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作戦会議

 この世界の管理者が何人も居るほんの一握りが集まった。

 光喜は坂本に聞く。

「クライヴの件で?」

「それもある、けども、異世界子供を救う会の撲滅に――」

 途中で今回の議題を一が話す。

「最近の穏喜志堂の動き、今回はこの2つだ」

 狭間のバーの件で、数ヶ月の間に何回もあったので良くやるものだと思っていた。

「いつもやってるんですね」

 しかしそうではなく、一ですらここまで集会をしていないのだ。

「普段は数年に1回会えば良い方、今回は異世界子供を救う会連中の件のせいでクライヴが動き回っている、尋問したいがアイツ結局逃げよって」

 (りょう)はクライヴを殺さずに捕まえる事を念頭に置く。

「今回は生け取りメインで殺すなよ、前回は番人がやってしまった。だから見付けられなかったが、今は違う、わざわざ君に会いに来てくれたんだ。それに今回はイビトの子供達を皆それぞれ見張る」

「見張る? えっでも、さっき……」

 生け取りの為にイビトの子供達を見張るとはこれ如何に。

「全員がアイツを見張るのは少々不可能では?」

「力に愛されし者、クライヴはこう見えて念入りの調査をしているし、順々に回っている。なので、少しでも多くの管理者と協力者を配置する」

「なんか、普通過ぎて孔明ってこんなのだっけ?」

 そう、光喜のイメージとはだいぶかけ離れていた。

 なんと言えば分かるだろうか、まず髭……は無く、言葉使いも敬語のイメージがあったものの気さくだ。

 理美もイメージはあったので口にするも目の前の孔明もとい亮には微塵も感じられない。

「さぁ、あんまり罠を過ぎて、何もないのに疑心暗鬼を起こさせたってのもあるし、映画だと敵を騙して足りなかった矢を入手したなんてのもあるけど」

 勿論一もその1人だ。

 ただ、やはり罠やら策やらあるのは本当らしく、この話し方だと一度やられているようにしか見えない。

「分かるぞ、こいつどこで俺らを嵌めようか考えてる時あるから」

「管理者は一枚岩じゃないってのは分かりました。と言うか矛と盾の概念を振り払ってでもクライヴを生け捕りにしたいのは?」

 一は生け捕りの件を知っており、なんの為その後に使うのかも話す。

「純粋に穏喜志堂への武力行使、最近動きが見えない分煽る気だ」

「げっ、その為の駒」

「ならんだろうがなるしかない。亮に捕まればな、自分も一度やられてアイツらの(てい)のいい駒になったからなおさらな」

 耳にした亮はすかさず話に割って入る。

「そうはしてないだろ? 君の遺伝子、DNAに愛されし者は非常に役に立ったじゃないか。特に戦後でごたついている状態で――」

 が、これ以上話されたらたまったものではないので、一は何故かユダを巻き込んで怒り出す。

「あーあー!! これ以上話すな! ユダあんたもや! こっちは作戦で動いとったのになんでばれたかと思えばぁぁぁ」

 理美も光喜もこれは放っておけば話すと黙っていると、黙ったまま勝手に混ざる亮の姿もあった。

『自分から話してる』

『このまま放置したらもっと聞けそう』

『そう思ってるからこっちも黙っておこう』

「そこ、混ざるな! あんたも話さない!」

 流石に坂本が止めると、3人揃って軽く舌打ちが入る。

 ユダが更に作戦の事で伝えた。

「お前ら新人もその作戦に入るんだ。誰が付くかをお前達はコレだ」

 紙1枚を渡され、なんだと目を通すとそこにいたのはあの時の子だ。

「迷子になってた子だよね?」

「そうだ、ニュートン辺りから情報だ」

 光喜が後ろを見れば、ニュートンが既におり、何故か目を合わせようとしない。

「またか……」

 理美は良く知っているらしく、自身のアースも含めて勝手に行くようで、軽くアースを見る目もアースが合わせようとしないので、光喜も驚いた。

「たまにいるよね、勝手にどっか行っちゃう子」

「勝手に行くの⁉︎」

