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クライヴとの戦い

 ドゥラとクライヴが未だ戦う中、人の気配が無い。

 クライヴ辺りが先に気付く。

『ちっ、坂本の部下辺りの疑似空間か? 厄介だが、こいつも閉じ込めたのなら話は別だ!』

 戦いの中、由梨花を逃したのは痛いが、いっそ自由にもっと戦いが出来ると言う事にクライヴは笑いだす。

 ドゥラはその異様さに素直に言ってしまう。

「不気味な方ですね」

「ふん、言っていろ亜人が!」

 既にドゥラが人間ではない事を理解出来ているようだが、ドゥラとしてはクライヴに対してある疑問が残っていた。

『強くなったかと思えば弱まったりと何かと意味の分からない人間だ』

 極端な強弱の力、それが違和感なのだ。

「お前には見えないだろうな」

 その言葉と共にセッシャーがやって来た。

 セッシャーは先ほどあった事を言う。

「クライヴごめん! 銀髪見えてたし、しかも琴のヤロウ、あのアースにも戦い覚えさせてた!」

 だからか逃げ帰ってきてしまう程の敵襲だったのだろうとクライヴは察し、今度はきっちり反撃すると宣言をした。

「なるほど、見えない態度って言うのは心理戦として立派な作戦だ。後ろに居ろセッシャー」

「うん! 全力で行くよ!」

 ドゥラから見れば、クライヴが独り言をずっと言っているように見える。

 だが急に雰囲気ががらりと変わった。

 クライヴは一気に強くなるのが圧だけで分かる。

 そして同時に自身の力がより弱くなって行っていく。

 瞬時にドゥラは一歩だけ後ろに下がった直後既に拳が目の前にあった。

 

