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私の彼は忍者  作者: 紅葉
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彼女のおうちにごあいさつ♪

「じゃ、明日から部活の後、俺ん家でトレーニング始めるから、一緒に帰ろうな。春休み中は毎日で、学校始まったら日曜の部活の後でいいかな?」


異論はありませんとも!!


ニコニコと楽しそうに計画をたてる先輩を見て、私も楽しい気分になる。

先輩と一緒ならきっと修業も楽しいと思えた。

そう言えば、先輩の家って何処なんだろう。

前に由希ちゃんたちと、その話題になったことがある。


「始めに言って置くけど、理沙が忍者修行をしていることは内緒だよ。もちろん、飛燕が正真正銘の忍者集団によるショーだということも。」


由希ちゃんたちに聞かれたら黙ってられる自信ないよぅ。


「じゃあ、由希ちゃんたちとか親にはなんて言って良いの〜」


「理沙が卒業するまでは人前に出ることは絶対ないから、親には先程まで理沙が言っていたショーの劇団の練習とかレストランのアルバイトでもいいし……俺ん家に来るんだしデートでもいいんじゃないかな?」


なんだ。先輩たちが本当の忍者で、本物の忍術を習ってるって事だけを秘密にしておけばいいんですね!


その通り、と先輩が優しく頭を撫でてくれた。

優しく髪に触れる指先が、くすぐったいような不思議な気持ちにさせる。


不意に真剣な表情になった先輩が何かを決意したように口を開いた。


「理沙……今日は家まで送って行くよ。デートだって誤魔化すにしても、連日じゃご心配かけるだろうし……理沙のお母さんに彼氏だって挨拶させてもらっていいかな」


先輩……。

優しいですね!!

もちろんです。よろしくお願いします!!


先輩の着替えるのを待って、二人で手を繋いで歩いた。


いつも別れる駅の改札を一緒に通る。

15分ほどの電車に一緒に揺られているのも、何だか面映ゆい。




駅を出て駅前の小さな商店街を抜けて住宅街へ。


女の子友達を呼ぶのとはまた違う緊張感があります。先輩も……あらら、緊張されています。

当然ですよね……。



住宅街の中の一般的な一軒家。

それが我が家、吉田家です。

どうぞ、先輩いらっしゃいませ。


「ただいま〜」


「おかえり〜」


家の中に帰宅の挨拶をかけると、母が出迎えてくれました。

私の後ろに立つ予想外の来客に気付いて母の動きが止まりました。


「えっと、剣道部でお世話になっている藤波涼先輩です」


あぁ〜!!私の意気地無し!!

悪いことしてるわけじゃないのに、『彼氏です』の一言が出ません。


「はじめまして、藤波涼です。いつも理沙さんとは剣道部でご一緒させて頂いてます」


先程までの緊張はどこへやら爽やかな笑顔で挨拶をする先輩。


「あらあら。理沙ちゃん先輩に送ってきて頂いたの?いつも理沙がお世話になってます。理沙の母です」


母が先輩に挨拶を返す。


「いえ、そんな。」


恐縮して返す先輩を前に押し出しながら、意を決してカミングアウトするぞ!!

えーーい、ままよ!!


「それでねっ、先輩とお付き合いしてます!! 」


どうだ!!


「……」


「あらあら〜、この子ったら玄関先で……。ごめんなさいね〜、藤波君、良かったら上がっていってね」


「いえ、僕はこれで……」


「先輩!! どうぞ!! 」


「アップルパイを焼いたの、良かったら食べていってね」


「……じゃあ、ちょっとだけ。すみません、お邪魔します」


先輩を自分の部屋に案内して、お茶を淹れにキッチンに向かう。

母が傍らでアップルパイを切り分けてお皿に載せていた。


「……理沙ちゃん、あんなカッコいい男の子とお付き合いしてるなんて、ママ知らなかったわ〜♪さすが、ママの娘だわっ」


お母さん、語尾にハートが付いてるように聴こえますが……。

まあ、反対されなくて良かったかな。

アップルパイのトレイに、ティーセットを載せる……お、重い。


「アップルパイはママが持つから、理沙ちゃんはティーセットだけ持って運んだら? ママも、もう一回藤波君見たい♪」


部屋に入ろうとしたところで、内側にドアが開かれる。

ノックしていないのに、先輩が気付いて開けてくれた。


アップルパイとティーセットが部屋のローテーブルに置かれて、先輩が改まった顔を作った。


「先程はご挨拶が遅れてすみません。理沙さんと、お付き合いさせて頂いてます、2年生の藤波涼です」


「あらあら、ご丁寧にどうもありがとう。理沙をよろしくね」


母はにっこり笑って部屋を出ていった。



コポコポと母自慢のティーカップに薫りのよい紅茶を注ぐ。


サクサクのパイにフォークを突き立て、リンゴの甘煮と共に口に運ぶ。

うーーん、幸せ。


「先輩、どうですか? 」


「理沙の淹れてくれた紅茶、美味しいよ」


褒めてもらった!!


「アップルパイも美味しい。理沙のお母さんお菓子作り上手なんだな」


美味しそうに食べる先輩の極上の笑みに鼻血吹きそうです〜。

先輩はアップルパイを食べた後、直ぐに帰ってしまいました。

ちぇ〜、残念。



その夜、アップルパイをとても褒めていたことを伝えると、母は上機嫌で、「次に涼君を呼ぶときは早目に連絡してよ!! 次は何を作ろうかしら〜♪」

と舞い上がり、来客中、自室に籠り密かに様子を窺っていた弟は、「姉ちゃんにイケメン彼氏が出来たーー! 」と、大騒ぎだった……。




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