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私の彼は忍者  作者: 紅葉
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剣道場の前で待ってます。

「お母さん、春休み入ってすぐの3日間クラブの合宿だって」


キッチンで夕御飯を作る母の後ろ姿に話し掛ける。

クンクン……豚のしょうが焼きか。


「参加していいでしょ〜? 」


「そうねぇ〜」


当麻先輩の家ということで、合宿参加費用が安くして貰えるとはいえ参加費は掛かるし、なにより未成年であることから保護者の許可が必要不可欠なのだ。


「男の子と一緒なんでしょう……ちょっとねぇ〜」


「いや、だから。当麻先輩のご家族も居るし、顧問の先生も居るし、寝る所は別々だしっ! 」


「まあ、それは当然よねぇ〜」


のらりくらりと返事を濁す母にイライラが募る……でもダメだ。ちゃんと説得しないと。


「春の選抜大会の為の強化合宿だってば。遊びに行くんじゃないんだし」


「みんなこの辺の子なんだから、通いじゃダメなの〜? 」


「遅くまで稽古出来るし、皆とご飯を食べて、部としての団結を深めたり、士気をあげたりも目的だから。お願い!行かせて! 」


両手を合わせてお願いポーズをとってみる。


「う〜ん。今晩お父さんと話し合ってみるわ……さ、お腹空いたでしょ、召し上がれ」


豚のしょうが焼きと付け合わせの野菜、ご飯とアゲとワカメのお味噌汁が食卓に並ぶ。


……ダメだ。平行線だ。

弟のバスケの合宿には二つ返事のクセに。


醤油の匂いに釣られて、しょうが焼きにかぶり付く。

小麦粉をまぶしてから焼いているので、タレの絡みが良いこのしょうが焼きは母の得意料理だ。


今日はこれ以上説得を試みてもお互い意固地になるだけだと諦めた。



「おいしいよ、お母さん」


「あら、良かったわねぇ」



翌朝。


「合宿行ってきていいわよ」


と朝食の目玉焼きを焼きながら、お母さんが素っ気なく言う。うしろ姿しか見えないけど、声から判断するに、納得していない様子。


「いいの? 」


「お父さんがね、『運動部には合宿は付き物だから行かせてやれ』っていうのよね。あの人も、学生時代運動部だったから」


はぁ〜とため息をつきながら、サラダのボウルをテーブルに置いた。

母より理解のある父で良かった〜。

じゃ、遠慮なく。


「でもね、自分の身は自分で守るのよ。男の子に誘われても、夜ふらふら出歩いちゃダメよ! 」


……お母さん、確かデキチャッタ婚だったよね……。

お父さんとは高校から付き合ってたんだって叔母さんからこの前聞かされたよ。もしかして体験談ですか……?




そして、終業式。


校長先生の有り難いお話を頂戴し、生徒指導の先生による『長期休暇の過ごし方』についてのお言葉を頂いて、式は終了。

ホームルームで成績表を貰ったら、下校ですよ!

2週間後には、2年生に進級するから、この教室とも、このクラスメイトともお別れだね。


この後カラオケに行こうと盛り上っているグループもチラホラ。

それじゃ、最後のクラス会って事で、皆で行こうということになった。


今日は部活はお休みだけど、明日からの合宿のために部室に置きっぱなしにしてある防具や竹刀を持って帰らなきゃね。


一旦帰ってから合流するしかないね。


昇降口で外靴に履き替えてっと……。

あれ?


靴の中に、小さく折り畳んだ紙が入っていた。


開いてみると……。


『HR終了後、剣道場前で待ってます 藤波』


と書いてある!!


ナニナニ?これは、何かの罠?


行っていいの?


騙されてない?


藤波先輩のファンに囲まれて、『生意気なんだよーー!! 』とか『藤波涼に近づくなよ』とか言われたりして!!


「ほうほう。なんて古典的な」


ビクゥ

急に背後からの声に驚いて、振り向いた。

……あ、由希ちゃんか。


「アンタたち、メルアドもまだ交換してないんだ」


意識すればする程なかなか言い出せないもんじゃない?


