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病院

 冬美也が出て10分は経ったのか、ナイチンゲールが来た。

「漸く起きたか、全く若いうちに何やってんだか」

 ここは病院だ。

 管理者御用達の病院で、総一もここで働いているとの事。

 今回はあのマフィアもと言いたいが、ギバドロス一家の大半が入院となれば、かなりのビックニュースなるので、流石に笑い物になりたくないと言って、知り合いの医者に頼ると言い残しセェロ達は消えたそうだ。

「――で、俺はどうして」

「言っちゃうと総一曰くアンタが鬼に覚醒したって事だ」

 ナイチンゲールも総一に聞かされるまで、一体なんであの状態にと思っていた。

 光喜だってそうだ。

「お、鬼? 御伽話とか逸話とかの⁉︎」

 未だに納得もしていなければ、そんな御伽話に出てくる仮想人物が自分だなんて思いもしない。

 ナイチンゲールは冬美也に聞いていたのと一緒だと理解する。

「そう、冬美也の言う通り、本当に覚えてないんだね。ディダがアンタを斬り伏せていなかったら今頃どうなってたか……」

 最後の言葉には流石に驚いた。

「斬られ、えぇぇ⁉︎」

 つい寝巻きを脱ぐも傷口斬り傷すら無い。

「そのまんま、アンタをあの刀で斬ったんだよ」

「ふぁ⁉︎ ででででも斬られ……⁉︎」

「だから聖刀で斬ったんだよディダが」

 ナイチンゲールはあるかた話を聞いているし、光喜も実際目にしているとも知っていた。

 だが久方ぶりだったのだろう、当人は忘れてたが今ので思い出し顔が赤くなる。

「……あっ」

 そうだった、ジルと坂本が刺されたのを思い出す。

 あれはあれでトラウマだったが、日が経つにつれ忘れてしまっていた。

「思い出したならそれで良い、相当暴走してたらしいからね。1週間も寝てれば体も元に戻ったし、また覚醒するんじゃないよ」

「いっ、1週間ってマジで⁉︎」

「冬美也から聞いてないんかい」

「そのぉ、次の日だと思ってたから」

「あぁそういう、結晶みたいなのが顔にくっ付いてたってディダが言っていたし、手足も若干それに等しいのが付いていたが赤くなっていた皮膚も落ち着いたしね。今日はもう2日様子見て退院して貰ってから管理者として今後の話して行くから、ゆっくり休みな」

「ありがとうございます」

「うん、死ななければ良い、病院は治す所であって死ぬ場所じゃないんだからね」

 そう言ってナイチンゲールは病室を出て行った。

「……フィン無事かなぁ……何処行ったんだろう……」

 心配するも、この状態では体は動かせないし、すぐにでも行動を取るにしても相手は新興宗教でありチカラの勢力を強めた相手、入り込んでも助けるにしても幹部連中とまたやり合うのは目に見えている。

