第0頁 出会い(中編) 続き①
朝礼を見事にサボることになった俺だったが、その後の授業はきちんと受けた。
「(ああ……、本当に運がないと言いますか)」
俺はかなり愚痴を言いつつも、授業を受けた。
キーンコーン、カーンコーン……―
「(ふう、やっと終わった)」
チャイムが鳴った。
午前中の授業(四限まで)と始業式も終わって、ようやく昼休みの時間になる。
俺は登校途中に寄ったコンビニで、朝食のパンを買ったついでに昼食のおにぎりも買っておいたのでそれを食べることにした。
いつもだったらこの時間に俺の―
「ナギくーん!」
「やれやれ、やっぱ新学期からも変わらないんだなあ、あいつは」
明るくて元気な女性の声が聞こえた。そして俺は聞き慣れたその声を、この声が紛れもなくあいつの声だとすぐにわかった。
その女性は俺の教室に入るや否や、俺の席まで歩いてくる。
「おいおい、綾女。もう俺も高2だぞ。世話なんてしないでいいってあれほど言ったのに……。俺なんかほっとけばいいのに」
「だ、だって……ナギくんと私は、い、いやそうじゃなくて!
ナ、ナギくんのことを気にして……、あ、あれ?何言ってるんだろ、私⁉」
「はあ……」
と俺はやれやれといった様子を前面に出しながら、何故か顔全体、耳まで真っ赤になった綾女の方を見た。
―御堂綾女、この学校にいる俺の唯一の幼馴染みである。
俺が小さい頃はよく一緒に遊んでいたが、小学校、中学校、高校と時間が経つにつれて年頃になった俺はしだいに綾女とは距離を空けるようになった。
しかし、距離を空けようとしていた俺に対し、綾女は独り暮らしの俺を気にかけてか(そんな必要も無いのだが)、なぜか俺の世話なんかをしたりするようになった。
「ナギくん!今日は私、お弁当を作ってきたんだけど、えーっと……、ちょっと作りすぎちゃったからよかったらナギくん、一緒に私のお弁当を食べない?」
綾女が少し俯きながら俺に聞いてきた。
作りすぎちゃった……か。それにしては馬鹿みたいにデカい量だな。まるで家族連れで運動会の昼飯を食べるときくらいの量だな。そんなに食えるか!とは思ったが、口には出さなかった。
そうか、基本的に他の人との関わりを避けている俺のことを、綾女は幼馴染みとして気にかけているのだろう。綾女はそんな言い訳を考えてまで、俺なんかと一緒にいたところで別に楽しくもないだろうに。
ただ、コンビニのおにぎりが昼食の予定だった俺の状況から考えるとこれは助かった。だから俺は、
「お……、おお」
と言った。そしてそれを聞いた綾女は凄く嬉しそうだった。何がそんなに嬉しかったのだろうか俺には理解できなかった。
こうして俺は綾女と昼食を取ることになった。
まあ実際、俺と綾女の親同士の仲がいいこともあって、俺の家族と綾女の家族がそろって食事をしたことも度々あった。中学生の頃までの話だが―
「ナギくん。はい、お箸どうぞ」
なんか綾女のやつ、もの凄く用意がいいのだけれど……
「ああ」
と俺は軽く返事をして、綾女から箸を受けとった。
すると綾女が俺にこう言った。
「私、今日はナギくんの大好きだった料理を作ってきたの」
と言ったので、俺自身はその食べ物が何であるのか気づかないふりをして綾女に言った。
「綾女、俺って、これが好き、みたいな食べ物とかあったか?俺、基本的に何でも食べるんだが……」
俺がそう言うと、綾女は少し困った顔になった。そして、綾女は不安な感じがこちらでも見てとれるくらいの様子で俺にこう言った。
「ナギくん……、オムカレーとか嫌い?もしかして、全然食べないとか?」
オムカレーか……、まあ嫌いとかいう以前に俺の大好物だな。と素直に思ったのだけれども、そんなことよりも驚きなのが、よく高校にオムカレーなんか持ってこれるなあってことだった。綾女が俺の好物を知ってるのは、おそらく家同士の仲が良かったことで食事を一緒にしていたから、自然と分かったのだろう。俺は、自分から人と話さないようにして、これまでの人生を送ってきた為、綾女に俺の好物などを話したことも一度もなかった。
「オムカレーか、まあ嫌いじゃないな」
「そ、そうだよね!じゃ…じゃあ」
「そうだな、お腹も空いてきているし、綾女のそれを頂こうかな」
「ほ、ホントに?」
と言った。俺はそっけなく返事を返したつもりだったのだが、なぜか綾女は凄く嬉しそうに思えた。まぁ……気のせいだろう。
そういうわけで今日の俺は綾女と一緒に昼ご飯を食べることになった。そして、残りの昼休みの時間も特に何もすることはなかったので、綾女と何気ない会話をすることにした。
例のスケジュール帳の話題は、俺の口から話されることはなかったが。
そうこうしているうちに、午後からの授業が始まる予鈴がなった。ということでお互いに、次の授業の用意をすることにした。
「そっ、それじゃあ、ナギくん。またお昼一緒に食べてくれると嬉しいです。で、では……また」
「あ、ああ……」
結局、昼休みにはスケジュール帳に書かれていたことは起こらなかった。だから俺は、やれやれといった感じでつぶやいた。
「まあ、あのスケジュール帳の書いてあることなんか、どうせ誰かの悪戯か何かだろう」
そう自分に言い聞かせて綾女と別れ次の授業に受けることにした。