第15話:ゆれる距離感 «ユカ先輩視点»
月曜日の昼休み。ユカはスタッフルームでひとりお弁当を広げていた。
ドアが開いて、ヒロトがそっと顔をのぞかせる。
「…あ、ごめんなさい、先に使ってました?」
「ううん、大丈夫。一緒に食べよっか」
そう答えた自分に、自分で少し驚いた。
誰かと一緒にいる気分じゃなかったのに、彼の顔を見た瞬間、自然とそう言っていた。
ヒロトは、相変わらず不器用に箸を動かしながら、でも一生懸命に話題を探しているのが伝わってくる。
「この前、接客褒められてましたね。常連のお客さん、ヒロトくん指名してた」
「えっ、本当ですか?……うれしいです」
ちょっと照れた笑顔。その素直さがまぶしい。
(なんでこんなに気になるんだろう)
タカトの横では感じなかった、“素でいられる空気”。
言葉を選ばずにいられる。
気を張らなくても、心が休まる。
気づけば、ユカはぽつりとつぶやいていた。
「ねえ、ヒロトくんはさ、恋愛って、タイミングって信じる?」
ヒロトはびっくりした顔をして、箸を止めた。
「……信じたいです。うまくいくときって、きっと、そういう“何か”が重なる気がして」
その言葉に、ユカの胸が少しだけ、痛くなった。
(タイミング……私、逃してるのかな)
ふたりの間に、少しの沈黙。
でも、その沈黙が今日は、あたたかく感じられた。
▶︎ to be continued...




