蠢く何か
結局、冬美也が妙におかしいと言うことで、今回は皆と一緒だ。
でも、なんか微妙な空気で、誰も話さない。
そんな中で、理美の住む寮へと着いてしまい、また明日と言い、冬美也も明日と言うと理美は寮へと入って行った。
結局男3人歩き出し数分過ぎる。
漸く光喜が口を開く。
「なんでいきなりそんな事を言うの? 一緒になら分かるけど?」
冬美也に聞くも冬美也も実は良く分かっていなかった。
「その……良く分からないんだ。多分さっきの場所で待っていれば会えると思ってたし、いつも会っているのになんか今日見た時、こう一目惚れみたいな?」
こればかりは光喜も怖くなるが、そういえばあの時2人でやって来たのを思い出し、問いただしていないのかと不安で口から出てしまう。
「えぇ、何それ怖い、そういえばクライヴの時一緒に来ていたけど、まさか問いただしたり」
「それはない、断じてない‼︎」
流石の冬美也もそれはしなかったが、光喜からすればあんな場所で待っていたのだから正直信用出来ない。
「なら良いけど……でも2人でって言うのも」
ただ冬美也本人もどうしてこう言う気持ちになっているのか本気で分かっていないのだ。
「さっきも言ったけど、オレが1番良く分からないんだ」
これは一体どうしてと言わんばかりの冬美也と全く意味が分からない光喜は頭を捻る。
話を聞き、ずっと考えていた亮が憶測を建てた。
「多分なんですが、無効化した際、アースの力で理美が無意識の内にあなたの気持ちをセーブ掛けていたのかもしれません」
「はっ? なんで? 全ての生物に愛されし者が?」
光喜からすればそうだろう。
力が溢れ、未だに上手く蛇口が閉まらない程だ。
しかし亮は様々な管理者達を見て来たからこそ、1番分かりやすい男の名を出した。
「クライヴを思い出せば良いよ? こう見えて、アイツが1番強弱上手いから」
「力が使えなかったり? あっちが強まったり?」
ふと思い出せば、上手く力が出せなかったのも頷ける。
「そうそう、あぁ見えて彼女、気を遣っていたんでしょう。彼女は下手に強力なサポート型は漏れ出る力を使って特定の、無意識だと思いますが多分人間限定に感情を抑えると言う条件を持たせる事で今まで上手く行っていたのでしょうが、何やら不穏な人間のせいで折角上手く行っていたのを無茶苦茶にされた感じとも言え」
ここで感情が抑えられない冬美也がその原因となっている奴を殴ろうと走り出す。
「よし、もう面倒だあの野郎、アンドレ•ガナフをぶん殴ってくる」
「そこ! 落ち着きなよ!」
光喜は慌てて冬美也を捕まえる。
亮も理美が無意識とは言え、もっとも自身にあった状況を作っていたのだと分かり、今後を考えればもう無効化するのは危険と判断する。
「多分、今までセーブ掛かってたから、そこまでならなかったんでしょうが、これからはどうしましょうか……下手に無効化していると上手くいかなくなりそうだし」
しかもなんか悪い方へと冬美也が突っ走り出した。
「ならこのままで、なんか色々出来る」
再度光喜が力を込め、冬美也を逃さない。
「だから落ち着け!」
こうなると無効化した亮も責任を感じ、今後も顔を出すとのこと。
「まぁ仕方がありません、しかし今後もあるので無意識のセーブを崩壊してしまった可能性も考え、俺もちょくちょく顔を出すから」
「お、お願いします」
多分理美もだろうが、光喜達からもこうなるとは思っても見なかった。
寧ろ落ち着くか、普段通りであまり意味が無かったと思い過ごしだったと思う筈だったのがこれだ。
一度家に戻っても大丈夫なのだろうか……。
心配もあって、つい冬美也を送ると言う建前で、一緒に部屋まで行けば、優紀が迎えに出てきた。
「おかえり兄ちゃん、光喜さんもいらっしゃい」
「ただいまー」
「お邪魔します、ところで優紀君」
とりあえず、光喜は度直球で今の現状を言う。
「何?」
「今日君のお兄さんちょっと落ち着きが無いんだけど」
「何言ってんだよ光喜‼︎ オレはいつだって――」
