第20話:手放したくなかったもの «タカト視点»
距離を置こう、とユカに言われたあの日から、ずっとモヤモヤしていた。
何が悪かったんだろう、と考える。
思い当たる節は、いくつもある。
仕事を優先したこと。
未来の話を独りで決めてしまったこと。
ユカの不安や迷いに、きちんと向き合わなかったこと。
だけど一番はきっと――
「当たり前に、そばにいてくれる」と思ってしまっていたこと。
オフィスの帰り道、スマホを開くと、ユカからの通知はなかった。
その代わり、SNSの写真には、笑っているユカの姿があった。
彼女の隣には、あの後輩の男――ヒロトがいた。
笑顔は作り物じゃない。あれは、心からのものだった。
思わずスマホを握る手に力が入る。
(俺は、何をしてるんだ)
久しぶりにユカを呼び出して、気持ちを伝えた夜。
彼女の目は、確かに揺れていた。
でも、戻ってきたようでいて、どこか遠くを見ていた。
ユカが向いている先が、自分じゃないとしたら。
そんなのは、耐えられなかった。
「ユカ」
ある夜、電話をかけた。
繋がった声はやわらかかったけど、決して“戻ってきた声”ではなかった。
「もし君が、もう誰かを見ているなら――俺、ちゃんと引き下がるよ」
沈黙。
そして、小さな声で返された。
「……まだ、答えは出てない」
それだけで十分だった。
タカトは初めて、ユカを“本当に大切にしたい”と思った。
そして同時に、それが“自分のものではないかもしれない”現実にも気づいていた。
▶︎ to be continued...




