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ソールの言葉で午前の訓練と講習は終了となり、制服が配られたあとは一旦解散となった。
あとは午後の任務に間に合うように各部隊の集合場所まで行けばいい。
ティアが同行するソールの部隊の集合場所は、バステクトの入り口のすぐ外となっている。間借りしている寮からも近いので、少しの時間ゆっくりできるだろう、と、ティアは制服への着替えも兼ねて部屋へ戻ることにした。
ちなみに、このまま無事保安調査隊の所属となればそのまま今の部屋に住み続けることができるそうだ。ティアにとっても引越しなんて手間なことはしたくないので、ぜひこのまま所属したいところである。
部屋へ戻る道すがらの大通り沿いにはいつも通り多くの露店が並び、いろいろな食べ物が売られている。昼時のため昼食向きのものも多い。多少興味は持ったものの、今朝のことが思い出され、何となく食指が動かずに今日の昼食は食べなくてもいいや、とそのまま素通りしていった。
部屋に戻ると手に抱えていた制服をテーブルの上に置き、水道水を飲んで一息ついた。頭をスッキリさせたかったので魔法で水の温度を取ると、あっという間にコップの表面には水滴が付き始めた。キンキンに冷えた水を飲むと、生き返ったようにリフレッシュする。そう、魔法で温度を変えたって、他の方法と変わらないはずよね、と確かめるように、また一口飲み下す。
魔石というのは驚いたわ。昔は魔法が競い合い互いを貶め合うことはあっても、あんな風に協力して魔力を一つにまとめることなんて無かったと思う。魔力が弱くなったからこその人間の進歩のひとつなのかもしれないわね。……それにしても。あんなに強い武器なんていつ使うのかしら。良くない輩に対してある程度の武器を使うことはあるでしょうけれど、それにしてはあまりにも強力すぎるんじゃないかしら。まあ、作れるのであれば作ってみたい、という側面も人間にはあるし、そういったことなのかもしれないけれど。
そんなことを考えているうちにあっという間に時間は過ぎ、集合時間が近付いていることに気が付いた。ぐい、と水を飲み干すと、支給された制服に着替えて部屋を後にした。
集合場所にはすでに数人の隊員が待っていた。その中にソールの姿を見つけ、ソールもまたティアを見つけると、片手を軽く上げて挨拶してくれたので、それに応えるように最後の数歩は早足にして合流した。
「よ、午前の訓練はなかなかサマになってたな。魔弾があんなにウマいとは思わなかったぜ。期待の新人ってんで部隊の中でちょっとした話題になってたくらいだ。」
「一発目を撃った感覚からすぐに調整できて良かったわ。」
撃つ方向を、ではなくて、撃ち方を、だけど。そんなことよりも、ティアの意識は集合場所にあるモノに集中していた。
「ねえ、ソール、これって」
「ああ、今日の任務では車を使うんだ。列車よろしく乗るのは初めてか?」
「ええ、車についても知ってはいたけれど、乗るのは初めてよ。」
ティアの興奮を隠しきれない口調と視線に、ソールは軽く笑う。
車は横に長い直方体のような形で、全体に深い緑色に塗られている。荷台部分まですっぽりと囲われていて、荷台にある窓もティアの目線よりも高い位置にあるので中を伺うことはできない。背面は大きな観音開きのドアのようになっている。
「興味津々だな。ま、バステクトでも車はそんなに多くないからな。コレ目当てで入隊するヤツもいるくらいだ。」
「それはどうして?」
「ちょっと庶民には手が出ないくらいに高いってのがひとつだな。もうひとつは、とても一人の魔力では賄いきれないくらいに魔力をバカ食いするんだ。」
そう言ってソールはティアを手招きして、車の方へと歩いていった。バコ、と音を立てながら車の前方の蓋(のちにボンネットというのだと教えてもらった)を開けると、そこには非常に複雑な機械や配管がびっしりと配置されていて、その中央に両手でやっと持ち上げられるくらいの巨大な魔石が埋め込まれていた。
「ずいぶん大きな魔石ね。」
「だろ。これが調査部隊の隊員に魔力が求められる理由の一つだ。目的地から折り返すときに魔力を充填するから、さっそく今日の講習が役立つぞ。……と、そろそろ全員揃ったな。」
今日の調査に集まった隊員はティアを含めて8人だった。聞けばだいたいいつもこのくらいの人数で行うらしく、大規模な調査は滅多にないらしい。運転者と、地図と方位磁針を持った隊員が前方のスペースに、残りの6人は荷台に乗り込んだ。荷台には特に座席らしいものなどはなく、各々適当に好きなところに座るようだ。ティアは窓から外の様子が見える場所に座ると、壁にもたれかかって出発を待った。ソールは全員が乗り込んだのを確認したのちに荷台に乗り込み、扉を閉めるとティアの隣にどかっと陣取った。
やがて馬のいななきにも似た音と振動がすると、車がゆっくりと動き始めた。
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