え?いきなり家族に紹介ですか!!
お話短めです。
「え?え?お爺さん……?」
藤波先輩とお爺さんを交互に見る。
私の反応を面白そうに、顔を覗き込んでくる。
……先輩!!顔近いです……!!
さっきのくの一さんと、お兄さん忍者も舞台上手の竹薮から姿を現した。
「吉田、紹介するな。忍者レストラン『飛燕』《ひえん》の会長をやってるうちの爺さんと、一番上の姉、真梨子と兄の瞬」
「改めて、はじめてまして。涼のじいちゃんの利保です。いつも涼がお世話になってます」
お爺さんがニコニコと挨拶してくれる。厳めしい顔が笑顔になる。
……余計に迫力増した?
でも、普通のお爺さんだ。良かった。
「はじめましてっ!!吉田理沙ですっ!!えっと、藤波先輩にはいつも剣道部でお世話になってます!!」
ガバリと頭を下げて挨拶した。
「元気のいい子ね〜、涼の姉の真梨子です」
真梨子さんは赤いくの一の衣装の美人さん。お兄さんは藤波先輩が大人になったらこんな感じ?カッコイイ。
二人とも舞台メイクのままだから、近くで見ると、ちょっと濃いな。
「ところで、お爺さん、身内を選んでないでお客さんを選んでよ」
私は楽しかったけど……先輩のカッコイイところも見られたし、満足。
「5枚全部命中させおって」
……手加減せい。とお爺さんは小さな声で続けた。
お兄さんもお姉さんも、苦笑している。
「え? 」
何がいけないの?
「涼ってば、理沙ちゃんにいいところ、見せたかったんでしょう? 」
普通のお客さんは、5枚全部も当てられないでしょ。と、お姉さんが、ニヤニヤとしながら言う。
「……盛り上がったんだから、いいだろ」
耳をほんのり赤く染めて、ふて腐れる先輩。ちょっと可愛いかも〜!!
「ところで、理沙ちゃんは熱心にショーを観てくれていたよね。興味あるの? 」
「初めてみたんですけど、スッゴい迫力で!! あのっ、刀は本物なんですか?」
「本物だよ〜、刃は付いてないけどね。」
そういってお兄さんは、腰からスラリと刀を抜いて見せてくれた。
うわ〜!!うわ〜!!
「何々、理沙ちゃんは刀に興味あるの?」
「あ……一応剣道部なので」
……新撰組オタクなので、と言ったら引かれそうで言えないな。
「あと、お姉さんの衣装可愛いなぁって思いました」
「ありがとう」
お姉さんはニッコリ笑ってくれた。
「……じゃあ、吉田送っていくから」
藤波先輩に手を握られる。
ドキンと私の胸が高鳴る。
あわててペコリとお辞儀をして、引かれるままにレストランを後にした。
学校最寄りの駅に近づく。
先輩はどうして私に家族を紹介してくれたんだろう。
緊張したよ。
……まだ彼女でもないのに。
……手も繋いじゃってる。
……結局その日は、駅まで藤波先輩と手が離れる事はなかったんだ。




