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「どうしてそんな冗談言ったの社長! ガチで適当な格好になったんだけど!」

 とは言うものの、結構今風のお洒落な格好なのはやはりセンスだろうか。

 光喜もその辺は謝罪したが、冬美也は真面目に面白そうと思っていた様だ。

「ごめんて、まさか本気にするなんて思ってもいなかったし、優紀君ならともかく冬美也まで放置するとは思ってもみなかったんだけど!」

「面白い事が起きそうと思って」

「絶対に嘘だ!」

 日頃の恨みでもあるんだろうかと、まじまじと考えると優紀曰くちょっとした事だった。

「兄ちゃん、お洒落苦手なんだよ。ぼくも含めて本当に適当で着れれば良いって感じで」

 本当にしょうもないなと光喜は思いつつも自身も適当な格好だ。

「あはは、俺も適当派だからなんとも」

 例のパン珈に着いた。

 朝の9時半、もう有る程度は席が埋まっているが、丁度大きな席が空いていたのでそこに座った時だ。

「なんだお前達もう来たのか!」

 ザフラが隣の小さな席でアミーナと一緒に居た。

「おはよう、なんだ考える事は一緒なんだ」

「そうだ、我も一度ここの店に行ってみたかったのだ!」

 まだ朝の時間、まさかと思ってつい冬美也が飲み物以外で頼んでいないか聞いてみる。

「お前らまさかだと思うが、飲み物以外に他頼んでないだろうな?」

「えっ? 頼んではいけなかったのですか?」

 一応メニューにも細かな部分の話があるので、きっと分かってくれると思っていたのだが、やはり知らないようだ。

「あー……でもほら、一応ね?」

「この後思い知らされる、パン珈の恐ろしさを……」

 案の定、頼んだメニューの他にパンが付いてきた。

「なんで、断らなかったんだよ」

「い、いや、その、面白そうだなと」

 しかもまた色々頼んだなと突っ込む程だ。

「恐ろしい程の量ですね、これが噂の逆詐欺!」

「分かってて、頼んだのか食べれるのかそれ?」

「ふふふ、頼んでみたかっただけだ!」

「なんでそんな自信満々で拒否なんだ」

「ピザパンダトーストが見たくて」

 パン珈のピザパンダトーストの中央にはちゃんと公式キャラ、食パンとパンダの掛け合わせたパンコの顔が描かれており、スタッフの絵心によりけりで外れを引くとエビッターではしばしばバズる為か、外国人観光客にウケている。

 しかし、他にも色々頼んでたのか狭いテーブルは溢れんばかりの量とかす。

 光喜も呆れながらも突っ込んだ。

「多過ぎでしょ!」


 結局、ザフラとアミーナが食べれなかった分は男子4人で食べる羽目となり、かなり満腹な状態で店から出た。

「食べた……お前ら、有り得ねぇだろ、アレは?」

「すまん、ただ正直な話、あそこまで量があるなんて感動した」

「頼むな!」

「ちゃんとこっちもちなんだから得したモノだろうなぁ? 特に1番食べてたフィン」

 綺麗に尚且つあの量を食べきったのがフィンだ。

 2番目が光喜で3番目は意外にも優紀、もっとも食べていなかったのは冬美也時た。

 しかもザフラとアミーナよりもだ。

「確かに俺でも結構限界だったのによく食べたよね?」

 この瞬間から他愛のない会話なのに空気が重くなるのを感じた。

「いや、昔からの癖で下手するとこれが最後の食事になる場合があるからどうしても掻っ込む癖が直らなくて」

 フィンの目が死んでいる、しかも冬美也に至っては思い出した何かで顔を隠して絶望している。

「空気がやばいんだけど? どういうこと?」

「見ませんよ! なんか怖いから!」

 流石のアミーナもフィンの過去だけは見たくない。

 微妙な空気に痺れを切らせた優紀が聞く。

「と言うか、どこに向かっているの?」

「殺人現場だ!」

 最近ザフラも楽しんでいるようで良いのだが、もう少し考えて言ってほしいと冬美也は怒る。

「もっとオブラート包んでください!」

 既に殺人現場となった廃ビルまで来た。

 しかし案の定、警察の警備があるだけでなくまだ捜査が続くのか、スーツ姿の警察がちらほらいる。

 よく見ればかなり強面なメンツも揃っており、これは近付くと返って叱られそうだ。

「ここから触ってみるとか?」

「それはそれで職質もんだろ?」

 自分達意外にも動画撮影しようとする輩もいたが、直ぐに注意だけでなく叱られていた。

 こうなると下手な動きも出来ない。

「とりあえず、後ろ回れるから見てみる? いるとは思うけど」

 フィンの提案で、廃ビルの裏に回る事にした。

 

