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契約と小説  作者: カイン
3/3

初登場


「僕に恨みでもあるのか!」


「いいや、恨みなんか何もないさ。ただ、顔を見てる」


「家に帰ったって警察にも誰にも話すつもりはない!君の顔も忘れる!本当だ、信じてくれ!神に誓うよ!」


「俺は神なんか信じてないんでね」


「頼むよ……おい、それは何だ?」


「ガソリンだよ。アンタにもたっぷりと被ってもらう」


「やめてく……うわっ…」


「後は火を付けて、俺は逃げる。アンタは火ダルマになって死ぬ。俺は無事に逃走、金を手にする」


「そんな!どうして殺されなきゃならない!?」


「だから、俺の顔を見たからだよ」


「そんな…」


『ジョン、生きたいか?』


「…何だ?」


「何?」


『死にたいか?それとも生きたいか?』


「一体誰なんだ!?」


「…頭がおかしくなったか。金ありがとよ」


『さぁどっちだ!答えろ!』


「生きたいに決まってるだろ!」


「そいつは残念だったな、あばよ」


「あがぁぁあアぁァあァアァッ!!」


「何だコイツ!全身から血が噴き出しやがった!」


「あぁアあぁァァァアあぁァァァァァぁッ!!」


「燃やすまでもねぇ!うわぁっ!」


「Yeahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!」


「ち、近づくな!テメェはガソリン被ってんだぞ!?俺のライターで火を付けた瞬間にテメェはすぐに燃え上がるぞ!」


「ピーピーうるせぇんだよアホが!パッと見たところ…お前は悪人のようだな…」


「何だよお前ッ!さっきまでと人が違うみてぇに…」


「人が違う?うぅん…惜しい!惜しいけど違うんだよな」


「なッ!?いつの間に背後に!?」


「まぁ人の身体ん中入ってるからほとんど人みたいなモンだけどな。あれ?人間の身体って水分がほとんどなんだっけ?」


「し、知るか!さっさと失せろ!」


「思い出した!確か六十パーセントぐらい水分だ!つまり」


「ヒィッ!?また後ろに!?」


「この身体の半分は俺で出来てるってことだ。俺は悪魔だから、人間の食い物じゃあ栄養が摂れないんだよな。分かる?」


「さっきから何が言いてぇんだ!頭がおかしいのか!?」


「つまり、俺の主食は」


「がッ…」


「悪人の魂だから、お前の魂を食うって説明してやるつもりだったんだけど。悪ィ、待ち切れなくてもう食っちまった。ご馳走様」


「あ、血液と水分だとニュアンス違うか。聞こえてねぇだろうけど、一応訂正。な」










「って感じになったんだが、どうだ?」


「どうって、これはボツだ」


「なんだって?次は何が気に入らないんだ」


「あのさ、俺が前に言ったコト覚えてる?」


「あぁ。『悪魔を書くなら格好良く』って言ってたな」


「その通り。これのドコがカッコいいの?」


「わからないのか!?」


「俺には全然わからないね。大体最初の登場だってのに、最初なんだぜ?インパクトのある掴みが大事なんだ」


「視認出来ないスピードで動きまわって、背後から心臓を右腕で貫き刺す!格好良いだろう!」


「だから心臓じゃないんだって言ってるだろ。心臓から右上四十八度、三センチ七ミリ上だ」


「ほとんど同じじゃないか。それより何が不満なんだ。格好良いだろう?」


「圧倒的に強い相手が…そうだな、猫がネズミを捕まえるのを見てカッコいいってアンタは思うのか?」


「思わないが」


「つまりそういうことだよ」


「なんだって?」


「つまり、悪魔と人間では、猫とネズミの関係同然なんだよ」


「君は少し人間をバカにし過ぎだ。『窮鼠猫を噛む』って知らないのか?」


「それより、こんな戦闘中にペラペラ喋るのはダサいって」


「事実として、君がやったことじゃないか」


「なぁ、それよりジョン。俺は腹が減ったんだけど」


「話を逸らすのか。いいよ、じゃあ悪人探しに行こう。歩きながらこの小説についての議論を続けようか」


「やっぱり決め台詞とか、登場する時の演出とかさ。あと、武器と乗り物が欲しいな」


「メアリー、ちょっと散歩に行ってくる。あぁ、大丈夫だ。一時間もしないで帰ってくるよ」


「それからヒロインだな。飛びっきり美人の…」


「バカを言うな。メアリーがいるじゃないか。美人だろ?」


「三十代のヒロインじゃあ、いくら何でも厳しいぜ」


「他には何だって?乗り物とか武器だったか?」


「そう。シルバーのドクロとかさ、そういうイカしたデザインのついたバイク!カッコいいだろ?」


「君は子供か?コミックじゃあるまいし、僕は好きじゃない」


「なんだって?これだからオッサンは…」


「それから、バイクに乗るならしっかり法廷速度を守ってもらうぞ。スピード違反で捕まりたくない」


「あぁ、アンタなんかと契約したのが失敗だった」


「僕だってあの時君を乗せたのが失敗だったよ。そうだ、決め台詞でも作らないか?」


「それは賛成だよ。何がいいかな…」


助けてーっ!


「悲鳴だな。近いぞ」


「悪党が多くて助かるよ。餓死する心配ないからね」


「そういえば君は魂を食うんだったか?」


「そうだけど?」


「こんなのはどうだ?」



「ディナーの時間だ!」









「カッコ悪いだろ、それ」


「そうか?僕はイカしてると思うが…」


End


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