小さな騎士の冒険
ある日、村に迷い込んできた子犬を見つけた。とても小さくて、震えながら道端に座り込んでいる。
「可哀想に、お母さんとはぐれちゃったのね」
私は子犬をそっと抱き上げた。ぶるぶると震えているのが手に伝わってくる。
「大丈夫よ、怖くないよ」
優しく声をかけると、子犬は小さな鳴き声を上げた。きっとお腹も空いているんだろう。
「おばあちゃんにお願いして、何か食べ物をもらいましょう」
家に帰ると、おばあちゃんは最初困った顔をした。
「エリナちゃん、野良犬は病気を持っているかもしれないのよ」
「でも、このままじゃ死んじゃうかもしれない」
私は一生懸命にお願いした。
「お母さんとはぐれて、一人ぼっちなの。私も昔、一人ぼっちだったから、この子の気持ちがわかるの」
おばあちゃんの表情が和らいだ。
「そうね…確かにそうかもしれないわね」
結局、おばあちゃんは温かいミルクと小さなパンくずを用意してくれた。子犬は夢中になって食べた。
「この子、すごくお腹空いてたのね」
「可哀想に。でもエリナちゃん、飼うことはできないのよ。飼い主を探さなくちゃ」
「わかってる。でも、それまではお世話させて」
三日間、私は子犬の世話をした。朝早く起きて散歩に連れて行き、ご飯をあげて、一緒に昼寝もした。
「エリナちゃん、本当にお母さんみたいね」
近所のおばさんが微笑みながら言った。
「この子が幸せそうで、見ていて心が温かくなるわ」
でも四日目の朝、子犬の本当の飼い主が見つかった。隣町から探しに来たおじいさんだった。
「ポチ!ここにいたのか!」
おじいさんが子犬を抱き上げると、子犬は嬉しそうに尻尾を振った。やっぱり、本当のお家の人だった。
「ありがとう、お嬢ちゃん。この子の世話をしてくれて」
おじいさんが頭を下げてお礼を言ってくれた。
「いえいえ、当然のことです」
私は笑顔で答えたけれど、心の中はちょっと寂しかった。もうポチと一緒にいられないんだなって。
でも、ポチが本当の家族の元に帰れて良かった。私だって、おばあちゃんという家族がいるから幸せなんだもの。