冬美也は未だ興奮状態、こんなの困るだろうと思い、暫くいた方がと思っていたが、あぁ成程と優紀の方で納得した上で、こう言った。
「はい、兄ちゃん落ち着こうね」
これで落ち着けば楽だが、先ほどの件もあり、正直期待はしない。
「……はい」
『お、落ち着いた!』
まさかの落ち着きようとなんか落ち込んでる。
「兄ちゃん、どうしたの?」
あっ、これは賢者モードだ。
「いや、こう今まで無かった感情に振り回されたと言うべきか……」
後悔に呑まれた人間をまじかで見るととても痛々しい。
優紀はこの状態の兄を見て、一言で纏めた。
「やめて」
と言うより、もう本音だ。
光喜としても声を掛けるも、現状あまり関わりたくはない。
「本当に大丈夫?」
「も、もう大丈夫だ。ただ、あれはなんだったんだ? 前にもあったんだけど?」
「前にもあったの? それ」
「だけど、戻って来た時には落ち着いたから、きっとストレスと命の危機での綱渡り現象だったのかなと」
多分、異世界に行っていた時の話だろうがその感覚をセーブ掛けてくれてありがとうと言いたい位だ。
「……とにかく、明日会っても変な行動しないでね」
「元の兄ちゃんで居て」
漸く光喜は自室へと帰れた。
そうして次の日――。
フィンも居ないのも徐々に周りが慣れ始め、冬美也もあまりフィンについて話す事も無くなった。
寂しいかと言えば確かに寂しいが、マフィアの人間なのだからあまり関係を築くと後々足を引っ張られ、いつか無惨な事にと考えてしまう。
だから仕方がない、無事ならそれで良いだろう。
そんな中、ザフラが話し掛ける。
「何、青春しているんだ? 恋か?」
どうして恋と決めつけるのか、そう言いたかったが、ここは素直な気持ちを伝えた。
「違うよ、あの火災後からぱったり話も無くなって、フィンもあのせいで連れて行かれちゃったし……でも徐々に消えていっちゃう当たり前の生活の中で、それって結局あの崩落事件のせいでめちゃくちゃになった俺も消えてったのに気付いていなかったのかなって」
「そうか、人間忘れやすいからな、いじめた側が忘れるようにな」
ザフラからそんな言葉が出てくるので凄く怖くなった。
「何かあったのザフラ⁉︎」
「いやぁ特にそんな事したら処刑されるからな王族に手を出したら……なぁ?」
「ひぃぃぃぃ!」
普通の人間が手を出してはいけない人間であった事を今ここで思い出す。
話に気付いた冬美也が声をかけて来た。
「何がどうした?」
「あっ冬美也、フィン居なくて寂しくないの?」
「弟いるから」
意外とドライだなと思ったが、そもそも居ない時期もあった為そこまで気に求めていなかったようだ。
「そっか」
「それに夏休み居なかったし」
「あー仕事で」
ここで冬美也がザフラにも火災の話を振る。
「そうそう、ザフラもあの火災どう思っていたんだ?」
「結局放火だったんだろ? でも、金庫が開いた状態なまま燃えてしまったせいで何入ってたか、まだ調査中だと聞くが?」
ちゃんとアミーナ経由で話を知っていたが、やはりそれ以上の話は無かった。
光喜としてはもう少し情報が欲しいと思いながら背伸びをする。
「……でもそれ以降は何も出てこないし、大人達に聞くのはなぁぁっぁ!」
ザフラはその話に笑いながら最も大人である管理者に対しての定評を教えてくれた。
「アミーナ曰く、1番情報を持っていて1番信用度が低い、管理者あるあるらしいぞ」
2人してあぁと言いながら納得してしまう。
下手すると全世界共通な気もした。
夜、夜の行燈でアルバイトをしながら、いつもの様に忙しなく頑張っていると、なな子がじっと外を見ているのが気になりどうしたのだろうかと思い、戸を開ける。
なんか居た。
めちゃくちゃ関わってはいけない、黒いスーツの男達が立っている。
そっと戸を閉じ、光喜は何事もなく仕事を始めた。
卑弥呼も何をしているのかと、戸を開けてすぐ閉める。
仕事に戻って、光喜に言ってあげた。
「あーこれは関わりたくないわ。なな子ちゃんが居るから大丈夫だろうけど、外出たらアウトね」
「どうしたら良いんですか? なんか見覚えあるんだけど?」
