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行きのドライブ

 ただいま現在、フィンは冬美也による絞め技を受けながら全てを白状する。

「――と言う訳で、ラリアットをかましました……!」

 今いるのは冬美也とフィンの部屋のリビングで、あまりのアホ臭さに優紀はヘッドホンを付けゲーム中だ。

 勿論、全てを知っている光喜も一緒だ。

 そして光喜はただただフィンに言いたくて突っ込む。

「いや、だからってかまさなくても!」

 漸くフィンは解放されるも、冬美也の様子がおかしい。

「ほ、本当に理美が、理美が言ったのか⁉︎」

 どうやら例の話を聞き、思いの外動揺が隠しきれていなかった。

 それを見ている2人はどう言えば良いのか分からない。

『凄い! バイブのように震えてらっしゃる!』

『自分にも非があるとは言え、これは動揺するわな』

 優紀が急に兄が凄い動揺しているのを見て、何が起きたのかを聞いてきた。

「ねぇなんで兄ちゃん今バイブル状態なの?」

 本当になんて言えば答えになるのか分からず、つい曖昧な事を述べる。

「あぁ、ちょっとねぇ色々あるんだよ」

「青春ってやつだよ」

 胡散臭いだろうが、なんとなく彼女の件だろうと察してくれた優紀は凄く嫌な顔になって言う。

「えぇ……そんな青春嫌なんだけど」

「ですよねー」

 こうなるととても面倒なのは長年の付き合いで分かっているフィンはあることを思いつく。

「そうだ、あれはデマであること証明する為に、冬美也、いっぺん理美が自分にしか見せない笑顔を想像してみろ」

 光喜が言った意味の分からないあれの証明だ。

 どうせ、思い付きで言ったのだろうとフィンは思っての事で、証明すれば大丈夫と思っていた。

 いきなり言われた冬美也は意味が分からず嫌な顔。

「想像? またなんでだよ?」

「良いから!」

 とても真剣なフィンに押され、渋々想像する冬美也の顔は先ほどの嫌な顔から徐々に顔が崩れていくのが見えた。

 それを見ていた優紀含め、うわっとなり、光喜は徐に何故か写真を撮る。

「ほらぁ! だろ! 下の鼻伸びるって!」

 あまりの表情にフィンも驚き、それ以上に想像とは違う何かになっていたのは言わざるを得ない。

「いや、伸びたけど! 伸びたけども、なんか水木し〇る先生の絵に出てくるような顔だったぞ!」

「ちょっと兄ちゃんいじんの止めてよ! 傷ついてるじゃん!」

 ある意味弟、優紀から止めを刺されて、今度は落ち込んでしまう。

「もうやだぁぁ、理美になんて言えば良いんだぁぁ、最近光喜の方が理美と仲いい気がして凄く嫌だぁぁぁ」

 本音ダダ洩れの状況でも光喜は慰めるも、正直慰めになっていないように見えた。

「気のせいだよ」

 光喜はフィンを見て心で会話する。

『まあ、フレアさんの事を気に入っているっぽいけど』

『言うな、絶対言うな』

 その状況を眺めながら優紀は思う。

『なんか兄ちゃん、蚊帳の外で声の無い会話が成立している』

 冬美也は光喜に先ほどの写真をどうするのか聞けば、理美に見せるとの事だ。

「ところでさっきの写真は?」

「あぁ、後ほど理美ちゃんに見せます、聞いてもどうせはぐらかすだろうし」

「やめろ!」

 冬美也が光喜のスマホを取り上げようとした時、いきなり電話が鳴り驚いた。

「うぉう!!」

 当人が驚きスマホを落とす。

 フィンが代わりに拾い、確認すると意外な人物からだ。

「おーい、一ちゃんからだわ」

 管理者としての電話なのはよく分かるので、あえてもう帰る事にした。

「こんな時に? まぁ、もうそろそろ帰る気でいたから、帰るわ」

 冬美也は再度消すよう要求するも、そもそもそんなの気にしない他は光喜に挨拶する。

「待て、写真消してけ!」

「じゃ、またねぇ」

「ん、また!」

 もう一度冬美也は言うが、そのまま光喜は去っていった。

「いや、写真!」

「おやすみー」

 すぐに外に出ると、電話がもう鳴り止んでしまったが、部屋で掛け直せば良いかと思って振り向いた時だ。

「よぉ、バー以来だなぁ」

 普通に一が立っていたので驚きに驚いて意味不明な叫びとなった。

「うぉぉぉぉあっ!!」

「凄いおもろい叫び方するなぁ、他に聞こえるぞ?」

 一からすれば雄叫びに聞こえた様だ。

 しかし、居るなら居るで部屋に居なければ、冬美也達の部屋にでも来れば会えたのに。

「いやいや、電話掛け直す気だったんですが? それとも冬美也達いる?」

 とりあえず、話が逸れそうなので掛け直す気でいた事と、やはり冬美也達もと思っていたが、優紀を1人にさせてしまう可能性と連れて行くリスクを考えれば光喜だけ最初から呼ぶつもりの電話だった。

