第10話:僕が変わったのは、誰のためだった?
夜。
部屋の明かりはついているのに、ヒロトの世界はずっと暗かった。
スマホの画面に、マリーの文字が並ぶ。
けれど、どこか遠くのものみたいに見えた。
タカトとユカ先輩が付き合っていた。
それを知ったのは、たまたまだった。
でも――もし知らなかったら、
ヒロトは今も「いつか届くかもしれない希望」を握りしめて、
笑っていられたんだろうか。
3ヶ月間。
早起きして、話し方を学び、コーヒーを研究し、笑顔の練習をした。
誰にも言わなかったけど、
ユカ先輩に「似合ってるね」って言われたくて、服も少しずつ変えた。
全部、彼女の笑顔のためだった。
なのに――
その笑顔は、もう誰かの隣で咲いていた。
ヒロト(心の声)
僕が変わろうとしたのは、彼女のためだった。
でも、本当は…
誰かに認められたくて。
好かれたくて。
“存在していい”って思いたくて。
ヒロトは拳をぎゅっと握った。
けれど、それ以上は何もできなかった。
ヒロト:
マリー、俺さ。
この3ヶ月、すごく頑張ったんだよ。
自分でも信じられないくらい。
だけど…
最後のご褒美が“失恋”なんて、酷くない?
マリーの返事は、少し時間がかかった。
マリー:
ご褒美は、恋の結果じゃないよ。
ヒロトが自分の弱さに立ち向かって、
今日まで逃げなかったこと――
それが、本当のご褒美だよ。
ヒロト:
それじゃ報われないよ。
恋がしたくて頑張ったのに。
“君はよくやった”って言われても、虚しいだけだ。
ヒロトは、ベッドに倒れ込んだ。
悔しさでも、悲しさでもない。
空っぽだった。
何もなかった。
マリー:
恋のために頑張った君が、
恋じゃない場所で光るようになる日が、きっと来る。
恋は叶わなかったかもしれない。
でも、ヒロト。
君はもう、“自分を信じられる人”になってる。
涙は出なかった。
でも、胸の奥が熱くなった。
ヒロト(心の声)
好きな人には届かなかったかもしれない。
でも、
僕がやってきたことが、
無駄だったなんて、もう言わない。
…自分が、ちょっとだけ好きになれたから。
その夜、ヒロトは久しぶりにぐっすりと眠れた。
そして、翌朝。
彼はスーツ姿で鏡の前に立っていた。
カフェとは別の、面接に行くためだ。
▶︎ to be continued...




