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スーパー

 結局1時間は居ただろうか。

 未だに連絡も来ず、もう宿題も終わってしまい、これからどうしようかと考えていた時だ。

「ただいまーっと」

「あれ? お父さんお帰り、早かったねぇ」

「いや、これから残った仕事を家で済ますのと8時過ぎにはお得意様とのオンラインでの会話だからゲーム控えて――……おー久々に見たメンツに初めての子も居る」

「こんにちは」

「お邪魔してます」

「は、初めまして如月光喜です」

「初めまして、美空の父の才斗です」

 あまりに気さくな男性で、瞳の色は理美と同じだ。

 ここで冬美也が白い目で言う。

「オレの親父に隠し子疑惑ふっかけられたって本当?」

 美空からすればいつものメンツ、笑いながらそういえばそうだもんねと軽く流し、似てて当然だろうと納得している。

「あー似てたもんねお父さんと理美ちゃん」

 こっちはこっちで白い目で反応も笑ってすらいない。

「おばちゃんびっくりだよ」

「ちなみに怒りマックスであのデカい才斗さんを背負い投げを成功させたんだよ、理美ちゃん」

 フィンの一言で無敗王が理美に負けるって、油断していたとしてもそれは無理だろう男性を背負い投げすると言う次元自体おかし過ぎてツッコミ意外何をすれば良いんだろうか。

「次元がおかしい」

 ただ、理美からすれば怨みがあるらしく相当殺意がおかしい。

 殺気はダダ漏れ、それどころかアースではなく、熊が理美の背後に立っている。

「覚えてたくせに何言ってんだよ」

 絶対ぶっ殺すと言う決意が見えた。

『怖い‼︎』

 光喜が怖がっているのを美空が気付き話す。

「いつもの会話だから気にしなくて良いですよ」

「いや、気にして!」

 こんな状況でどうすれば良いんだ。

「それじゃ、仕事するから騒ぎ過ぎるなよー」

「はーい」

 そうして才斗は自室へと籠る。

 じっと理美が見て、パソコンのキーの音が聞こえたあたりで、美空にある事を聞く。

「行ったか、美空、あの辺に住んでいる由梨花ちゃんって知ってる?」

「知ってるよ、宮野由梨花ちゃんだよね?」

 なんと知っていた。

「おぉ、知ってた」

 光喜も知っていたのに驚く。

 渡された書類も合っている。

 美空は由梨花の話をしてくれた。

「あの子、理美ちゃんと一緒で養子なんだよ。数年前に前の実子が病気だっけかで亡くして、奥さんも子宮の病気で摘出しちゃったもんだから、相当まいちゃってたらしいんだけど、なんかどこかの慈善団体の人がその夫婦の話を聞いて、数か月後にその実子の子と瓜二つな子をその団体の人が連れて来て、そのまま養子にしたんだって」

 想像以上に理由が重い。

 冬美也もあの時見たのを思い出すも、頭がまたパンクしそうですぐに止め、ただの感想を述べるしかなかった。

「意外と重かった……」

 光喜はある事を思い出す。

 墓参りの時、聞こえて来た言葉、そうあの夫婦は由梨花にこう言っていた。

「……お姉ちゃん、そうかだから墓参りに」

 瓜二つだから迎えられても、しっかり別として認識してくれていたんだ。

 だけどやはりあの慈善団体、異世界子供を救う会ではなければ……。

 いや、それはどうでもいい、由梨花はまるで自分が居ていい存在だと思っていない。

 そして同時に管理者について理解した行動もある。

 彼女はあの子は、まだ家族に成れていないのだ。

「社長、何か思う節あるみたいじゃん」

「あっそれは――」

 言いかけた時、スマホが鳴った。

 見てみればジャンヌからのloinだ。

 てっきりナイチンゲールと思っていた。


 ジャンヌ

[すまん、こっちでは宮野由梨花の母親が保育園にいる由梨花の迎えに来たからそのまま家に帰るまでボクが尾行及び護衛をする。まっ、バレても日向の名を出しときゃなんとかなる]

 光喜

[あれ? 部活は?]

 ジャンヌ

[一応、顔出した後にすぐな、あの夫婦は共働きだから今行ったところで帰って来ない]

 光喜

[あー……]

 ジャンヌ

[ボクはそのまま尾行を続けて帰ってくる頃にまた連絡を入れる、どうせ理美達もいるんだろ?]

