずでしょ。
「当麻部長は2本先取で勝ったよ」
と、優理花ちゃん。
おぉ、やはり! さすがですね!!
では、藤波先輩の応援をしよう♪
同じくDブロックの試合場では、藤波先輩と他校の男子との試合が始まっていた。相手は県内で強豪と名高い学校。
お互い会場の雰囲気に呑まれることなく、落ち着いていて、お互いから視線を外さない。
相手も強そうだな〜。
初戦からこんな相手に当たるなんて……先輩頑張ってぇ〜!!
打っては受けられ、打たれては弾き、ぶつかり鍔競り合いをしては、間合いを取って離れる……。
試合場のラインの中を縦横無尽に動き回る。
実力が拮抗しているらしく、なかなか有効打突が当てられない。
先輩が一本、相手が一本と取り、三本目の試合が始まる。
二人とも技を繰り出すのが速すぎて、理沙の目には胴に入ったと思ったのに、審判の旗は上がらない。
会場のあちこちから「ヤー」「トー」と気勢の声が甲高く響く。
ダン、ダダンッ
遠目の間合いから、飛び込むように踏み出し、上段から鮮やかに面が決まり、そのまま少し行き過ぎ、クルリと振り返り残心ーー。
審判の旗が上がり……!!
「勝負あり」
「やったーー!! 」
藤波先輩、一回戦突破ですよ!!
男子個人戦の結果は、
当麻部長決勝戦出場で2位。
藤波先輩は準決勝出場で4位。
女子個人戦の結果は、吉備部長が準決勝まで残って3位だった。
次は団体戦試合ですね。
一階に降りて、出番を待つ。
EとFブロックが女子の試合場になっているので、その近くでスタンバイする。
う〜ん、やっぱり応援席とは違う緊張感……。
学校名が呼ばれる。
いよいよ先鋒の理沙の出番ですよ。
団体戦は勝ち抜き選ではなく、先鋒は先鋒と、次鋒は次鋒と戦い、勝ちの多いチームの勝ちとなるルールで行われる。だから、一勝の価値が大きいのだ。
対戦相手の先鋒は……
デカ!!
身長も高く、体格もがっしりした女子……ぶつかり合ったら、弾き飛ばされそうだ。
っていうか、これだけの身長差だと有効な面が当たりにくいよね、胴か、小手狙いかなぁ〜。
礼をして、中央へ……。
一足一刀の間合いで向き合う。
面の向こうで、余裕綽々に薄く笑ってる……チビだと思ってーー!!
うがぁ!!
脳天に衝撃が響く。
早速一本取られちゃった。
仕切り直して、再び向かい合う。
また同じように面を取られてたまるか!!
相手の打ち下ろす竹刀を、横にした竹刀で受け止める。
ぐぐっと力で押されたのを支えていたら、ふっと軽くなって……。
パァン!!
スッと下がったかと思ったら、踏み込まれて胴を取られた。
「勝負あり!! 」
あっという間に2本を取られて敗退……。
みんな、ごめん。
シオシオとみんなのところに戻る。
「理沙、ドンマイ」
と、由希ちゃんが声を掛けてくれた。
ありがと……。
次鋒の優理花は一本取っての敗退。
中堅の由希は接戦の末、勝利。
副将の先輩が一本取っての敗退。
大将の副部長は二本先取の大勝利。
二勝三敗で一回戦負けに終わりました。
試合が終わって、二階応援席に戻る途中の階段で、藤波先輩が待ってくれていた。
通る人の邪魔にならないように、廊下の柱の陰に移動する。
「負けちゃいました……」
先輩の顔を見上げて報告する。
練習の成果が出せなくて、あっという間に二本取られて、悔しくて、悔しくて……。
藤波先輩は優しい微笑を浮かべたまま、私の頭にポンと手のひらを載せた。
手の重みが心地いい……。
はぁ〜、涙が出そう〜。
「頭に血が昇りすぎたね」
ポンポンと慰めるみたいに軽く頭を叩かれた……。
うぅ〜〜!!
緑色の床に、ポタポタと水滴が落ちた……。




