見張りの為に
夕食もそこそこに、スーパーのイートイン席でずっといるのも悪目立ちするので、ジャンヌ達が住む家へと向かうことになった。
ただ、先ほどの美空の家よりも遠く、でも行こうと思えば行ける距離にジャンヌ達が住む家ある。
しかもまさかの間にあの宮野家の家があるのだから、意外と近くて世界の狭さが浮き彫りだ。
でも確かに買い物して帰るなら、あそこのスーパーによるのも必然だろうと考えるべきだったと今更ながら反省する。
そんな気持ちでいると、ジャンヌ達が住む家に着く。
「着いたぞ、今の住む我が家だ」
やはりこの辺は高級住宅地、ジャンヌ達が住む家もまた大きい。
「美空ちゃんの家も大きかったけど、ここも大きい」
「理美の家、屋敷だから行ってみるといいぞ、電車乗り継いで2時間位で着く」
冬美也の言っていたが、乗り継いで2時間とはもう田舎ではと突っ込めば、さらに理美の言葉に驚きを通り越して、普通に戻るって行く自分が居た。
「そこ田舎じゃない?」
「黒麟村はここからだと車で4時間位かな?」
「遠いよね?」
ジャンヌはそのまま、自宅を開けるとすぐに驚く。
「ただ、おおぉ! 驚いたぞ!」
「何が? あんたら見つかってどうするんだ、揃いも揃って」
「各自自由にしたら、社長が捕まった」
「どうして、と言うかなんで知ってるの⁉︎」
1番最初に疑うのは勿論、ジャンヌだが、ジャンヌは理美と出会って以降、スマホも触らず尚且つあれ以降の他連絡も取っていない。
「フローレンス、君のアース、セルだろう?」
「セル?」
一瞬で某バトル漫画の敵役を思い出す理美にナイチンゲールが突っ込んだ。
「違うから、コイツだよ、セルは」
見せてくれたのは、ふわっふわの手に乗るつぶらな瞳のアースで、何を見せられているのか分からないフィンと冬美也をさておいての印象はケサランパサランと言ったところだろうか。
「ケサランパサランがいる」
「日本の管理者は皆必ず言いますね」
ただ声は結構男前の声で、理美からするとその声で核心してしまう。
「声は……やっぱりセル」
「止めろ」
リビングにて、ここもまた広く、L時型のソファーに座り、テーブルには色々菓子が置いてある。
「あんた、人が来るって分かると菓子作るクセ止めない?」
ナイチンゲールが言う先にはエプロンを身に付けた日向の姿があった。
「伊達では無く明智だがな」
多分ギャグだろうが、ナイチンゲールが真に受けながら話を進める。
「そんな事誰が言うか、と、それよりもだ。今日から見張りだが、実際分かったのはお前ら尾行に向いて無さ過ぎるだろう」
ジャンヌとしては、もう少し目立つ冬美也や自身ならまだしも、目立たない光喜が見つかったのだ。
「いやいや、ばらけただけで冬美也やボクならまだしも、先に見つかったのは光喜だぞ?」
一度だけ出会ったから会いに来たとも言えるが、冬美也の方が目立つのだからそっちに行きそうな気がする。
菓子コーナーに菓子を買おうとしたら、運悪く見つかったとも言えるが、制服だし高等部の生徒もいた。
本当に何故自分だけと光喜は悩む中、冬美也が1番の謎だった言葉を改めて共有する。
「それに光喜になんで殺さないのって聞いた幼女だ」
フィンも怖がっていたが、ふとどうして管理者について知っているのか疑問になった。
「さっきの話聞いて思ったんだけど、管理者について異世界子供を救う会で話したって事だよね?」
ずっと恵麻と会話をしていた身として、警戒すらしておらず、寧ろ見つけてくれた事、再会出来た事を非常に喜び、なんなら由梨花が他の人に興味を持ってくれた事が嬉しくて涙目な程だ。
だから気になった、どうして由梨花は管理者を知っているのか。
改めてフィンに言われて光喜は気が付いた。
「あっ」
冬美也もそうなると管理者だと分かってしまえば、すぐに逃亡してしまう可能性があると自然と考える。
「じゃあ家族になった親は管理者について話聞いていたら、びびって逃げ出す可能性が……」
ただジャンヌもその辺は無理だろうと判断して言う。
「まぁ、普通の人間や動物、生物が区別つかないだろ? お前だって、アースを見るまで気付かなかったし」