 もう頭を回したくない、再度寝てしまおうかと思っていたら、見知らぬ12歳位の子供がひょっこり顔を出し、何故かこちらを見ている。

「認知」

 いきなり言われて驚いてしまう。

「誰⁉︎」

 丁度そこへ坂本がやって来た。

「ごめんごめん、この子はアイム、普段は(あゆむ)として生活している子よ」

 まるで回りがフィンと呼ばずにゼフォウと言っているような感じだ。

 だからか、光喜は歩ではなく、坂本に聞く。

「フィンみたいな?」

 そのつもりだったが、歩はすぐフィンの事をゼフォウだと気が付いた。

「フィン……あっ、ゼフォウね」

「知り合い?」

 歩としては一緒に逃げて来たとの事。

「知ってるも何も、一緒に逃げて来た間柄」

「……はっ」

 意味が通じずに、光喜の顔がもっとヤバい方へと行く。

 それに気が付いた坂本が訂正する。

「ち、違うから! そっちじゃないわよ!」

 冬美也が丁度入って来て、歩を見た。

「居た! アイムここかぁ」

 歩を探していたのか、部屋に入ればいきなり歩が言う。

「冬美也共一緒に逃げた」

「わぉ、どういう意味で?」

 これは話すべきかと冬美也が考える。

「話せば長くなるんだよなー」

「冬美也がどっか行っちゃって苦労して、ゼフォウが祠を壊して大騒動に」

「⁉︎」

 ますますこんがらがるような話になりそうだ。

 坂本も懐かしくなったのか話出す。

「そうそう、理美ちゃんが山で冬美也君を拾って」

「アイム達は確かディダ達に保護されて」

 冬美也が話した後、いつの間にか琴がいた。

「ゼフォウ様がどういう訳か、一緒にいましたね」

「うわぁ! いつの間に琴さんが⁉︎」

「そして、理美様が撃たれます」

 もう言葉が出ず、光喜は驚きの中、まだ話が続く。

「――⁉︎」

「あったあった、あれは予想外だったわぁ」

「まぁ、あの後入院しましたし、最近跡も見えなく」

「なったと思ったらぁ今度は――」

 平和的な話な感じで盛り上がる中、絶対碌なオチしかないのは目に見えて分かり、早目に話を折った。

「笑い話じゃない話だよねそれ!」

 ここで改めて冬美也が話しを始める。

「アイムに頼んでいるんだ。ゼ、フィンの位置情報を」

「そんな事出来るの⁉︎」

「認知すればだけどな」

「あの時の認知ってそういう」

「本当に便利よぉ、サボりの名手どもを一網打尽にしたり」

「でも坂本さんのお目付け役になっているけどね」

「あんにゃろ、古藤院だな最近管理者会議とか行っているといつの間にか居たし」

「日頃の行いもろに出てるじゃないですか」

「もう少し報連相しろ」

「うっさいわね! それより歩」

 電子パットを取り出し、歩にグングルMAPを見せた。

 世界写真等が掲載されている分見やすさがあるので自分達でもどの辺かが分かる。

 最初じっと見ていたが歩だったが、色々回して止めてを繰り返す。

 歩は皆に言う。

「浮いたり浮かんだり、冬美也みたいに場外って訳じゃないから多分……」

 冬美也からすれば歩がそんな感覚であの時自分を見ていたのかと口にした。

「おい、異世界に行くと一切分からないのか?」

「そんな感じ、でもゼフォウはね、居るのは分かるんだ特定が出来そうで出来ないGPSでもたまに地下行っちゃうとバグっちゃうあんな感じ」

 話を聞いた琴的には神隠し的なにかと感じる。

「神隠しみたいな感じでしょうか」

「うん、そう、掴めなくするのは至難の業なのかな? 誰か知っている人居る?」

 歩としてはこう言った事をより詳しい人間に聞きたがっており、その為坂本は卑弥呼に聞く事を提案した。

「それなら卑弥呼が居るわね、彼女も入院しているの、車椅子出してあげるから一緒にどう?」

 放置されてモヤモヤするより大分良い。

「ありがとうございます」

 車椅子を借りて、卑弥呼が居る場所へと向かった。


 部屋を出て、中央の休憩所まで来た時だ。

「こんのクソ弟‼︎」

「ごめんよねぇちゃん‼︎」

 卑弥呼と誰かが大喧嘩と言うか一方的にプロレス技を卑弥呼がかけていた。

 それを眺めているだけの一が言葉だけ止める。

「おーおー、大臣いじめるの大概にしぃや卑弥呼ちゃん」

 光喜がこんにちはと言うとおうと一も言う。

 改めて光喜は言った。

「一さん、あのこの人ってもしかして……⁉︎」

「光照外務大臣で、卑弥呼先輩の実の弟であり、管理者だ」

 ここで日本で管理者として見れば最古参である光照と出会い、同時に外務大臣である政治家と初めて出会い興奮した。

「うっそ⁉︎ 相当な腕利きで時期総理大臣とか言われてる?」

 漸く解放された光照が笑いながら言う。

「いやいやそこまで行っちゃうと身動き取るの難しくなるでしょ? 管理者として」

 ただ後ろにいる卑弥呼の殺気だった目が怖くて見ていられない。

 坂本はいつもの事なのか、そのままスルーして一に聞く。

「そっちはそっちでどうだったの?」

「防衛省の一部破壊された」

「聞いた。一体なにがあったのよ?」

「あのデカブツ、いつの間にか潜入されてて、セキュリティも正常に動いていただけでなく、警備もかなり厳重になっていたのにだ。お陰で防衛大臣泡吹いて気を失ったわ」

 一からすればもうどうにでもなれとばかりに笑い、目が死んでいる。

 一通り笑い終えた後に気を取り直して一が坂本にそれでそっちはと話を振るとこっちもこっちでなんとも言えない生返事のまま話した。

「……んまぁ、色々と言うかディダから聞いたがあのデカ物そっちに行って光喜にアッパーかましてくれてなかったらディダもやばかったって」

「あー聞いてるぞ、金剛が来たって、金剛が最近色々と物騒な事をしているって聞くが他の政治家さんはご熱心……いやなんか逆らえないみたいで、わざわざ煽っておるって光照が言うてたで」

 話を聞くにまたかと顔になりつつも、とりあえず話を戻し、そのデカブツの人相や身長等を把握したいと思い、聞いてみるが意外な事に入って来たのにも関わらず映像に残っていないのだ。

「まーたいつもの、良い加減弱み握られた位で国を売るなって話なんですけども! 話戻すけど、そのデカブツ、映っていないの監視カメラで? 序でにその辺の監視カメラに金剛なんかも? あんたならどっちも観ているはずよね?」