 凄い爆音と言うべきか、どこかが破壊される物音が光喜達の所まで聞こえる。

 ニュートンはこれ以上出現は無理と判断し消えてもらい、ずっと元の場所へとひたすら走っている時の音、すぐにセッシャーとクライヴが合流したのが分かった。

「くそっ! アイツら、疑似空間だと認識したとたんこれだ!」

「雷神無事だと思うけど……!」

「あの野郎、連れ戻したら100万ボルトかましてやる!」

「それ死んじゃいますよ!」

 殺意に染まった日向を必死に止めに入る光喜に対して理美が思いながら口にはしない。

『スーパー〇サラ人じゃないと』

 それに対して心でどう思っているのか悟った冬美也も口にはしないがこう思っていた。

『理美ならそういうの思っていそうだ』

 その先に進んで走っているのは琴と空から飛んでいるジャンヌは言う。

「今、力を増大にしたクライヴとはやりあうのは不可能でしょうからあなた方はあまり近付かずに!」

「ボクらで対処するからあまり近付くなよ!」

 流石に戦力外通告は痛いが、日向も諦める。

「……分かった。雷神は任せたぞ」

「分かりました、回収したら日向はそのまま子供達を」

「あぁ!」

 ここにいる皆、実際力が足らない。

 今すぐ戦力になるのはジャンヌと琴だけだ。

 他にも来る予定だが、これからどの位の管理者達が集まるか、時間と運次第。


 擬似空間であっても、相当な土煙なのか家の崩壊で出て来た埃か、とにかく酷い煙だ。

 だが煙が鎮まり落ち着くと、ドゥラは何も無かったかのようにただ埃が身体中に付いてしまい、それを払う。

「あっぶないですね、危うく顔に傷が付くかと思いましたよ」

 クライヴはどうしても納得がいかない。

 セッシャーもだ。

「なんだアイツ? さきの攻撃なんて避けきれるはずないだぞ」

 ただやりあったクライヴなら分かる。

 一瞬の間に何かがはじかれる感覚。

 力を強めようが相手を弱めようが関係ない、あの感覚からして理解した。

「こいつ、何か呪の様な気配を感じる……やはりあのガキか!」

 ドゥラが主と言った少年、優紀がどのような形で呪を使ってドゥラに施したか分からないが、大体の呪は生きた人物ではないとほぼ不可能だ。

 あえてここは疑似空間を突破し、優紀が隠れているであろうシェルターに向かいイビトもろとも吹き飛ばす事を考え、この場から逃げる選択をした。

 一瞬で消えるも、ドゥラは追いかける。

「貴様の考えはすぐに理解出来た! 主に手を出させない!」

「倒せないハエに要はねぇ!」

 流石にハエ呼ばわりされ、ドゥラはどう絞めてやろうかと考えるほどだったが、何かの気配を察し一歩下がった。

 かなりの飛躍のある状態で琴が薙刀を振り落とす。

「ふんっ!」

 かなり綺麗に入ったように見えたが、クライヴの方が先に見切り、避けられてしまう。

「舐め過ぎだぞ、高々数百年程度の奴が!」

 勢いのあるパンチ、琴は避けるには遅いと判断した為、下がりながらも防御の構えを取った。

 防御の方は申し分無いが力に愛されし者、弱められてしまった琴の防御ですら撃ち破られ、飛んで行く。

 しかも防御していた腕の骨にヒビが入るのではと言う位の自身からみしみしと言う音が聞こえていた。

 落ちる瞬間、ジャンヌが風で受け止めてくれるが、これが最後、一気に力が弱まってしまう。

「純粋な力だけなら良かったのに、あぁもこうしてこちらの力にも制限掛けてくるとは……いやはや質が悪い」

「腕は大丈夫ですね、最初薙刀が折れたかと思いました」

 そう言いながら、腰に付けていた別の日本刀を取り出し、ジャンヌに渡す。

「折られたら困るこっちが」

 ジャンヌは日本刀で構え、琴は薙刀を再度持ち直した。

 クライヴからすれば分が悪い。

『そうだ、コイツら戦闘狂だ。女のクセして無駄に戦うのが好きで困る』

 手加減なんてしていないのにあちらの方が見切りが上手いのだ。

 風に愛されし者と金属系に愛されし者、力が使えなくても戦いに身を置く者な分、戦法も熟知している。

 一方クライヴは戦い慣れもし、何度も戦争に身を置いた者。

 戦法もある程度理解と方法も分かっていた。

 が、それは群れを成せば戦法は必要だろうが、こちらは単騎、あまり考える必要性も無い。

 寧ろ無双してこその戦いだ。

「ふはははは、面白い、返り討ちにしてやる!」

 急に笑ってそう言った直後に消えた。

 目で追えない。

 一瞬の行動で不利になる。

 音だけで、気配だけで間合いを取るのは不可能。

 この状況でクライヴが琴の頭を蹴たぐろうとした。

 だが、それよりも速く迅速に腕でガードするドゥラを見てほくそ笑む。

「……!」

「来ると思ったぜ!」

 クライヴはそれ見よがしに、ドゥラを捕まえ思い切り振り落とし、隣にいた琴をも巻き込んで投げ飛ばした。

 流石にお互い巻き込まれては体制が整えられず何処かの家を破壊する程の威力で止まる。

 ジャンヌが琴を呼ぶもいつの間にかクライヴが立つ。

「琴!」

「今度はお前だ」

 振り払おうとする手がいきなり背後へと向ける。

 背後にいたのはなんと一、間一髪ですぐに後ろへ滑るように下がった為無事。

 ジャンヌも隙狙って風を鋭利な刃物と変え鎌鼬を放つ。

 こう見えて弱力であってもコントロールに慣れてしまえば、最も力を必要としないのだ。

 しかし、その鎌鼬も軽やかにクライヴは避け切り、ジャンヌをよそに一を追う。

 実はこの中で1番厄介なのは一だ。

 遺伝子に愛されし者、それはDNAさえあれば変身が可能で、万が一誰かに化けられると誰だか判別が付かない。

『コイツだけ先に仕留める!』

『キタキタキタ! 俺を仕留めに来よった!』

 逃げ続けるには足の力と判断力、だが追いかける獅子は常に全力、明らかにこの場で始末し数年は眠って貰おうとまで考えで動いている。

 一も刀を持っている中、1番切り付けたら動けない箇所を瞬時に判断、斬りに掛かった。

 刃が触れる。

 クライヴはその刃を退かそうと動くも、刀は引く動きで本当の強さを見せ付けるのだ。

 血は噴き出すも、これは浅い。

「刀剣はこういうことがあるから好きになれん!」

 一も作戦のせいで思った通りに動きづらくいた。

『ちっ、思ったより動きが速い……! 生け取りする前に自分が死ぬ!』

 そういっそ殺し合った方が分が実はある。

 相打ちで良いのなら、本気で殺しに行けると言うもの。

 ただし今回はあくまでクライヴを生け取りだ。

「何考えている、斎藤一?」

 クライヴが一にだけ問いかけた。

 多分、話の馬が合うだけでの反応だろう。

 生け取りの件は伏せつつ、逆に問う。

「こちとら、同じ矛同士何故お前はそこまで戦う必要あるんかなってな?」

「お前こそ、何故そこまで守る? イビトだぞ、同じ世界同士でも寄生する人間共で苦しんでいる国の1つなのにどうしてイビトを特別視する?」

 今の悩みの種の社会問題にまで発展しているのだから言われても仕方がない。

 だが、今回はそんなのと一緒にしないでほしいとばかりに一は言う。

「しとらん! でも、盾側が保護している分類として見れば責任を負うのは盾じゃ! 盾側が面倒と監視すると言う約束で今回はこっちに着いただけ、お前も良い加減暇だからってニキビ潰すの止めたらどうだ? 跡がつくぜ?」

