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母の子守唄、星になったお母さんへ  作者: エリナ
第1章
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陽だまりの記憶

春風が頬を撫でていく。私はおばあちゃんの膝の上で、目の前にある石を見つめている。石には何か字が刻んであるけれど、私にはまだ読めない。


「エリナ、これがお前のお母さんよ」


おばあちゃんの声は、いつもより小さくて震えている。私は首をかしげて振り返った。


「お母さんって、どこにいるの?」


おばあちゃんの目から、きらきらした水が一粒こぼれた。大人が泣くのを見るのは怖い。私は慌ててしがみついた。


「お母さんは、もうここにはいないの。でもね、エリナの心の中にいるのよ」


心の中?私は自分の胸に手を当ててみた。どくどくと何かが動いている音がするけれど、お母さんはいるのだろうか。


「お母さんはどんな人だったの?」


「とても優しくて、美しい人だった。エリナにそっくりよ」


おばあちゃんは私の頭を撫でてくれる。その手はしわしわで、少しがさがさしているけれど、とても温かい。


時々、夜中に目が覚めることがある。暗闇の中で、誰かの手が私の頬に触れるような気がするのだ。その手はおばあちゃんの手よりももっと柔らかくて、もっと温かい。きっとそれがお母さんなんだと思う。


「山賊って何?」


ある日、私は村の子供たちがひそひそと話しているのを聞いた。


「エリナのお母さんは山賊に殺されたんだって」 「山賊って怖いのかな」 「きっととても悪い人なのよ」


おばあちゃんに聞いても、「まだエリナには難しいお話」と言われるばかり。でも私にはなんとなくわかる。お母さんを私から奪った何かがあるということが。


陽だまりは今日もあたたかい。私はおばあちゃんの膝の上で目を閉じる。心の中にいるお母さんに会えるような気がするから。


温かな手のひらが、私の頬を包んでくれる。


「エリナ、愛しているよ」


風の音に混じって、そんな声が聞こえる気がした。

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