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「ただいま~。」
「お、おかえり。どうだった?」
町案内 兼 買い物中の雑談でアニスが教えてくれたことだが、もともとこの食堂の住居部分にはアニスとリズの二人で暮らしていたらしい。リズがソールと結婚することになったので、アニスが他に部屋を借りて出ていくことになり、入れ替わりでソールが入居することになったのだとか。二人で暮らしていたときの名残なのか、アニスは食堂に入るとき帰宅の挨拶をするし、リズはそれに対して違和感なく応える。普段は多くの客でごった返している客席だったが定休日の今日はガランとしており、そこでリズは一人お茶を飲んで座って待っていた。
「大通り近くのお店中心に回ってきた感じよ。あと、こっちは私たちが必要なものね。」
「ありがとね。ティア、歓迎会の料理、楽しみにしときな。アタシとアニスでたっぷり作るからさ。」
パントリーに向かうアニスの背に向かって礼を言ったリズは、そのまま顔をこちらに向けると、ニカッと笑って期待を煽った。町案内中にアニスもいくらか買い物をしていたのは見ていたが、個人的なものではなく、歓迎会に使う材料だったようだ。
「……! 歓迎会の買い出しをしてくれていたのね。ごめんなさい、私、気付かなくて気が利かなかったわ。」
「いーのいーの、主役はどーんと接待されときな! 歩き回ってお腹すいただろ? ウチの人が帰ってくるまでまだ時間があるはずだ、お昼食べていきなよ。」
そう言ってリズはティアの返事も待たずに厨房へと歩いていった。
所在なく立ち尽くすティアのもとに帰ってきたリズは、両手に大きな皿を一つずつ持ってきた。おそらく用意してくれていた昼食だろう。
「あ……手伝うわ。何をすればいいかしら。」
「そうかい? じゃあ、あそこのカウンターのところに置いてあるポットと、コップを持ってきておくれ。」
良かった、これくらいならばティアにもできる。言われた通りにテーブルまで持っていったところで、そういえば昨日、アニスはコップに水を入れた状態で持ってきてくれたな、と思い出した。恐る恐るコップに水を注ぎ、リズが持ってきてくれたもう一つの皿を加えた三つの皿とカトラリーに合わせて配置する。リズの顔を見やると「これでよし」と頷いたので、これでお手伝いは完了のようだ。ちょうどパントリーからアニスがパタパタと戻ってきたので、そのまま3人での昼食となった。
「そう、二人は幼馴染なのね。」
昼食を食べながらの雑談に花が咲く。昼食は色んな料理が少量ずつ一皿に盛られていて、いろんな味が味わえて楽しい。昨日の残りものだよ、なんてリズは謙遜していたが、やはりどれもティアが知らない料理でとてもおいしい。一口食べるごとに目をキラキラさせる子どものような表情をするティアに、リズはやがて母親のような眼差しを向けるようになっていた。
「そうそう、こーんなちっちゃいころからの付き合いでね、いわゆる腐れ縁ってヤツさ。」
「懐かしいね、二人で魔法ごっことかして遊んだっけ。」
「魔法ごっこ?」
「ただのままごとだよ。ちゅどーん、とか、ばーん、とか、良く分からない効果音を口で言いながら魔法を使うフリをお互い見せあうだけさ。」
「それでなんとなく魔法が使える気になってね、子どもだから。でも結局二人とも魔法は使えないから、学校に通い始めたころは 『なんで魔法学校に通えないの!?』 って大騒ぎして親を困らせたりして。」
「魔法学校?」
「あ、そっか、ティアんとこにはそういうのは無かったんだね。この町では学校が2種類あってさ、一方はアタシらみたいな魔法が使えない人間用、もう片方は魔法が使える人間が通う学校だ。」
「私たちの学校は算術とか文学とか……あとは農業とか帳簿とかも習うの。魔法学校の方は詳しく知ってるわけじゃないけど、算術とかに加えて、魔法の使い方を習うんだって。」
「ウチの人に聞けばもう少し詳しい話が聞けると思うよ。気になるんならこの後聞いてみな。」
「ありがとう、後で聞いてみるわ。……二人が幼馴染なのは分かったけれど、ソールやマルクとはどうして出会ったの? 今聞いた話だと、学校が同じってわけじゃないのよね。このお店のお客さんだったの?」
「あっ! あ、あのね、その……。」
急にアニスが顔をニヤつかせ真っ赤にしてしどろもどろになった。それを横目で見ているリズはあきれ顔だ。どうしたことだと口を挟まずにいると、両手で頬を抑えながらアニスが語り始めた。
「ほら、さっき、あまり治安が良くない区画があるって、話したでしょ―」
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