夜を進む
夜の街を走る急行列車
煌めく星をぬってすすむ
半透明なキャプセル
乗組員たちは
操作に夢中で
諦めてしまった私は
ただ外の風景を眺めるだけ
無機質な放送とともに
一人一人
いくべきところへと消えていく
明日会うのか
明後日会うのか
これが最後の接触点なのか
ドアがプシューと開く一瞬
交わる視線で
今日最後のコミュニケーションを取る
驚き戸惑い無関心
反応はそれぞれ
ただ私は
生きているという事実を見たいだけなのだ
私が降りれば
もう交信役もいない
顕になった
赤いヴェルヴェットのクッションが
照らされてツヤっと光ながら
カプセルは最終地点までゆっくりとゆきつづける
私は一人するりと門を抜け出す
過ぎゆく街灯を追いかけて
私の影が踊っている
段々と激しく踊り
ついにはぴたりと止まる
あぁ、あなたに会いたかった。