 ビルとビルの狭い道を通ると、意外と手薄だと思っていたが、やはり警察が万が一対策で回っている。

 今回は無理だなと思い、帰ろうとした時だ。

「何やってるの?」

 急に後ろから声を掛けられ絶叫する。

「うわぁぁぁ!!」

「ごめんなさい! 許して!!」

 フィンがごまかそうと後ろを振り向けばそこには坂本が居た。

「ただの……って坂本さんじゃん」

 1番驚いていたアミーナがすかさず突っ込んだ。

「驚かすな!」

「こっちのセリフなんですが? ここは関係者立ち入り禁止よ、ほら帰った帰った」

「坂本さんって実は4課の人だった?」

 光喜の言葉にまだ話していなかったが、どうしたものかと悩んだ末に理由だけ聞く事にした。

「……で、何がしたくてここに来たの?」

 流石に冬美也もフィンももう普通の小説家として見られていないのだから、もういい加減話せば良いのにと呆れてしまう。

「まだ話してないので?」

「いい加減話せばいいのに」

 そんな会話を聞こえていない光喜は坂本にも昨日の卑弥呼との会話を話す。

「――ってことで来たんですけど」

「あぁ……大事な記録部分を念入りに壊してくれたからね、クライヴが」

 結局、犯人がクライヴで合っているようで、冬美也としては犯人が分かればもう自分は要らないだろうと思って帰ろうとしたが、坂本はもっと詳細が欲しいのか、冬美也を捕まえる。

