第0頁 出会い(前編) 続き④
新学期のスタート、登校日初日、言うなれば始業日などという日だ。
この日は、生徒の多くが長期休業中の課題を持っていかない日でもある。
無論、俺は課題に関しては最低限やっておく習慣があるので忘れたりなどはしない。
俺にとっちゃ課題を提出するだけで、先生方に頭下げたり、怒られたりすることを避けられるからな。人との関わりを避ける俺には好都合なのだ。
まあ、マサあたりは概ね
「夙、聞いてくれ!俺には後、一週間は休みがあるんだぜ!」
とか言ってきそうだ。ヨシ、決めた。
「俺、あいつには課題絶対見せねえ!」
この日、朝早くに俺は起きた。朝食は作ろうとはしたが、やっぱ面倒だったので行きがけのコンビニで何かパンでも買って、食べながら登校することにした。そして、着替えて玄関まで来た。
今は玄関の前、まだ靴は履いていないが持ち物はもう準備している。
だが、ここにきて俺の癖が出る。
俺にはもの凄く心配性で、絶対に忘れ物がないかどうかを確認する癖がある。
忘れ物なんてしたら、絶対に誰かと関わる原因になってしまうしな。
早速、俺は確認の作業に入った。
通知表、春休み中の課題、筆記用具と順番にバッグに入っているかどうかを確認していき、そして、最後に俺の新しいスケジュール帳を手に取った。そして俺は昨日何も書いてないのを知っているはずなのに、その時はなぜかスケジュール帳を開いてみたかった。
俺は開いてみた。すると―
《俺はこのスケジュール帳を朝開く。そして無事に契約を完了する》
……
どれだけ沈黙していただろうか。いや、実際にはものの数秒だったのかもしれない。
「えっ……?」
一瞬だけど俺を中心にして時間が止まった気がした。実際、そんなことはありえないが。
俺は開いた口が塞がらなかった。そこには絶対にあるはずのない文章が書かれていた。契約……、何のことだ?正直、意味が全く飲み込めないのですが。
これだけならまだ良かったのだが、その文章には続きがあった―
《俺は今日、見ず知らずの女子生徒を抱いて登校する》
「はあ⁉……ハハハッ」
やべえ、可笑しすぎて笑いが出てしまった。とりあえず、
「もう意味がわからねえ!」
誰かのイタズラであってくれ……。なんで俺がそんなことをするのか、いろいろと理解が出来なかった。誰だよ、こんな手の込んだイタズラをしやがったの……。マサか!いや、それはさすがにアイツが可哀そうか。犯人が見つかったら、そいつぶっ飛ばしてやる!
「なんの冗談だよ……」
そう思いつつ、そのスケジュール帳にはもう一文、最後の文章があることに俺は気づいた。
《俺は今日から姉さんとしばらくの間同居する》
「ハイ⁉」
いやいやー!
うん、ありえない。これが現実になることはないな。なぜなら俺には面倒な妹が2人ほどいるのだが、姉という存在はいない。だから俺は知り合いなのかもしれないが、俺の家族構成なんざ知らないような奴だろうと判断した。
なるほど単なる冷やかしでしたか。
「何だ、やっぱりマサの仕業じゃないか!」
マサ、すまない。まだ、犯人とは決まっていないお前を、犯人にしてしまって。だってしょうがないだろ。俺、このようなことする奴、お前しか心当たりがなかったから。
そして、俺は犯人とされたマサに軽く手を合わせた。
最初の内は、スケジュール帳に書かれていることを不思議に思って、驚いたけどさすがにありえない事を書かれてもなあ……、現実味に欠けるというか。
「嘘なら嘘で、もうちょっとマシな嘘をついて欲しいものだな」
あまりリアクションをするような時間は無いっていうのに、つい時間をついやしてしまった。それで、俺はスケジュール帳を閉じて、急いで靴を履き、玄関を出た。
この時の俺はまだこのスケジュール帳を甘く見ていた。まさかあんなことになるなんて思ってもいなかったのだから―