「それに、もし聞かされてたら、返って過保護になって世間的な虐待扱いされててもおかしくないし」
理美にまで言われ、納得しかない。
「って事はもうイビトの子供は皆、聞かされて里親に出されてるって感じ?」
「まぁそうなるわな」
ジャンヌが頷くと共に、光喜はそういえば冬美也が一度異世界に行って色々あった話を思い出す。
「そうか……冬美也も昔に異世界行って、保護されてから今度は襲撃喰らったって言ってたし、誰が管理者か普通の人か区別付かなかったんでしょ?」
きっと冬美也も管理者に対して恐怖しかなかったんだろうと思っていたが、意外と素っ気なさのある返答だった。
「まぁな」
フィンが光喜を見て、冬美也の体質について言い、理美に至っては冬美也が慣れてしまったのではと付け加える。
「コイツ、悪運とか強いから、もうアレだろうな」
「慣れちゃったのかもしれない」
そうかなぁと光喜が口にしてもフィンも理美もそうだよと言い、言いくるめられてしまっている間、日向が疑う目で見ていた。
「……」
『慣れるものなのか? 異世界は知らないがイビトらは一度管理者に殺されかけてからの殆どは人間不信になるのに? いや、自身の世界に帰れたから、この素っ気なさになった? それとも5、6年前の影響か?』
日向がずっと考えていると、ナイチンゲールが言う。
「また何か考えてるな?」
「いや、ちょっとな」
「あんたの悪いクセだ。だから隙を突かれて信用を奪われた。考えるのはとてもいい事だ。だが、瞬時に決断をつけなければ」
「信用の死か、まぁ、あの男は痴呆入っていたからな」
凄く嫌な顔になっている日向にジャンヌは口にはしないが、もう答えが出ていた。
『多分、織田とかかな?』
「今誰が見ているんです?」
「私のアース、雷神だ」
近場ならアースにお願いする方が見えない分、得策だろう。
そういえば、日向が雷神と話した事があると言われ、一体どんな声なのか知りたい。
「あのリス、どんな声で話すだろ?」
光喜の疑問に理美が答えてくれた。
「電気ねずみみたいな声だったよ」
「マジで⁉︎」
「嘘ではないが、それで分かるんだな」
よくそれで分かるなと日向も呆気に取られ、ジャンヌもその流れに乗れば、理美が世界の有名なねずみの一つを言う。
「世界の黄色いねずみだからな」
「古いのは、赤パンねずみなんだけどね」
「ぶっ‼︎」
「冬美也が吹いたぞ!」
何故冬美也が吹くんだとフィンの方が戸惑った。
「いや、吹くだろそれは」
日向からすれば、分かりやすい表現ではある分、実はこっちも吹いているのだが、冬美也はよりにもよって飲んでいる最中に吹いたらしく、ずっと咽せっぱなしだ。
それから更に1時間――……。
ここでずっと過ごす訳にもいかないだろうと、理美は寮に帰すとして、円滑に回す為、一度班を決めようとなった。
「お前達もずっと居ても堪えるだろう? 今日は班を決めて円滑に回そうと思う」
「全員で見張ると気が滅入った状態での戦いだ。あっちの方が人数は1人でもアースも戦える分、2人と考えた方が良い」
日向とナイチンゲールの案で、分かれる事になるが、必ず管理者が入った状態が好ましい。
5人は居るので、日向はほぼ用事が無ければ常時可能、ナイチンゲールは明日から病院勤務なので合間をぬう事になる。
そうなるとジャンヌと光喜が深夜可能だろうかとなった。
理美はと言えば、中等部の寮では誰かが見回りして覗くらしく、その時間は不定期な為連絡無しでも深夜は無理だそうだ。
ただしそれは平日と日曜日の話であり、他の曜日なら可能である。
それを踏まえてジャンヌは言う。
「――とま、理美は動物達に頼んでもらって、理美自身も来て貰えるとありがたいんだが」
「そうだね、動物達なら昼夜問わずいれる子達いるから頼んでみるよ。それと、金土なら仕事入っていても大丈夫」
と言う事で金曜日と土曜日ならと言う話で纏まったと同時に冬美也は思った。
『理美っていつ、休んでるんだろうか?』
本当にいつ休んでいるのか分からない。