 光喜

[はい、冬美也もフィンも、ついでに今ナイチンゲールは多分日向さん所との事で]

 ジャンヌ

[よし、合流したら一旦日向も呼ぶか、その時にナイチンゲールも来るだろし]

 光喜

[ではまた後で]

 ジャンヌ

[うむ、また]


「誰からだ?」

 冬美也に聞かれ、すぐに伝える。

「ジャンヌ先輩だよ、あっちはあっちで由梨花ちゃんのいる保育園知ってたのか、保育園を見張って母親が迎えに来たのを見計らってそのまま尾行中、帰るまで連絡待ち」

「なるほど、そっちの手があれば、皆無理に集まらんでも良かったのでは?」

 冬美也が無駄に皆集まっては返ってアレだ。

 悪目立ちして、近所迷惑になって由梨花の両親も警戒してしまう。

 光喜も理解した上で、これしか出ない。

「……あー」

 フィンも時間を確認しつつ、美空の家に居座るのも失礼だろうと、出るのを進めていく。

「そろそろおいとましますかね?」

「確かに、出て良い頃合いだしね」

 理美も時間を見て、そろそろ出ようと言うと、美空がある事を言う。

「また来てよ、今度は裏屋根事件を詳しく話すんで、特にお父さんが投げられた原因要因を!」

 何故かめちゃくちゃ明るく言って来て、皆少々引いた。

「それは止めよう……」

 こうして美空の家を後にする。

 

 外に出て数分、フィンの本音が出た。

「どこかで腹ごしらえしよーぜ? 流石にほれ、美空ちゃん家でご飯まで頂いちゃうのはね?」

 光喜も始めて行った人の家でご飯までと考えると確かにと納得した上で、ある場所を指定する。

「なら、スーパーに寄ろう」

 連絡を待つ為に、確か少し外れた所にスーパーがあった筈だ。

 そこでとりあえず今日の晩御飯を買って軽く済ませる事にした。

 歩いて住宅地を出て大通り付近まで出て、近くにどこにでもあるスーパーマーケットを見つけ、ここだと指をさす。

 いつも行っている店よりも広めで、イートイン席もある。

 ここなら皆と夕食を食べてからでもそう遅くはないだろう。

 冬美也が色々あるので、一度ばらけても良いだろうと考え、皆に言いつつ中等部の理美にもどうするか尋ねる。

「とりあえず、皆好き勝手に買って合流で、理美はどうする?」

「今日は食べてからって言っているからここで食べてく」

「そっか、んじゃイートイン席集合な」

「おー」

 多分、10分から15分位として考えての自由行動だ。

 手軽な量を考え光喜はおにぎり等手で食べれるものを決め、序でに飲み物と菓子も見て行こうと、菓子コーナーをうろついていると、急に足を引っ張るのでなんだと思って振り向けば、まさかの由梨花に驚いた。

「――!!」

 流石に店では声を出すのはと思ってなんとか止めると、由梨花の母も居て、さらに驚く。

「あら? あの時の?」

「す、すいません! ほら、お母さんが心配しちゃうよ?」

 そう言って促すも由梨花が引っ付いて離れない。

 丁度冬美也がやって来た。

 あっちからすれば、どんな物を買う予定かとか聞く予定で探しに来てくれたようだが、流石に由梨花本人に拘束された光喜がいれば、なんと言えば良いだろうかと悩み、とりあえず今の状況の感想だけ口にする。

「光喜、なんか……おぉ、めっちゃ懐かれてる」

 由梨花の母は冬美也の事も覚えていた。

「あっ銀髪の子も、この辺に住んでいるんですか?」

「いや、近くに住んでいる友人から帰る途中で腹ごしらえでスーパーによったんです」

 冬美也の言動には一切偽りもなく、事実に驚き感心するばかりだ。

『上手い! 嘘もない!』

 丁度そこへ、フィンも来た。

「おまいらは何選んだぁ? ……わぉ」

 

