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 ナイチンゲールに言われた日程通りに光喜は退院した。

「全く! 後輩が当て逃げされて追いかけて行って橋から落ちるってどういうドジっぷり!?」

 退院手続きは咲がしてくれて、車に乗った直後からずっとこれだ。

「もう言わないで咲さん、俺めっちゃ恥ずかしいから」

 光喜からすれば全く身に覚えのないカバーストーリーの被害者だが、入院は事実で正直これ以上言わないでほしい。

 ただ心配している咲からすれば、だからどうしたとまだ話す。

「水位があった上であんたがきっちり飛び込んでなければ危なかったんだからね!」

「……はい」

『結局、冬美也達が去った後にずっと咲さんからこればっかりの話しか聞こえてこないし話題がずっとこれなのきついんですが!』

 そう目を覚ましてからずっと話がこれで、もう気が滅入るとかではない、鬱になりそうだ。

「それにしてもそのまま意識不明だったのがこっちはどれだけ怖かったと」

「本当にその節は申し訳ございませんでした」

 もう早く家に1人でゆっくり過ごしたい。

 

 漸く部屋に着き、咲にはしこたま言われたが、また初期の付き合いに戻った気がする。

 咲は心配していたが、坂本が未だ原稿を寄越さないので業を煮やしてすぐに出て行ってくれた。

 助かったが、とりあえず今坂本はどこかと冬美也達に聞こうと思いスマホを取るも、途中でフィンが居ない事を思い出し辛くなってしまう。

 あの時は本当に安心していたが、今は連れ去られ助けに行くとしても場所も把握出来ていない以上動くのは無理だ。

 とりあえずスマホから連絡するのは控えようとした。

 丁度その時いきなりスマホが鳴る。

 驚いて落としてしまうが、相手は冬美也だった。

「冬美也、何どうしたの?」

「今どこ?」

「いや部屋に漸く戻って来た所だけど?」

「分かった今からそっちに行く」

 すぐに切れたと思えば、チャイムが鳴るので、なんだ部屋から連絡したのかとインターホンテレビ画面も確認せず、そのまま開けてしまう。

「ボンジュール! 少年久方ぶり――」

 すぐに閉めて、すぐに連絡した。

「あの、冬美也さん」

「本当にすまん、今オレ達セェロ探し中で、合流するにはそちらの運搬してくれる方にお願いしているので、大人しく運ばれて下さい」

 どうやら冬美也は他の仲間と共に既に行動をとっていた為部屋に居ないとの事。

「嫌だ!」

 あのドンギラギラと言う謎のオーラを持つ男に担がれて連れて行かれたくはない。

「今、坂本さんが墓穴掘って原稿渡しそびれたのを良い事に引き離すタイミングが今しかなかったのです」

 お前も共犯かとつい呟くも、そういえば優紀はと聞けば既にディダ達が面倒を見ている上、冬美也の言う事を聞くよう命令を受けていた。

「優紀君は?」

「今はディダ達と別の場所におり、ドゥラに関してはオレの指示に従うよう命令受けているので大丈夫な筈です」

「筈って何!?」

 もう不安しかない、そっと扉を開けるとまだ居たし、今度は扉をしっかり掴んで離さない。

「ご安心ください! 安全に運びますので!」

「いや不安しかないんですが!」

 まさかの退院直後から行動するとは思ってもみなかった。


 空はとても広く、気持ちよさそうだ。

 だが実際、とても寒く空気が薄い。