「これって、本物かなぁ」


既に覗かれて大方読まれてしまったので隠す必要もない。ピラリと紙片を由希ちゃんの方に見せた。

藤波先輩ファンの罠って可能性を話すと、呆れられた。


「相変わらず理沙の想像力は逞しいなぁ。う〜ん、可能性は無くは無いけど、そんな事までしそうな人いるかなぁ。第一、理沙はまだ一ファン、一後輩でしょ。目立ってないじゃん。それとも、この前なんかあった? 」


ニヤニヤしている由希ちゃんから逃げることにしよう。何を言わされるか分からないしっ!


「じゃあ、こっそり行ってくる」




第二校舎の裏にあるグラウンドの周りに体育館、部室棟とともに剣道場はある。

建物の陰に隠れながらこっそりと近づいてみる。……誰もまだ来てないようだった。

それにしても、私上手いんじゃない?監察方山崎烝もビックリだね。

うふふ。


「誰がいるの? 」


頭上から急に声がして、ドキーーン!!と飛び上がった。


せ……先輩!!

顔を上げて見れば、藤波先輩がぴったり背中に覆い被さるように立っていて、頭の上から同じ方向を覗き込んでいた。


「誰もいないね」


先輩が下を向いて、にこっと微笑む。

……顔!!顔近い!!


「おまたせ。行こうか」


促されて壁から離れて、剣道場へ近付く。


はあ、ビックリした。


手近なコンクリートの階段に横並びになって座る。


「はい、これお土産」


手にぽんと載せられた小さな紙袋。


「ありがとうございます」


紙袋を開けてみると、中にはカラフルなキャンディ……。

どうみても外国製な見た目。


「先輩、どこに行ってらしたんですか? 」


……二週間も会えなくて寂しかったです。


「アメリカ」


アメリカ!!


まさか海外とは思ってませんでした。

「海外の方が忍者ショー喜ばれるんで、毎年招待公演に行くんだ。その間もショーレストランはやってるから人手不足で、お爺さんに頼まれてお手伝い」



仄かに先輩、顔がピンクですよ。


じゃあ、アレですか。先輩、忍者の衣装着て舞台に出てるんですか。

どうりで手裏剣上手だったはずですね。

何色の衣装なのかな。

私も見たかった……!!


「どうりで、お爺さんたちも居なかったはずです……」


「行ったの? 」


あ! いや、バラしてしまった……。


「はぁ。先輩学校休んでるって聞きまして……」


ストーカー認定ですか?

シクシク。


「クス。心配してくれたんだ。ありがとう」


予想に反して嬉しそう……ストーカー扱いされなくて良かった。


「俺も前日の夜に急に言われたから連絡も出来なくて、気になってた」


携帯持ってたら、アドレス交換いい?と、聞いてくれたので、待ってました!!とばかり赤外線通信した。

とりあえず、第一ミッション成功ですよ!!由希隊長。


後は!後は!!

告白ですか!!!

なんて言えばいいかなぁ。

ゴクリ……。



「もうひとつ渡したいものがあるんだけど」


と、先輩が手渡したものは、四角いマシュマロの入った小袋。

女の子受けしそうな可愛いラッピング。

 これは、もしかして……。

 でも、チョコのお礼はもう頂きましたけど……。


「ホワイトデーのお返し、遅くなってごめんね」


ニコリと微笑む先輩の顔が少し強ばっています。


「それで、もし良かったら俺とお付き合いして貰えませんか」


……。


頭が真っ白です。


身体がフワフワして、立っているのか座っているのか分からない……。


「吉田の気持ち、誤解してたら恥ずかしいんだけど、チョコ貰って嬉しかったから……」


先輩真っ赤ですよ。

私もちゃんと自分の気持ちを伝えたい。


「誤解じゃないです。私も藤波先輩の事……大好きです」


「良かった」


「えっと、よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


頭を下げ合って、目があって照れ隠しに笑顔を見せあった……。



当麻くんは焼そばパン奢ってもらい損ねました(笑)

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