 流石にイビトをニキビ扱いとはと思うだろうが、過激派の行動はどうもそれに等しいとまで一は思っていた。

 国が対応を間違えればどうなるか、最初から分かっている。

 だが、今回はあくまでイビトが既に住んでいる状態でニキビに例えれば、治りかけに弄り結果跡を残すようなもの。

「話が出来そうと思ったが、そうではないようだな」

 殺意が増したクライヴに対し、一は思った。

『あっ……これ死ぬかも』

 その直後だ。

「ドゥラー‼︎」

 どこからか声がし、下を見れば優紀の姿があった。

 クライヴは一を放置してまずは優紀を黙らせる必要性に駆られる。

 下手に放置すればあのドゥラが動いてしまう。

 さっさと始末した方が得策だ。

 一瞬でケリを付けようと優紀に近づき触ろうとした。

「まずは1人!」

「お前の事だ、まず面倒な奴から殺る、その癖は治らないな」

 優紀から日向の声が――。

 離れる瞬間に、電気が走る。

「しまっ――」

 吹っ飛ぶとかではなく、一切の動きが出来ない。

「微弱で結構、ある程度の強弱がなければ麻痺は出来ないからな」

 徐々に優紀から日向へと姿に変わる。

「日向、大丈夫か?」

 ジャンヌが近付くとともに返事をしながら、痺れて動けない2人の間から雷神が飛び出す。

「あぁ、雷神無事か?」

「酷い目にあった……」

 ようやく再会してホッとする2人だったが、まだ動くのはセッシャーだ。

「くっそ! クライヴ……動けないのかよ!」

「言っただろ? ある程度の電流を体に通せば死にはしないがこうやって動けなくする事が可能なんだ。下手に強めに打てば死んでしまうからな」

 近くに居た光喜は思う。

『最初、100万ボルト流すって言ってたのに』

 あの時の日向なら絶対殺す勢いがあった。

「本来なら殺しても良いと思ったんだがな」

 日向の目が本気で殺意むき出しのままだ。

 よほど雷神を連れ去りこちらを翻弄していたのだから殺意があっても無理はない。

 後は縛り上げ亮に引き渡すだけ、なのだがクライヴは痺れているのに関わらず、いきなり立ち上がって来た。

「ふざけるな、ふざけるな!」

 日向を殴ろうと走り出すクライヴに回りが一斉に捕まえようとした時、日向の横をすり抜け、誰かがクライヴを投げ飛ばしたまま拘束する。

「お疲れ様です皆さん」

「てめぇ! 諸葛か!」

 なんと亮だ。

 セッシャーは自分だけでもこの辺を叩きのめそうと飛び上がるも、デカい何かが自身の後ろを取る。

「諸葛が裏で引いてたのか! どおりで回りが! ――ひっ!」

 とても大きな白い虎がセッシャーの頭を頬張った状態で飛び降りて来た。

「よくやりました白夜、そのまま嚙んでなさい」

「もがががが!」

 セッシャーがもがくも大きさからしてあちらが上、これ以上暴れればもっと苦しくなるのが見て取れる。

「このままばっくりやっちゃえよ」

 先ほどの苦しみを味わってもらいたい以上にさらなる屈辱を味合わせたい雷神に対して亮が宥めた。

「死なないからってそう言わないのですよ雷神」

 一は本当にどこからやって来たのかと思って聞けば、実は最初からずっと見張っていたようだ。

「どっから湧いて来たんあんたは?」

「ずっと最初から、多分若い子達は癖のある子とサポート型のイレギュラー、そして協力者も癖がある子だけなら私ならこちらを狙うのであえてこちらで待機しながら運よく他で捕まれば良かったのですが流石に上手く行きませんね」

 こいつと回りが怒っている中、クライヴが声を荒げる。

「ちょっと待て! 他の連中は全部お前の指示か!」

「当たり前でしょう? 他の見回りして私と目が合ったらあなた一目散で逃げるの見て分かるので」

 ケロッとした顔で亮が言うので、追いついた理美が聞くと意外な言葉が返って来た。

「なんで逃げるの?」

「それは私が無効化、無に愛されし者だからです」

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