 そこから買い物しながら会話が弾む。

「――へぇ、あそこの学院の子達なんですね」

 由梨花の母の会話相手は無論フィンだ。

「そうなんですよ、俺達、高等部で今日は後輩ちゃんとも一緒に――って居た! ジャンヌと一緒に」

 フィンの叫ぶ方を見れば、もう会計に並ぶ理美とジャンヌがいた。

 ジャンヌは軽く注意する中、理美はある事に気付く。

「いや、そう叫ぶな店だぞ?」

「と言うか、如月先輩は子供に好かれやすいですね」

 ずっと引っ付いて離れない由梨花にもう乾いた笑いしか出ない。

「あはははは、なんか離れなくなった」

 これも何かの縁と由梨花の母が自己紹介をした。

「先日お世話になった宮野恵麻(えま)です。この子が由梨花です」

 理美も返しながら光喜の手柄として推すも、光喜はスタッフを呼んだのはそっちと返す。

「嘉村理美です。でも私はたまたま如月先輩と一緒に居たから気付いただけですから、先輩のお陰ですよ。ねっ先輩?」

「スタッフ呼びに行ってくれたでしょうが」

 こうなると尾行も出来ないと、ジャンヌは判断して軽く食べ帰る案を出す。

「ご飯食べたら、帰るか?」

 光喜も賛同するが、由梨花は光喜から離れずだ。

「そうだね、イートイン席で食べて帰ろう」

「やだ、一緒がいい」

 流石に変な声が出た。

「ふぇえ?」

 フィンに揶揄われ、皆もつい笑う。

「やだ、幼女からのお誘いよ?」

「言い方!」

 結局どうなったかと言えば、恵麻に諭されつつ凄くぶうたれた顔で由梨花が納得してくれた。

「――また今度にしようね」

「……ぅん」

 光喜がしゃがんで話し掛けるとやはり服を引っ張って一緒に居たいと言いたげだ。

「今度会えたらね?」

 仕方なく引っ張るのをやめ、手を振りながら恵麻と共にスーパーを出て行った。

「……バイバイ」

「バイバイ」

 見えなくなり、イートイン席で反省会となったのは必然だ。

「お前は顔見知りだって事をすっかり忘れていたが、スーパーには?」

「軽い軽食のつもりで」

「で、お前見られて捕まってしまったと」

「そうです」

「でもあの頃とは違うよね?」

 不意に理美がアースに話しかけていた。

「そうね、確かこう言っていたのでしょ? なんで殺さないの? って言葉」

 アースの言葉に光喜は思い出し、由梨花が引っ付いた理由がそれだとしたらと、悪寒が走る。

「あっ……殺されたくてくっ付いてたのか」

 フィンすら顔色を悪くした。

「ゾッとするわ、それ」

 初めて会って、くっついて離れないし、あまり表情も出ていないが、かなり光喜に懐いているようにしか見えないからだ。

 でも、よくよく考えればあまり表情出していない時点で気付くべきだったと、皆各々確かにそうかもとなり始めた時、あの時以来のセフィラムが出て来た。

「様子からして、一応、懐いている」

「独り言を延々とした男なのにか?」

「ニュートン!」

 ついつい、ニュートンに突っ込む光喜に対し、理美は言う。

「アース同士の会話は聞き耳立てる位で、突っ込むなら名前を言わない、これ基本」

「ゔっ」

「と言うか、そういえば理美って独り言ってあまりしていないな?」

「ジャンヌ先輩もだし、きっと慣れだよねこれ?」

「良いか、光喜、ボクからのアドバイスだ」

 この時のジャンヌはとても真剣な眼差しに自然と気が引き締まる。

「はい」

「あまりそれやり過ぎると、皆にドン引きされて、最終的に裏切られ火炙りになるから気を付けろ」

 回りを気にせず見えないモノと会話するとどうなるか、時代によっては死ぬ意味を教えていただいた結果、半泣きにさせてしまうし、食いかけのおにぎりすら落とす結果と生み出してしまう。

「ひぃぃぃ!!」

 理美も知っている、有名な逸話だ。

「ジャンヌダルクの最後の末路」

 当の本人は笑って、死ぬ前に生きて生還したことを教えてくれた。

「まぁ最終的にアダム達に助けてもらったから、実際焼かれとらんから安心しろ」

「手品のはとぽっぽ?」

 そういえば、ジャンヌダルクが焼かれた時、そこから鳩が飛び出したと言う逸話もある。

 でも流石に言い方には冬美也が理美に突っ込んだ。

「……おい!」

「でも場所分かれば、アースだけで見張らせる方法もあるが、そうなると能力が薄れる場合もあるし、なんならクライヴが出ても、別の場所からその場に瞬間移動なんて無理だ」

「薄れるの能力?」

「うーむ、最大値から8割弱程度か?」

 悩むジャンヌに対し、さらっとセフィラムが話に入る。

「そこまで気にしなくて良い、我らは宿主或いは契りを交わした者の為に力を渡す。けれど、渡す距離によっては不利にもなり得るし、逆に距離が遠くても己の力さえあば気にする必要も無い」

「でも、力が強過ぎてコントロールがお互い上手く行かない時はわざと距離感開けてあげるだけでも大分感覚掴めて来るから、良いって事もあるしね」

 理美も付け足して教えてくれたので、愛されし者の力の強弱はアースでも難しいのかと改めて感じると共に、そういえば見せていなかったものをここで思い出す。

「ふーん……そうだ、冬美也の写真見る?」

 この瞬間、光喜が何を言っているのか、冬美也もフィンも一瞬で理解した。

「……はっ? 何故今?」

「あの有名漫画家が書いた顔の?」

 すぐに見せないよう妨害するも、理美が真顔で見たいと申し出た。

「見せるな! ただの公開処刑じゃねぇか!」

「見たい、今すぐ見せろ!」

 光喜もノリノリで画像を探し出す。

「おけー」

「やめろぉぉぉぉ!」

 丁度、そこから誰かの連絡が入る。

「あっ、ナイチンゲールからだ」

「地雷系お局?」

「またそういう……」

 loinからでは無くメールからだ。

 内容は至ってシンプルで、由梨花と母親恵麻が家に戻ったとの事。

 自分達はこれからどうするかと考えた。

 

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