〆 第一章
入学式当日。
あの日から、わたしたちは各部活をまわって実績を調べたり、先生に聞きこみ調査を行ったり、映像を作成したりしてきた。
皆が頑張ったおかげで、出来が良いものが仕上がった。ランキングにも間違いはない。
新入生はぞろぞろと入場してから緊張した雰囲気を漂わせていて、二年と三年はうつらうつらとしながら入学式は進んでいった。
どうやったらこんなに同じことを話せるのだろうというくらい長かった学園長の話は、内容を覚えている人なんていないのではないか。
生徒代表の話では、生徒会長であるカエデがしっかりと新入生を迎えるためにまとまった話をしていて、一気に生徒会の印象がよくなったと思う。
彼は原稿などつくっている様子はなかった。覚えている気配もしなかった。その場で出てきた言葉だけを紡いで、あれだけの話ができるというのは、天性の才能だとわたしは感じた。
だって学園長もカンペを見ながら話していたから、これほど凄いことはない。
ガチガチに緊張している新入生代表の話の途中で、代表が思いっきり噛んで、皆の含み笑いを買っていた。
そして全てのプログラムが終了し、生徒会からのプレゼンの時がやってきた。
わたしは映像係。つくってあったテロップを、カエデの話にあわせて進めていく重要な役だ。
教頭先生が演壇から降り、代わりに会長がのぼった。
「えー。生徒会からは部活の紹介をしたいと思います」
会長の一言でスクリーンがおりてきて、映像が見やすいように講堂は暗くなった。
ひとつひとつの部活動の様子の写真も撮ってきたので、より現実性の増したないようになっている。
「まずは女子バスケットボール部―――――…」
というように次々と部活の紹介がされ、各部長の話も聞けるようにした。
黒龍学園には、部活が二十五個存在する。
女子バスケ部、男子バスケ部、女子バレー部、男子バレー部、水泳部、陸上部、野球部、サッカー部、剣道部、柔道部、弓道部、テニス部、文芸部、美術部、吹奏楽部、合唱部、情報部、家庭科部、科学部、軽音部、漫画研究部、書道部、新聞部、放送部、演劇部。
この二十五個だ。マイナーな同好会っぽいものは、一つも無い。今までの生徒会が全て要求をはねのけてきたからだ。
歴代ここの生徒会は真面目さんばっかりなんだけど、今年はまずカエデが会長というだけでその歴史が崩されそう。
ちなみに私は情報部に所属している。パソコンやネットに関しては人一倍の知識と実力を持ってる気がする。この前ヒマだったからやってみたハッキングに大成功したところだ。今度はサイバー攻撃とか練習してみたいとか思ってたりしないこともなくない。
カエデは陸上部に所属している。何故か陸上競技は全てこなしてしまうのだ。
ユウは男子バレー部に所属している。なんと、アタックさせたら球はレーザー光線のような勢いで飛んでいくそうだ。
アヤリは剣道部に所属している。なんか、見たことはないけどやばいほど強いそうだ。
ショウは部活には入っていない。でもたまに、家庭科部の女子たちから料理や裁縫の講師を依頼されるそうだ。
黒龍学園は特に水泳部が強い。もう泳がせたら最強とうたわれるメンバーたちが勢ぞろいしている最強軍団である。怖い。
「……これで生徒会からの部活動説明を終了します」
いつのまにか話は終わっていた。執行部五人はシャキッと姿勢を正し、同時に礼をした。
これで部活動紹介&説明は終了した。わたしたちの存在も新入生に覚えてもらえただろう。
新入生が続々と退場する中で、わたしは壇上からその様子を微笑みながら見つめていた。
「さあ、セレモニーも終わったし……いよいよ私たちの時代が…」
「「「キタァーッ!」」」
アヤリが音頭を取り、紙コップに注がれたオレンジジュースを天高く掲げると、わたしたちは同じようにコップを掲げた。
皆、この日のために結構大変な苦労をしてきたから、成功した分だけ興奮しているのだろう。ユウなんか、いつになくテンションが高い。
変わっていないのはショウくらいかな。
カエデはいつもと同じ笑みを浮かべ、ノーマルな感じで言った。
「これからよろしくね、生徒会執行部役員諸君」
皆は彼の目を見つめてから、お互いを見あい、そしてニヤリと笑った。
カエデは片眉をあげ、パチリとウィンクする。
「さあ、やってやろうじゃないか。大革命をさ」
「下剋上だぁー!」
「ちょっと意味違うけど…まあ頑張るぞー!」
「揺るぎない絶対王政!」
「頑張る」
この日は日が暮れるまで、飲んで食べて、初仕事の成功を盛大に祝った。