「うん、どこかに行っちゃう子いるよアースって意外と範囲広いから」

 周りを見ればあるあると何度も頷く為に下手すればこちら側の知らない情報を持っていたり、逆もあるかと言えば勝手に情報共有なんてざらだと考えれば最悪だ。

「なるほど、だからか……じゃない! ニュートンが俺の知らない所でユダ達と会話していた可能性もあるって事じゃん‼︎」

 ニュートンは一切悪びれない。

「普通、普通、契り交わせたら動きたくなるのは性だよなぁ」

 やった張本人のユダが促すのをすかさず坂本は突っ込んだ。

「お前は少し反省しろ」

「いやあんたもよ」

 光喜はなんとなく言ってしまう。

「この子達をイビトとして殺しますか?」

「何故?」

 ちゃんと頭で分かっているのにどうして、また何度も頭を巡らせてしまうのか。

「皆、好奇心や彷徨って来た人とかじゃない、意図して連れて来られた子供達を管理者として殺めるのが至極当然なのかなと、日向さんやジャンヌ先輩だって矛だ。確かに俺も末端を見ているし、こちらの世界を襲わないとは限らない。でも分からないんです」

「分からない?」

「いえ、分かってるんだけど分からないと言うか、最近境が無いと言うか」

 亮は光喜が何か言いたいのか分かっているようだが、光喜としてはどう伝えればいいか分からない。

「現在はね、でも本来は世界が決める事で、優しさか或いはそういうのが好きか分からないが忘却する。でもね、逆にそのまま放置されれば分かるだろ?」

「はい、ここの世界の住人が被害被るのを下手すればウィルスによる汚染、文化破壊、ただ今回のは」

「うん皆分かっているし、それを上手く抜け道を作ったそいつらには完敗だ。だけども今後はさせない。ただ来てしまいもう家族として暮らしている以上は、ね」

 今回は異世界子供を救う会に完敗し、ここで家族として暮らしている子達には手を出すことは無いと含むような言葉だが、どういう訳か理美を見る。

「なんでこっち向くの?」

「理美もイレギュラーだからだろう?」

 一からすれば確かにイレギュラーだが、なんで見てるんだろうとは思っていた。

 ふと、光喜がある事に気が付いた。

「とういうか、アダム理事長いないんですね? てっきり来るかと」

 そうアダムがいないのだ。

 アダムも管理者で日本に居るのだから来ていてもおかしくはないのにどこにもいない。

 丁度その時、ジルが別の管理者達をかき分けやって来た。

「おーう、久しぶりアンドそりゃユダとアダムは仲悪いからー」

「ちなみにニックネーム白い黒人ってのはジルの事です」

 理美から割とどうでもいいニックネームを聞き、分かりやすいと言うべきだろうがそういう情報が欲しいわけではないのだ。

「分かりやすい、じゃなくてなんでそんな」

「同じ信者で裏切ってるんだからそりゃ嫌いだろう?」

「……あっ」

 ここで漸く気が付いた。

 そして同時に意外と近しい者同士であると言う事にもだ。

 あまり干渉されても面白くもないユダは、話を戻して今後の子供達の対応を話しながらどういう訳か亮を見る。

「そこ納得するな、話を戻すぞ。今回もう住んじまったガキ共は今後監視状態で見守る事、どっかの誰かがほったらかしたままにする事は今後ない!」

「なんで俺を見るんです、ユダ?」

「ほったらかさなければ、あんな事にはならんだろうが」

 なんかこのやり取りを見ていると、扇子もうちわもないのに亮が持って顔を隠す幻覚が見えてしまう。

「ふむ、何のことやら」

「で、イビトのガキ共の対応はこれで満足だろ坊主」

「は、はい」

「回りくどく聞くな、こう見えて全員何度も再生した連中だ。そんなことでへそは曲げん」

 最初と2回目の時と違い、感情がこもっていてなんか意外だと光喜が思っていると、亮はそっと教えてくれた。

「こう見えて、ずっとごねてたのあの人なんですよ、一部はクライヴと同じ過激派に近しい存在だ。皆殺すのも辞さないだろうでもね、争っても良い事もないし、今回は無駄な血を流すのは止めて監視に落ち着きました」