「じゃ、話を纏めて行くぞ。平日日中は私日向が務めて、ナイチンゲールは不定期ではあるがアース、セルを常時置いておくとの事で、ジャンヌは深夜セフィラムを、光喜も空いた時間で構わないのでバイトが終わり次第来てくれ、理美は動物達に移動時も通して見てもらい、理美自身金曜日と土曜日深夜に」
纏まったかと言えば透明にはなった。
適当に見えるが、今日みたいなグダグダな状態から大分ある程度絞り、最小限に理美の全ての生物に愛されし者、サポートを最大限に活用する事でより見張れるようになったが、協力者である冬美也とフィンはやや不安がっている。
「オレらは? 無いなら……」
仕方がないから帰るかと思っていたら、日向的に居て欲しいようで、そっちは空いた時にとの事。
「お前達も空いた時間にで良いから」
「成る程、それなら別に良いか」
「まぁ理美と居られるなら」
冬美也の理美と居られるならの言葉に流石にジャンヌは引いた。
「本当に理美好きだなぁお前」
『少し理美ちゃんが言っている意味が変わって来たぞ?』
返ってただのストーカーみたいになって来て光喜も引いてしまう。
「とりあえず、今日はボクらで見るから、君らは帰って貰っても良いぞ」
掛け時計を見ればもう19時過ぎてもうすぐ15分にハリが差し掛かる。
冬美也は理美を送ると立ち上がると、すかさず光喜とフィンも行こうと立ち上がった。
「確かにもう19時過ぎてるし、理美を送る」
「俺も行く」
「それなら俺も、ものっ凄く心配、お前が」
「なんでオレ⁉︎」
フィンの言い方に何故自分と驚く冬美也だが、なんとなく昨日教えた事を2人きりの時に問いだ出せばきっとギグシャクになるのは目に見えて分かるからだ。
だからここはこっちで守るしかない。
でも理美はあえて2人きりで話したいと思って、断った。
「大丈夫だよ、私も冬美也と2人きりで一度話したかったし」
それを聞いた冬美也は、すぐに光喜達から聞かされた内容を思い出し、聞くのが怖かったのだろう。
「……やっぱり付いて来て」
先程とは違う戸惑いようだ。
この違いようには突っ込み所しかない。
「なんでだよ!」
「ガラス過ぎるだろ!」
ナイチンゲールはそんな事より、理美に動物達にお願いしに行ってほしいのだがと突っ込んだ。
「それより、動物達に話振って欲しいんだけど」
結局、帰りは光喜達も同行と送る事となった。
理美はと言えば、近場にいた野良猫やネズミ、まだ眠っていない鳥達に話しかけては了承を貰って、見張りの準備に入っている中、光喜も何か出来ないのかとニュートンに振れば何も無いと答えられてしまう。
「ねぇ俺達も――」
「何も無い、おれらは能力、あっちはサポート、罠を仕掛けられるのもサポートだけだ」
サポートならではと言うべきか、こっちウェポンだから先頭に立って戦うので、一長一短と呼ぶべきか。
光喜はそういえばアダムが何の愛されし者だったかと思い出そうとしたら、理美が先に教えてくれた。
「アダム理事長って確か……」
「幻覚に愛されし者だよ」
「ありがとう、教えてくれて、と言うか理美ちゃんはアダム理事長とはいつ?」
「拾ってくれた、山の中に野生化した私を」
「お、おう、まさかの話に」
あの時の続きになるなんて思いもしなかった。
ふと冬美也達を見れば、あちらも今更気が付いたとばかりの顔だ。
「……そういえば、オレら理美がどうやって来たのか知らなかったな」
「うん、俺も知らない」
本当に知らなかった。
「あれ? 冬美也は知ってたと思ってた」
「拾われた話したか?」
ふと、色々思い出そうとするも色々あったなぁと感じるも話したかと入れば無いに等しい。
「うーむ、あまり覚えてない」
「おいおい」
冬美也もなんとも言えない表情となる。
理美はアダムに拾われ、冬美也達は理美に拾われる構図が出来た所で改めて聞くがやはり答えてくれませんでした。
「そうなると、なんで冬美也達も山の中に居たんだよ」
「企業秘密で」
理美のアースが急に現れ、ある民家の屋根に誰かがいた気配を感じ、その先を見る。
「おーおー頑張るのは良いけど、オメェらはあたしらには敵わないよ?」
セッシャーの姿があった。