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愛されし者

 訳もわからず走り続けた。

 何かに引き寄せられる様に光喜は自然と使われていない古い雑居ビルの屋上にいた。

 気付かれずに済んでいただけで無く、あの時冬美也達は勘付いていたにも関わらず、必死に護ろうとしてくれたのに、自分が情けないと光喜はずっと泣きながら後悔していた。

 あの時、熱さえ出なければ、一緒に崩落に巻き込まれていればこうはならなかったのでは、死んでいれば良かったのかと本気で思いながら柵を越えていた。

 逃げ出す直後、元クラスメイトの1人が笑って、死ねるタマかよとハッキリと聞こえ、なら死んでやろうと一歩踏み込んだ時だ。

「確かに君を愚直する愚者が居たな、死ねるタマかよと。でも君はこうして生きている、そうじゃないのかい?」

 いつの間にか、ジャンヌが隣に居た。

 柵を越えた時には居なかった筈だ。

 ジャンヌは続けて言った。

「君は絶望してと言うより、その場による煽り言葉に踊らされて、ここに居るそうじゃないのかい? 絶望して死ぬと言うより、キレて死ぬそう言う感じだ。でも、君は死ねない、勿論ボクもだ。何度だって蘇る存在なんだから」

 何を言ってるのかと光喜がジャンヌに言おうと見た瞬間、いきなりジャンヌが飛び降りたのだ。

 驚いて光喜は無意識にジャンヌを助けようとしたが、自身も飛び降りていた。

「うわぁぁぁ‼︎」

 ジャンヌの手を掴んで、引き寄せようとした直後、いきなり突風が吹く。

 突風で目を閉じたが、落ちた感覚より浮く感覚になり、瞼を無理に開いた。

 2人はビルよりも高く、空高く飛んで行く。

「ぎゃあああ!!」

 今度の悲鳴は高く飛び過ぎて返って違う怖さが増す。

 ジャンヌはより一層面白がって笑い、話してくれた。

「アハハッ! 初めての空はどうだ? 君の悩みもこうも簡単に吹っ飛べれば良いが、私は風に愛されし者、皆は一同管理者と呼ばれる。とりあえず落ち着いて話そう」

 風がゆっくりと纏い、それによって降りて行くのが分かる。

 何処の場所かは分からないが、ビル群の隙間と言うべき狭い場所に降りた。

 誰かが、スマホを使ってGPSで辿ってやって来た。

「ジャンヌ、loinで見たが本当に彼も管理者なのか?」

 薄い茶髪の短髪だが、オールバックにしていて眼鏡を掛け、スーツを着こなす男性が居た。

 ジャンヌは嬉しそうに彼に話た。

「日向、間違いない、理美のアースが言っていた。ボクのアースも同じ回答だった。新たな管理者だ」

 何を言っているのかさっぱりな光喜だったが、先の飛び方に足は宙に浮いたままな感覚のせいで尻餅をついてしまった。

「あ、あの? さっぱりなんですが?」

 ジャンヌと日向は顔を合わせ、まぁ確かにと軽く言い合って、ジャンヌから説明した。

「改めて自己紹介をしよう。ボクはジャンヌダルクだ。そしてこの子がボクのアースだ」

 光喜の隣にあの異形が立っていた。

「ひっ! さっきの!」

 日向もその姿を見て納得し頷く。

「やっぱりこうなるよな、最初坂本がアダム経由で預かる時に悲鳴を上げたものだ」

 とても懐かしさを感じている日向に対してもあるが、ジャンヌの言っている内容が最も訳が分からないのだ。

 ふと、その異形の肩と言うべきか、そこに小さく真っ白で5本位フワフワなリスのような尻尾を持った可愛らしい生き物が居た。

「そうそう、その隣に小さな可愛らしいリスっぽいのいるだろ? それ、明智光秀のアースだ」

 どんどん意味の分からない世界になって来た所で、日向が咳払いをし、説明を改めて始めた。

「明智光秀はわたしで、今は日向光秀として生きている。管理者と言うのは、なんと言えば良いのかな? まず、アースは気まぐれな存在であり、そして一度気に入られるとずっと宿主つまり我々に永遠一緒である事を示し、断る事すら無論アース自身も切り離す事は出来ない。だが、名前だけ聞けば歴史上人物が目の前に居る訳だが、ここで訂正すべき点は我々は不老というわけでも無く、不死鳥の様に老化し体を再生させる為に一定期間眠る、繭の様な石の中でね」

「そう怖がる事ないぞ、人間いや生物は慣れる生き物だ。最初怖がっていても、まぁこれはこれで良いかと言う気持ちになって普通になっていくのだ」

 ジャンヌもあの頃は懐かしいとばかり、笑っているのを見て、尚且つそのアースがいる時点で、これは夢や地面に叩きつけられたショックで死んで嘘の世界じゃないかと思い始めた時、あの日向のアースがほっぺを引っ張ってきた。

 痛かったのと、アースは意外と物理干渉して来るのと、現実であると言う事実に、余計に頭がこんがらがって来たが、改めて日向は辺りを見渡した。

「だが、君は少々、そのだね君が覚えていない或いはアースが何処かに隠れている様でね。無理強いは出来ないが、このままにしておいてもいずれ良くない筈だ」 

 どうやら光喜のアースが何処にも居らず、アース達も辺りを探してくれているがどうやら遠くにいる訳でもない様だ。

 しかし、確実に光喜は管理者であると確信がある様にアースが見れている。

「光喜、君はアースと2人だけの空間で話したりしてないか? ほら、良くある真っ白な空間を? ボクはいつもの様に家の手伝いしてて昼寝してたら、いつの間にかアースが居た」

「確かに、自分も若い頃、戦場で一回死にかけた時にあったな。まぁあの時にアースに会ってなかったら織田云々は出来なかったしな」

 話を聞いていて、段々落ち着きを取り戻し、まだ頭の中では整理出来てない部分が多いものの、光喜は自分もアースに出会っていることとなり、ジャンヌの話、日向の話でも理解しつつあったが、日向の話には少し深い闇を感じてしまう。

「日向さんが言うと洒落にならないんですが……と言う事は自分も会ってるって事に、なるんですか?」

「そう言うことだ。きっと君が忘れている可能性もある」

 日向に言われ必死に思い出そうとするも、どうしても何処で出会ったのか全く見当も付かない。

 だが、ジャンヌは手を差し伸べる。

「坂本達も、古参連中ですら、皆流石にあの衝撃的な出会いは未だに思い出せるぞ。だが、無理に思い出そうとせずも良い、それに今の時間で全部話すのも、冬美也達が全力で探し回っている事だし、カラオケ終わってからにしよう」

 そうだ、今は冬美也達に迷惑を掛けてしまって探し回っている最中だと思い出し、ジャンヌの手を取って立たせて貰った。

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