「いらんいらん、弟巻き込ませちゃまずいでしょうよ」

「なるほど……で部屋来ます?」

「いや、管理者同士での話をしたくてね」

 そう言って、下にスマホを照らしながら振れば合図のように照り返す。

 こんな夜、街灯が有っても暗がりの中にいれば何も見えない。

「誰?」

 一は光喜の軽く頭を叩き、すぐにエレベーターへと向かう。

「会えばすぐ分かる」

 なんとなく怖いので行かない選択をしようとするも、すぐにloinで連絡が入る。

「一さんから、大丈夫だから! って信用して良いのかなぁ……」

 スマホを持ったままちょいちょいと来るよう促す一を見て、渋々エレベーターから降りることにした。

 マンションの外へ出ると、ワゴン車が止まっており、扉が開くとジャンヌと理美も乗っているのを見て、なんかホッとする。

「おっ来た、さあ乗れ」

 ジャンヌに乗るよう言われたが、ふと坂本が運転下手と言うのを理美に聞かされ少々怖い。

「うん、分かったけど、坂本さん運転じゃないよね?」

 後ろの席から坂本が顔を出しながら問う。

「誰! 私が運転危険って言ったの!」

 一瞬にして理美の目は明後日の方向へ。

 それどころか、ジャンヌも別方向に目を向けてしまう程、光喜はこれだけで分かる。

『やっぱり危険なんじゃないか』


 運転手はやはり日向で、助手席には一だ。

 暫く走っているが、一体どこへ向かっているのだろうか。

「一体どこへ?」

 理美もいきなり呼ばれたらしく、本当に分かってはいないが、話としては他の管理者との顔合わせだそうだ。

「分からないけど、最近色々ゴタゴタが多いから一度顔見知りに会わせるって言う話になって、日本にいる管理者の」

 日向がバックミラーから後ろを覗きながらクライヴの件も含めてだった。

「それとクライブがまたやらかした件だ。これから向かう最中に1度軽く見てから集合場所に向かう」

 何処かの住宅地、その1つの家の前で警察沙汰が起きているのに気付く。

「こ、こですか?」

 もう野次馬も集まっての騒ぎ、下手に車を止める事も出来るわけもなく、ただ通り過ぎる。

 一は助手席でそれを眺めなら伝えた。

「あぁ、そこ、でも見ないぞ、既に行った時にはもうコレだったし、可哀想だが本来なら普通のここの世界の子供だったらと思うのは管理者だからやろうか」

 日向も目にはしないが、その辺は一般人でも思うだろうと口にする。

「違うな、知っていれば一般人でも思うぞ」

 誰かが泣き崩れている、ここの家主、夫だろう。

「……泣いてる」

「しょうがないよ、誰だって悲しい事があれば泣くよ」

 理美は見てはいないが、光を反射するガラスのせいで警察が青いシートで惨劇を隠す瞬間が見えている。

 本来なら行方不明者探しにと思うだろう。

 夫だけ泣き崩れている事で理解出来た。

「まさか、奥さん巻き込まれたのか?」

 光喜の顔が一気に歪む。

 ジャンヌは流石に見る気が起きず、ずっとスマホを見ていたが、様子は分かる。

「だろうな、イビトだけなら行方不明者扱いだろうが、居合わせてしまった可能性がある」

「他にも親の居ない子沢山いるのにどうしてイビトを迎えた時点で同情は正直出来ないな……」

 日向の言葉に棘があり言い返したいものの、それ以上に今日たまたまフィンと行った児童養護施設にいる親のいない子供達を迎えていれば良かったのではと言う感情もあり、攻める気にもならない。

