誘拐
「ん……メアリーか?」
「ジョン!よかった!目を覚ましたのね!今担当医の先生を呼んでくるから!」
「ちょっと待ってくれ。ここは病院か?となると、僕は助かったのか?」
「えぇ、全身血まみれで歩いて帰ってきたのを見た時は、本当に驚いたわ!ここに運ばれた時も、生きているのが奇跡だって!」
「僕が歩いて帰ってきたって?そんなバカな!僕は知らない男を乗せて崖の下に落ちたんだぞ?…そうだ、あの男は無事なのか?」
「ジョン…きっとショックでどうかしてるのね…大丈夫よ、もう助かったの」
「メアリー、僕は確かに…」
「待ってて、すぐ戻るわ」
「…どうなってるんだ?」
〜一ヶ月後〜
「なぁ、メアリー。無事に退院出来たのはいいが、一体何が起きたのかわからないんだ」
「あなたが無事に生きているならそれでいいのよ。家に帰りましょう、ジェーンが待ってるわ」
「パパ!おかえりなさい!」
「ジェーン!ただいま、会いたかったよ!」
「怪我大丈夫?」
「あぁ!すっかり良くなったよ」
二日後
「えぇ、そうです。そこの崖から落ちました」
「ぶつかってきたトラックのナンバーは覚えていませんか?」
「急でしたから…」
「回収した車は損傷が酷かったので廃棄しましたが、よろしかったですか?」
「えぇ。…それより、車の中に青年がいませんでしたか?十八かそこらで瞳はブルー、栗色の短髪の」
「いえ、車には遺体も生存者もいませんでしたよ。周囲に人影もありませんでしたし…」
「そんなはずは!僕は確かに青年を乗せたまま落ちたんです!二人とも足を挟まれて動けなかった!ガソリンが漏れ出して引火しそうだったのに青年は…」
「オズワルドさん、誰もいなかったんですよ」
「だが僕は確かに…」
「では…もし見つけたら連絡しますよ」
「……」
数週間後
「ねぇ、ジョン。ジェーンを見てない?」
「まだ帰ってないのか?…はい、もしもし」
「ジョン・オズワルドだな?」
「そうですが、どちらさまですか?」
「お前の娘は預かった」
「なんだって!?」
「娘を助けたければ金を持って来い。おっと、他人に言えば娘は殺す」
「やめろ!ジェーンに手を出すな!」
「生きている娘に会いたいなら、これから指示する場所に一人で来い。勿論、金は持って来いよ。いいか…」
一時間後
「約束通り一人だ、金も用意してある。娘を返してくれ!」
「よし、金をこっちに寄越すんだ」
「投げればいいか?」
「あぁ、さっさとしろ」
「さぁ、娘を返せ!」
「ほらよ、行きな」
「パパ!」
「ジェーン!」
「しかし、お前には顔を見られたな。指名手配になるのは御免だ。おい」
「要求通りにしたじゃないか!」
「言うことを聞け、娘を撃つぞ」
「…わかった。僕はどうすればいい?」
「そこの壁に両手をつけ」
「パパ!」
「ジェーン!お前は逃げッ…」
「ほら、パパを殺されたくなかったら大人しく逃げな。よし、いい子だ」
「コイツは取り敢えずトランクに積んで…適当に始末するか」