第四章:新しい道
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雨は激しさを増していた――
まるで無数のガラスの破片が地面を打ちつけるように。
その嵐の中で、アギャタは立ち尽くしていた。
びしょ濡れのまま、打ちひしがれた表情で。
彼の中に残っていた最後の希望の欠片さえも――
今、静かに砕け散った。
涙がこぼれた。
止まらなかった。
どんなに堪えても。
「……なぜだよ……どうして、全部……消えていくんだ……」
震える視線が、手の中の本へと落ちた。
その瞬間、嗚咽が少しだけ静まった。
ページは濡れていた。
いや、雨ではない――彼自身の涙だった。
そして、その涙が落ちた場所に……
黒い染みのようなものが、ゆっくりと浮かび上がっていた。
「……え?」
涙で霞む視界の中、アギャタは目を凝らした。
何かが形を成していく――文字のように。
慌ててページをめくる。
そして――息を呑んだ。
今度こそ、涙が止まらなかった。
けれど、それは悲しみの涙ではない。
喜びの涙だった。
なぜなら、そのページは――もう空白ではなかったから。
ページの最上部に、古代文字のような文字でこう記されていた。
> 「アグマナの探索。」
アギャタの呼吸が止まった。
心臓が大きく跳ねた。
「……アグマナ……!」
その声は、震え、信じられないほどの安堵と驚きが混じっていた。
手が震え、本を持つことさえままならない。
彼は読み進めた。
一文字一文字が、希望と恐怖を同時に突き刺してくる。
> 「あなたが選んだ道は、誰もが歩めるものではない。
あなたが探し求める者は――この世界の果て、いや、それを超えた場所にいる。」
「……この世界を……超えた場所……?」
困惑と恐れが混ざった声が漏れる。
> 「彼は、普通の人間が決して到達できない場所にいる。
その願いを果たすためには、数え切れぬ試練に耐え、
人の限界を超える力を集めなければならない。」
アギャタの呼吸が震えた。
彼は震える手で次のページをめくる。
新たな見出しが目に飛び込んできた。
> 「普遍の理。」
> 「まず、いくつかの基本原理を理解しなければならない。」
アギャタは真剣な表情で読み進めた。
> 「“ウルジャ”――存在するすべては、それでできている。
それはすべてのものに流れ、見えぬまま、絶対の力を持つ。」
> 「忘れるな。真の力は肉体に宿るものではない。
力は“ウルジャ”そのものにある。
より多くのウルジャを持つ者ほど、
肉体的・精神的・霊的な力、そして“シッディ”を得るだろう。」
「ウルジャ……」
その言葉を、まるで初めて知った真理のように呟く。
次の行に視線を移す。
> 「“シッディ”――ウルジャの顕現。
人を常識の枠を超えさせる力。
シッディこそ、凡人と非凡を分かつもの。」
「シッディ……」
その言葉を、静かに、しかし深く繰り返した。
「……どんな力なんだ……?」
その答えを求め、次のページへ指を伸ばす――
その瞬間。
――雨音を裂くように、鋭い音が響いた。
ビシッ!
窓ガラスが砕け散り、一本の矢が部屋に突き刺さった。
暴風が吹き込み、ページが舞い上がる。
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