 そうしてそのまま過ぎていき、住宅地から抜け、本当に一体どこへ向かっているのか分からないまま小一時間立った時だ。

 長距離運転する人間しか止まらなそうな駐車場しかない場所に車が止まる。

「まだ時間があるな、どうする?」

「ならいい加減、如月先輩も髭ダンスチームに入ってもらって、世界の管理者とも繋がり持たせたら?」

「何? ジャンヌまださせてないのか?」

「あれ? アミーナは?」

「アミーナ先輩怒ってましたよ、どうして教えてくれないかったのかって」

「何の話? あれ、そういえば髭ダンスって確か……」

 どこかで見たような、聞いたようなと言った具合であやふやだ。

 理美がアプリ勧誘用QRコードを光喜に見せる。

「とりあえず、スマホからも出来るんでどうぞ」

「どうも――」

 言われるがままにQRコードをスマホで読み取れば、オンラインゲーム用チャットが出て来た。

 とりあえず登録だけしてとの事で、促され登録を完了すると勧誘者である理美にメールが届き、理美が何か操作したかと思えば、こちらのアプリにいきなり部屋案内が届く。

 その部屋に入ると、すぐにその髭ダンスというチームのみのメンバーだけの限定部屋だった。

「このまま登録するんで、加入希望押してください」

「うん、分かった……できた!」

 入ってすぐ異様なニックネームに気付く。

「まず、気炎万丈の人」

 理美が手を挙げる。

「はい、私です先輩」

「……解かない人は?」

 今度は一だ。

「おう、自分だ」

 なんとなくゲームや漫画から来ているのは物凄く理解出来るが、2つが異常を喫している。

「燃やしちゃった人、燃えちゃった人は?」

「私と――」

「ボクだな」

 よりにもよって日向とジャンヌだ。

『どうして日向さんとジャンヌ先輩が1番えぐいニックネームなの!?』

 言わずと知れた、歴史の1ページをこうも面白くというか素直というかどうしてそんなニックネームにと疑ってしまう。

「坂本さんはどれ?」

「どうしてそこで私は聞くの!?」

 坂本としてはすぐに気付いて貰えると思っての反応だ。

 ただ光喜としてはあの2人の自虐ネタに走ったのにはドン引きしている。

「だってよく分からない、理美ちゃんの場合は多分苗字だし、一さんも漫画だろうし、あっちの2人はもう正直言って――」

「気持ち分かるよー自虐ネタ過ぎて、去年入って貰った理美ちゃんもドン引きしてたし」

 理美までも歴史が詳しくなくても分かる有名な逸話で、まさか当事者達がこうまで遊ぶとは思っても見なかった。

「流石の私も有名な歴史位は覚えてます、因みに坂本さんのはくノ一レンジャーです」

 なんとなくこれだと分かってはいたが、レンジャーを入れたのが分からない。

「くノ一は分かるけどなんでレンジャー入れた」

「だよねぇ」

「因みに私はグンマーのアマゾネスです」

 いつの間にか琴が後ろに立っており、光喜は驚いてズッコケた。

「ぅおぉぉお⁉︎ ――イテッ‼︎」

 理美も一も気にせずに話す。

「あれ、いつの間に」

「上野国は大体群馬県ってことで大雑把に付けたんや、で誰連れて来た? 今回の臨時集会の発案者は居るんやろ?」

 琴は自信満々と言うかと思えばそうでもなく、一が嫌な顔になってしまう。

「勿論です……と言いたいのですが、ユダが連れて行くからと連絡が……」

「マジか⁉︎ 自分アイツ苦手なんだけど!」

「皆苦手だと思う、私一度も名前呼ばれた試し無いし」

「最低だな……ところで、なんで髭ダンス?」

「ドリフって言われて、髭ダンスを思い出し」

 理美の言葉に一がツッコミを入れる。

「だから、お前は一体いくつなんだよ」

 日向はそれに関して知っていた為名の由来を教えてくれた。

「と言うか、チームと言うか、メンバー増え過ぎたから部屋を用意しようって話になって色々な名前出た時にジャンヌが漫画の方言ったんだが、理美はそれを知らなかったらしくて」

「成る程、部屋作ったのは」

「そう私、これ颯太兄が作ったオンラインゲームで、なんか分からないけど、連絡事項用と言う名の暇な管理者達がわちゃわちゃやってて」

「流石にこれじゃマズイから提案したらその方が親切にアプリを作ってくれたんです」

 いつの間にか、黒髪の優しそうな雰囲気のある男性が立っていた。

「誰⁉︎」

 驚く光喜をよそに、一と琴もいつも神出鬼没だの連絡しろだろと言い、坂本と言えばあんたが来るのかとまで言ってしまう始末。

 理美に至っては面白半分で説明し始める。

「この人はニコッと動画でも有名な――」

 そんな最中、咳払いする声に皆そちらを見れば、ユダが頭抱えながらも呆れた目でこちらを向けていた。

「確かに人気は人気だが、透明ブロックの方だろ」

「まぁ、実際ニックネームも透明ブロックですし良いですよ」

 坂本が琴に絡みながら言う。

「琴ぉぉこいつ呼ぶなら呼ぶって言ってよぉ」

「おやまぁこの方苦手なんですか?」

「いやぁ、ユダは慣れた、でもこっちはねぇ……」

「この子が如月光喜君だね、よろしく諸葛孔明と言えば分かるね? 今は普通に諸葛亮、亮とでも呼んでください」

「でたぁぁ面倒な奴」

「あんたらこいつだけの為にここまで来てもらったわけじゃないわよ」

 更に奥から赤毛の女性も出て来たのを見て、坂本としては会いたくない1人のようだ。

「おっかない人まで連れて来た!」

「おっかないって言うな!」

「この人は看護を変えたと言っても良い、ナイチンゲールだ」

「蝶子の頼みだから来たんだ、今は医師なんでね」

 光喜が驚く中、よく見れば何台もの車がやって来て、この中の全員が管理者だと知る。

 一はパンと手を叩き、言った。

「んじゃ、揃ったしクライヴの件とその他諸々の話でもしましょうか」


 

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