もう忘れる気でいたのに、すぐこれだと泣き崩れたくて仕方がない。
それでも仕事優先なので頑張った。
でも、仕事が終わった後どうやって逃げるべきかと考える。
だが無情な事に1人だけ入って来た。
小鳥遊が代わりにその1人の相手をする。
「いらっしゃい! お一人で⁉︎」
「そうでーす」
「カウンターへどうぞ!」
「どもども」
声を掛けられたら終わる絶対と言う焦りで、カウンターに戻れなくなってしまった。
卑弥呼がすかさずフォローに回る。
「如月君、とりあえずここ片付けててコッチで持っていくから」
「す、すいません……!」
グループの飲み会が終わった席を片付ける形でカウンターや注文を取らずに済んだ。
かに思われた。
なな子が服を引っ張るので、ふと見ると、なんか居るのだ。
「ひぎゃ――!」
「ばっ! 驚くの無し! ちょっと仕事終わったら来てくれるかな?」
その人物はセェロであり、どう言う訳か自分に用事がある様で、なな子は凄い苦虫を齧った顔で見ている。
これは自身の力をも凌駕する何かをセェロが持っていると言う表れのようだ。
卑弥呼が気付いて来てくれた。
「何、犯す気?」
こちらも苦虫以下同文。
セェロは卑弥呼に言うも、一切信用が無い。
「誰もしませんよ、ちょっとトイレ借りようとしたら知り合い居たんで」
「はいはい、嘘言わない、部下なんとかして下さい。客足減ってるんで」
接客業として卑弥呼が言いたい事を言ってくれた。
そしてどちらが強いかも、殺気だけで理解させる実力も卑弥呼に軍配が上がる。
「お、おう……!」
バイト終了後、光喜は少し離れた人気の無い場所から黒い光沢のある車に乗った。
『なんで結局こうなるの……?』
「ごめんねぇ、如月君、今日ちょっと一緒に来て欲しくって」
「だからって、彼だけ連れて行く気だったクセに」
「心配だからって、一緒に着いてこなくても」
「あ゙ん゙?」
「そう怒らないで、お願い」
なんか普段の裏を見せない屈託ない笑顔で、こちらを翻弄させそうな怪しさが一切無く、なんかお願いのポーズも可愛らしくしてくれた為、正直な話、とても不気味だ。
お陰で、卑弥呼以外にも助手席と運転席に居る部下までも気持ち悪がっている。
『キモい』
『キモい』
『キモ過ぎる』
卑弥呼だけ、いや光喜までならましだったが部下にまでそう思われたら凄く嫌だ。
「お前らぁ……」
殺意増し増しでバックミラーを覗く部下達がサッと目を逸らす。
ともかくどうして自分が呼ばれ連れてこられたのか知りたい。
「それより、どうして俺?」
「今の現状は落ち着いているが、どうも何かが蠢いていてな」
「蠢く?」
それならもっと違う人間ではと言いたくなる時、卑弥呼が別の話ではあるが言ってくれた。
「あんたその無効化の能力、なんとかならないの?」
セェロも色々しているらしいが、現状その蠢く物が収まっていないようだ。
「なんとかしようとして、今んところは大丈夫なんだけど、この蠢く何かが効果が無いような気がする」
「無効化ってあの無効化?」
「そう、あの無効化だ。基本異能メインだがな」
亮はアースによるものだが、実際にそういう無効化の異能者がいるのかと驚くが、よりにもよってマフィアのボス。
これはこれでとても驚異にもなる。
「他にも出来るでしょうにボス」
部下に言われて、更に機嫌がと言いたいが話が進まなくなるので、そのまま話だす。
「うっせ、でもまさか王女様まで来てくれるとは心強い」
「どうせ、如月君ついでに釣る気でいたクセに、で、その蠢く何かを退治したいの?」
「あぁ正体さえ分かればこっちでも対処出来るし、こっちに手を出したらどうなるか分からせれるだろ?」
やはりマフィアだ。
だが、確かに対処が出来ないとマフィアも手をこまねくしかない。
「……でもなんで俺? 俺がエビじゃないの?」
「鯛は私って事よね?」
「そうそう、どっちも鯛だから安心してくれ、俺がエビ役やっただけだし、それになんか他、入れなかったし」
「やっぱり異能以外にも効くじゃん無効化」
そう言いながらある場所へと向かう、同時に何かも付いてくる――。