 どこまで飛んだか分からない位は飛んでいた気がする。

「着きましたよ、ここです」

「ど、どこ、どこなんです?」

「メキシコ」

『1番危険な国ですかやだー!!』

 というか、自分はパスポート持って来てないです。

 警察等にバレたら一発検挙だ。

「なんで、てかマフィア抗争が激しい国に居るんですか!?」

「さぁ?」

「さぁって!」

「一応、この辺はまだ平和な方ですよ」

 言っている矢先にギャング同士で抗争をおっぱじめているので、平和ってなんだろうと光喜は思った。

「ではとりあえず、主人の兄上に会いに行きますよ」

「いやいやいや! なんであんたはそんなさわやか笑顔向けるの! 今さっきから銃撃戦始まってますけど!」

「こっちに来たら絞めますけど?」

 どうしよう、どうして彼に連れて行ってもらっちゃったんだろうか……。 

 運悪くこちらに気付いたギャングが何を話しているのか分からないが、目に入ったら殺すのが常識とばかりこちらに撃って来た。

 光喜は慌てて壁のある方へ逃げ、ドゥラも続けて入る。

「ほらぁ! こっち来たし!」

「ではちょっと絞めてきます」

 ドゥラがそう言うので、止めようとしたが既に居ない。

 ただ代わりに凄い悲鳴が轟く。

 銃声が所狭しと鳴っていたのに今はただの悲鳴だけだ。

 光喜の所に見知らぬ男が、近くに倒れこむ。

 何を言っているか分からないが、お前はあの男の仲間かと言っているように見えたので頭を振るが、返って怒らせこちらに拳銃を向けた。

 仕方がない、重力を使ってだませるしかないと思った時だ。

「うるせぇよ! てめぇらの陣地じゃねぇって言ったら何度分かるんだぁ、あ゙ぁ゙?」

 どこかで見たことのある女性がモーニングスターを拳銃を持っていた男に思い切りぶん投げる。

 もう見てはいけない惨状が後ろにあるので光喜は顔を覆って見ないようにした。

 多分その男は死亡したに違いない。

 他にも悲鳴が上がっている中、更なる惨状が見えない状態で繰り広げられる。

 あぁどうしてここに来てしまったのだろうか。

 後悔している中、静かになった。

 すると先ほどの女性が声を掛ける。

「おーい、もう大丈夫だよ。君、如月君だよね?」

「へっ……?」

 ここで漸く手を顔から外すとやはり見てはいけない惨状がありました。


 ある商店街のエリアから少し外れた場所に、ギバドロス一家の隠れ家があった。

 その1つの部屋に負傷した箇所を湿布や包帯で手当てされたセェロがソファーに座り、向かい側には冬美也も座っている。

「本当に、お前らどうやって追っかけて来たの?」

「坂本さんがいないので、アイムに頼んで居場所を知ったんです。ザムが居ればとりあえず、分かるし」

「なるほど、でトイレとシャワーを使っている如月君はいつ復活するの香蘭?」

 香蘭からすれば、前々から話を聞いていたのだろう、彼なりの修羅場を、しかし実際は然程血なまぐさい戦いを経験なんてしていないのには驚いていた。

「ごめんって、まさか慣れてない子だと思わなくて!」

 その分、反省はしてくれているようだ。

 冬美也は呆れ返ってる。

「光喜に余計なトラウマ植え付けんなよ」

 セェロの腹の居所は相当悪く、たまたま身内側として見てくれており、とりあえず話を聞くだけで、内容によってはかなり立ち位置が悪くなる、しかし冬美也はそんなの気にしない態度で話の合間にいきなり聞く。