「ありません! むしろ入って来た映像自体になんも映っていないんですよ奥さん! 後、金剛関連は自分にそこまでの権限無くってよ!」

「奥さんって何よ。大昔過ぎるんですが」

 普通に間に受けてしまう坂本に一はまさか普通に返されて我に戻る。

「あっいや徹夜明け3日目なんです」

「ご苦労様、その3日は何の為?」

 むしろこれはこっちの案件では無いのではと思いながら教えてくれた。

「穏喜志堂関連で、他の国でちょっとブッチしちゃってこっちで内容聞き取り、大臣総出で話し合いだよ」

「金剛に行かせろ」

「そんな事したら、さっきの逆らえない連中の出来上がりだから出来ない!」

 どうしてそう簡単に負けてしまうのか、そんなに力があるのかと疑いたくもなるが、現状確かに相当な力があるのは認めざるおえない。

 同時にどうしてそのデカブツは現れたのかと聞くも、それ以上はこちらの管轄外のようだ。

「たーく、どうするのよこれから? と言うかそもそもなんで防衛省にそのデカブツ現れたのよ?」

「……君は国家機密って言葉知りませんの?」

「あーはいはい、その関連でね」

 一がここに来たのを教えてくれた。

「今回は軽い情報交換と光喜君の様子見、ついでだから光照のおっちゃんに光喜君達と顔合わせをと思って」

「成る程、それでか、でもゼフォウどうするの? 下手に兵器とかにされるとこっちもヤバいんですが?」

 卑弥呼からの情報で真名を呼ばれたせいであちらの駒として動いた時点で兵器として使われてもおかしくはない。

 その分、こちらに置いておきたかったのも事実だ。

「確かになぁただでさえこっちに居て欲しい存在だけどもなー」

「しかも他の連中に聞き取りしたけど、水島と金剛の口ぶりだと依頼主居るらしいわ」

 坂本の話を聞き、一は坂本にここは一度心当たりを絶対知っているセェロ辺りに当たるべきと良い、光照を呼ぶ。

「……一旦坂本、アイム使ってセェロ見つけ出して見当ありそうなマフィアや物好き居るか聞いた方が何かと動きが見えるんで、んじゃ、ほら光照さんお姉ちゃんとスキンシップするの辞めてそろそろ戻りますよ!」

 しかしその間、ずっと様々なプロレス技をかまされ続けている光照は必死に助けを言っていた。

「い、いや助けて!」

 他はと言えば、助けに入ったらこっちが死ぬので自販機で飲み物飲んで待機している状態だ。

「はいはい、卑弥呼ちゃんまた進展あったら話すわ、そいじゃ」

「もう帰るの? なら後サソリ固めやってからで良い?」

「止めてー!!」

 光照の叫びは儚く散った……。


「ところであの光照大臣何し来たの? 自分達に会いに言ってたけど?」

 光照と一が帰った後、光喜が聞く。

「うん、元々こう言った職に就くと中々同じ管理者同士顔合わせとか行けないからね」

「そうなんですか、ところで今向かっているのは?」

「理美だ、理美も多少負傷したら良いけど」

「どっちかと言えば、心がねぇ……今まで踏ん張ってたのがフィンが連れ去られた所見ちゃってるから、尚のこと追い込んじゃってる部分があるみたいで」

「一応、私とは違って怪我は無いけど」

「ひっさびさに時の方使えたんだけど、間に合わなくて」

 そうこういているうちに理美が使っている病室に着いた。

 中に入ってすぐ冬美也が理美に聞く。

「理美、今大丈夫か?」

「……うん」

 蹲る姿はかなり参ってそうだ。

 自分だって昔参っていた時に似ている気がした。

 多分今何を言っても無駄な気がする。

「ねぇまた後ででも良いんじゃない? まだ本調子じゃないっぽいし」

 卑弥呼の言う通り、これはあまり励ます事より自分で納得して進むしかない。

 ただ冬美也からすれば、このままにもしておけなかった。

「それもそうなんだが……理美、言っておくけど」

「でも連れ去られたのは私の力不足なの! あの時もっとしっかり力を扱えていたらこうははならなかった!」

 完璧なんて無いのだし、目の前で連れて行かれたのを見たら誰だってこうなるだろうし、気持ちが安定しないのも分かる。

 それでも冬美也は理美に言う。

「違う、敵の力の把握が足らなかったって坂本達が言っていた。だからお前の非じゃない」

 最も1番妥当な回答だ。

 しかし理美はそう思っていなかった。

「なら冬美也ならどうしてた?」

「今はそういう話じゃ」

「冬美也なら出来るよ、何だって、私にはそんな力なんて無い、結局器用に生きれるのはいつだって出来る人で私は――」

 放っておいたら多分、二度と取り返しのつかない言葉を発するのも時間の問題だ。

 光喜が慌てて止めた。

「理美ちゃん‼︎ これ以上言ったらもう戻らない、だからもう卑下らない」

 大声も相まってか自分が何言おうとしていたのかと理解し、泣き出してしまうも謝罪を言う。

「……ごめ、ごめんなさい……」

「大丈夫、オレ、何も知らなかったし、お前だけじゃない、次を考えて動いている。今は落ち着いてから……な」

 何を言おうとしていたのかは知らないが、何となく分かってしまうも、冬美也は理美に寄り添った。

 今回ばかり、理美の心もかなりすり減り、このままだともっと悪い事が起きそうで光喜は怖くなる一方だ。

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