「うるせぇ! 次だ次!」

 亮にバラされユダの声が一段と上がる中、光喜は疑問に感じる。

『なんで裏切ったんだろこの人?』

 それを見たジルと亮も声は出さぬがこんな風に思っていた。

『本当なんで裏切っちゃったんだろなぁ』

『中身甘ちゃんなのに』

「おい、お前ら顔に出てるんだぞ」

 ますます怒らせてしまうも、別に光喜にではなくあくまで大人連中だけだ。

「それで、穏喜志堂を潰す為にクライヴを使うんでしょ?」

「そうそう、異世界子供を救う会は矛の方々に任せます。俺は盾側なので」

 坂本は亮が矛でないのに驚いただろうと意気揚々と近付くも、先程の異世界子供を救う会の撲滅、穏喜志堂についての調査も両方しないといけないと嘆く。

「意外でしょう、私は矛側だけどクライヴ捕まえた辺りでそっち方面と穏喜志堂も含めて調査しないと」

 その辺りで、理美はじっと光喜を見て聞いた。

「……気にならない?」

「もう、言わなくてももう察して来たから良い」

「そっか」

 もう言わなくても分かっちゃったんだと優しく微笑む理美が少々怖い。

「そんな優しい顔しないで! ちょっと怖いよ」

 あらかた話したとして、亮は前に聞いた話をこちらに振ってきた。

「ところで、穏喜志堂は陰鬼(おんき)士道(しどう)であってますよね?」

「そうだけど、前に聞いた話ですけど」

「最近穏喜志堂の動きが見えず、調査したり捜査したりしてもあいつ等は動きを掴ませない、ならクライヴを使って煽るのではなく実際に藪をつついて蛇を出す」

 それは宣戦布告だ。

「亮、本気で言ってるん? もしちゃんと蛇出なかったらどうする気や? それにこれ下手すると煽ると言うより」

 一の言いたいことを坂本が汲んで言う。

「あぁ、アイツはやると言ったら本気で殺す気でやるよ」

 光喜は一と坂本に尋ねていた筈が、いつの間にか亮が話す。

「本拠地も分からないのにやるってことです?」

「勿論、それに対してもちゃんと考えております、まずこの集会が終わった後各自で陰鬼士道と対応出来る協力者に要請を、そしてジル」

 協力者もかと思っていたら、どういう訳かジルに白羽の矢が立つ。

「なんだよ?」

「お前は第一陣で藪をつついてもらいます。とりあえず支部を手当たり次第に、幹部の1人を殺めても構わないこちらも本気だと分からせる」

「はぁ!? なんで俺‼︎ そもそもここの日本に来たのだって――」

 そうジルはそもそも海外でも穏喜志堂の不穏な動きと暴動の真の狙いを突き止める為にやって来たのだが、それ自体がそもそもできなかったのを亮に突っつかれてしまい言いなりになるしかなかった。

「日本とFBIは捜査協力していないんですよ? むしろ禁止されていると思いますが? 本来それがばれれば逮捕されてもおかしくはない、坂本君と一君がいるから今まで無事だっけですけども?」

「あー分かったよ、どこつつくんだよ?」

 どちらにせよ、下手に本拠地だった場合対応出来ないので今回はやはりクライヴを生け捕りがメインとなる。

「いきなり蛇が出ても対処できないので、今回はクライヴを捕まえる事を念頭に置いての仕事となります。なので、君達はこの子を守ってもらいますよ。俺も君らなら接触してお話とか出来ると思います」

「分かりました」

 光喜達も納得した上で後は任せて各々で誰が見るかに入る中、ジルは先の内容をアダムに連絡しようとスマホを取り出す。

「アダムには連絡しておくぞ」

「お願いしますね、後ユダが居た事は」

「分かってる分かってる。言わねぇよこえぇもん」

 本当に仲が悪いのはよく分かる。

 

 一通りの守る対象とその日程を決め後は帰ると言う時、いきなりナイチンゲールに声を掛けられた。

「じゃ帰るか」

「ちょい待ち、一度話がしたいと思って来たんだ。理美もだけどあんた、光喜あんたとも話したいから琴の車で帰るよ」

 琴もどこかに居たのかと思って探せば、気が付けば車に乗って待っていたのだ。

「あれまいつの間に」

「でも俺達ほら、日向さん達の車で」

「大丈夫だろ?」

 ナイチンゲールの目力により圧倒される一と日向は普通に了承してしまう。

「お、おぅまぁ良いけども琴が運ぶなら」

『相変わらず圧が凄すぎて辛い』

「慣れない相手と乗るのも何だろう。ボクも乗れば少しは良いだろう? 琴もいるんだし」

「ありがとう」

 どうするかと思ったが、ジャンヌが心配だからとついて来てくれる事となり、こうして帰り道は別の車へと乗る事となった。


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