「お前さんが呆れるな、で、どうして俺らを追った? お前さんらだから通したが、場合に――」

「アンドレ•ガナフを知ってるか?」

「アンドレ•ガナフ……誰だそいつは?」

 どうやら知らないようだ。

「CIAだ」

「成る程、お前は何か勘付きこっちに話を聞きに来た、お友達を巻き込んで」

 納得はしてくれたが、未だにそれだけで光喜以外にも連れて来たらしい。

 今居るのは冬美也だけ、唸りはするが自分が何したいのかを思い出し、とにかくアムルについてさりげなく聞く。

「……で、アムルって奴は? もうやっちゃった? それとも逃げた?」

 セェロは卑弥呼か光喜に聞いたのかと考えるが、まずは光喜が上がってきたので集まってからにしようと考えた。

「それは、と、坊主もう大丈夫か?」

「まだちょっと、でもシャワーも浴びて少しスッキリ」

「他のお仲間さんも呼べ、ザムもだ」


 改めて集まったのが意外な仲間達だ。

「いやぁ久々にメキシコ来たわぁ」

「ていうか、1番の謎はおたくらパスポート持って来たん?」

「持っていません、と言うか知り合いに飛んで運んでもらえる人が居て助かりました」

 一とジルと亮なのだから驚いた。

「改めて言うがなんで、せめて嬢ちゃんと連れて来なかった?」

 セェロが言うように、光喜も頷く。

 先ほどの恐怖をも挫ける事もなく、ずっと真摯に見ていた冬美也だったが、理美の話が出た瞬間、一瞬にして死んだ目に変わり表情も消える。

「いや、坂本さんが来れない事を良い事に男三人衆が付いて来た……理美と行きたかったけど、断られた」

「どんまい」

 光喜が慰めている間にセェロがアムルについて話すがもう単刀直入だ。

「で、あんたらには言わないといけないが、アムルとは現在連絡が付かない、逃げやがった」

 どうやら集合場所にも来ず、連絡にも出ないとなれば、もう依頼主と繋がっている或いは首謀者本人であると言う事になるだろう。

 冬美也も歩がアムルを知っている形だったら出来たであろう察知も不可能に頭を悩ます。

「アイム辺りで調べられたらなぁ」

「こちらで探すんで言い訳聞ければいいけどな」

 軽い口ぶりで言うが、セェロの顔が殺意を持ち、回りを威圧的に脅す。

『うん、殺す気満々だぁこの顔』

 光喜はもう怖くて泣いていた。

 帰りたいと言いたいが、回りは続けざまに話を続ける。

「そっか……」

 冬美也はそれだけ呟き黙り込む。

 ジルはセェロに言う。

「なんで、ゼフォウにあんな体質があったのを教えなかった? もっとこっちでも対処出来ただろう?」

「役人に言うか普通?」

 セェロからすれば、逮捕だけで済めばいいが、下手すると拷問して今までの稼ぎを持ち逃げされる可能性もある。

 それを出来そうな男3人、信用出来る筈がない。

 だがジルは噛みつき、亮が煽ると言う面白おかしな状況に一が止める流れになって来て、セェロも何故そうなると思いながら言い負かそうとした。

 ずっと塞ぎ込んでいた冬美也が呟く。

「……オレのせいかもしれない」

「いんや、もしアンドレって奴が関わっているなら状況は変わるが、確かにお前さんも原因だな」

 セェロは宥める気はないが、しっかり反省すれば良いと言った感じだ。

 光喜も自分も同罪なのだから冬美也をあまり責めないでほしいとかばうと、セェロが意外な話をしようと思ってわざわざ呼んだのがセェロ自身だった。

「そ、それならお」

「お前さんを連れて来た理由は、フィンの話だ。こいつも知らないだろうからな」

「フィンの話?」

「オレらが知らないフィンの?」

 まるでフィンの過去を知っている口ぶり冬美也も驚く。

 セェロ的には、元々呼ぶ気だったようだが、いきなり乗り込んできた冬美也に驚き、同時に男3人と言う奇妙奇天烈で内心納得してもいない。

「そっ! 本当ならガキんちょ達の方を呼ぶ気だったが、いきなり来るわで、せめて冬美也と嬢ちゃんとガキんちょなら分かるが、なんで本当大人で役持ちしかいないんだよ。つか冬美也以外全員管理者だし」

「オレ以外、皆用事があって誰も来てくれませんでした」

 実は全員誘っていたのに、皆それぞれ断られてしまったのだ。

 せめての救いは歩の近くには坂本が居なかった事だろう。

 絶対小説の原稿そっちのけで本業に着手しそうだ。

 だが代わりに、曲者だらけになった。

「それで保護者役として皆で来ました」

 にこやかな亮を見たセェロは冬美也に言う。

「もっとも信用できないの連れていたしな」

 実際入って来たのは冬美也ではなく亮で、緊迫した所に昼行灯みたいに、入ってしまった為いきなり銃撃戦待ったなしになり、慌てて止めに入る羽目になったのは言うまでもなく――。

「オレ1人でも良かった気がしてきた……」

 冬美也も嘘を吐いてでも1人で来るべきだったと後悔した。


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