「やっぱりアイツか」

「なら分かっているなら、オレら」

「いや触って行け、卑弥呼が言うなら行ける可能性がある」

「えぇぇ結局触んの? いいじゃんもう分かっているなら、てか他触っても」

 冬美也の嫌がる理由もなんとなく分からなくも無いが、1番知りたいのはやはり中身だ。

「私が知りたいのは、パソコンの中身よ!」

「なら――」

「ですから、壊れた部位は見れますが、何が入っていたかは見れないのです、前に話したでしょうが」

「なんで理美の時は見れたんだよ」

 またあの話をするのかと深いため息と共に何度でも言ってやると意気込みでアミーナは話す。

「あの子の記憶を見たんです、知るに愛されし者ならもっと細かく見れますが、こっちは過去の状況からの判断なのでってこれも前話したでしょうが」

 ここで話し合っていても警察にいつ気づかれてもおかしくはない。

 そこで坂本が場所を移動する為促す。

「なら、こっちにおいで、遺品とかでも見れる筈よ」

「結局触らないと行けないんかよ」

 本当に触りたくないのだろう、項垂れている。


 少し離れた駐車場のワンボックスに乗っていたのは、日向だ。

 日向に坂本が代わりに話すと分かりやすく深いため息と共にこちらに話せば良かったのにとまで言われる始末。

「で、結局お前達が来たと、それなら自分達に先に話を通せば、色々便宜は図るぞ?」

 車に乗り込んで早々、冬美也はもうヤケクソで早く終わらせたい一心だ。

「あーはいはい、で一体どうやって今度はその遺品持って来たんだ?」

「こう見えて、私は顔が幅広いのよ」

「どっちに?」

 フィンの問いに物理で言っているのなら、拳が飛ぶとばかり見せびらかしながら坂本が黙らせにかかる。

「お前は黙っていなさい」

「冗談だったのにー」

 真剣な顔になって光喜は聞く。

「どんな遺品を盗んだんです?」

「光喜君違うの! 盗んでないの! 借りたの!」

 ザフラ的にはこれはどう見ても盗むのはもっての外だが、借りるのもダメだろうと思うが口にはしない。

『どっちでも悪いだろそれ』

 このまま放置すれば話が長々となってしまうので、冬美也は手を伸ばし言う。

「で、何を触れば」

「これです」

 坂本からビニールジッパーに入った2つを渡された。

「中身の無い写真立てと……パソコンの本体の部位じゃねぇか⁉︎」

 パソコンの部位をまさか持って来るなんてと驚く冬美也と違い、坂本は写真の中身だけ借りれなかったのを悔やむ。

「流石にプライバシーって事で中身は貸し出せて来れませんでした」

 それよりも光喜としてはなんでそんな重要そうな1つを借りれるのかと言う事だ。

「いや、なんでそんなの借りれるんですか⁉︎」

 ずっと見ていた優紀はなんで兄が見れるのかよりも、警察の甘さについて本当なんだと勘違いが起きていた。

『日本人の警察って色々甘いって噂本当なんだ』

『優紀君、完璧に勘違いしてそうだけど、この状況は言えないから黙っとこ』

 フィンも一々説明するのが面倒なので黙ったままだ。

「とりあえず、見るったって、触っているだけで良いのか?」

「そうですね、肩借りますよ」

 アミーナが冬美也の肩を触るも、まだ何も見えない。

 力が疎らなのだろうかと考えるも開花しても無いとも考えられる。

 冬美也もなんとなくアミーナなの様子で見えていないのが伝わるのだろう、そこで少々荒業だが直に触って少しでも分かるようにしてみようと考えた。

「中身……出しても良い?」

「えー後で拭きなよ」

 それで良いのかと回りが突っ込もうとした時、冬美也が最初に触ったのは写真の入っていない写真立てに触れた直後だ。

「はいはい……――ゔっ!」

 何かが見えた。

 暴れ回るクライヴと慌てふためく大人達、飛び散る血に消えて行くイビト、内臓部位まで飛び出しているのが出ている。

「見えました……大丈夫ですか?」

 危うく朝食べたモノが飛び出して来そうな位、気持ち悪さがあり、今の今まで見えなかったのが見え困惑する。

「オレも……見えちまった、オレそんなの無い筈なんだけど? なんで?」

 アミーナは背中を摩るも、早く残りを見て欲しいと頼む。

「それよりもう1つ」

「う、うん」

 気分が進まないものの見なければいけない空気に頑張った。

 今度は、パソコン内の画像だ。

 何を見ているのかと言えば、イビトの子供達のリストを隈なくチェックしている。

 その中から1つ冬美也でも分かるモノが見えた。

「あっ動物園で出会ったあの子のリストがあった」

「書きますので何かメモを」

 坂本から渡されたメモ帳にアミーナは先程見えたリストを丸写しのごとく書き出す。

 ただ冬美也の言った言葉に光喜が分かってしまう。

「動物園ってあの子の事だよね? 確か由梨花って子」

「由梨花ちゃんって迷子の?」

 全く話について来れなかった優紀だったが、由梨花と言う言葉だけは理解出来た。

 冬美也もあの時はすぐに両親が迎えに来たので、後は会う事もないだろうと一期一会と思っていたが、万が一クライヴに見られていたらと思うとゾッとする。

「そうそう、でもあの時すぐ親が迎えに来てくれたから良かったけど、下手したら危なかったな」

 光喜は動物園だけでなく墓参りの時にも出会っているので、フィンはニヤミスである。

「ちなみに、フィンはニヤミスしてるんだよねぇ」

「まじか⁉︎ どこで⁉︎」

「墓参りの時」

「あぁぁぁぁ、でも俺が墓参り同行するのはおかしいでしょう普通に」

 1度見ておきたかった反面、普通の赤の他人である人間が人様の墓参りに同行するのは本当におかしいのは代行以外ならよく分かる。

「まぁ確かに」

 日向も手伝って貰い非常に助かったと感じながら労い、アミーナから渡されたメモ帳を目に通しながら1度戻ろうと考えており、家の近場までなら遅れると判断して聞く。

「お疲れ様、自分達もこれさえ分かれば少しは行動範囲が広がるし、1度戻るから帰るなら近場まで送るけどどうする?」

 光喜も真っ直ぐ帰る気でいたが、この場所から家の間に確か店が出来たのを思い出す。

「なら、俺、ちょっと寄りたい場所あるのでそこに下ろしてもらえれば」

「どこだ?」

「あそこです、最近出来たホームセンターの、ちょっと棚が手狭になっちゃって追加したくって」

「場所的に大丈夫だから良いぞ」

 これなら大丈夫かと日向も判断した中、フィンも寄りたいようだ。

「なら俺も付き合う」

 冬美也が優紀も付き合いたいなら合わせる気で聞くが、優紀的になんか探偵ごっこも終わったのかと言った顔で、もう寄りたい場所も無いので帰りたかった。

「優紀は?」

「ぼくは帰りたいな、兄ちゃんは?」

「一緒に帰ろう、気分がちょっと……」

 案の定あの光景を見てから気分が悪く、優紀と共に帰ることにする。

 勿論ザフラ達もどうするか日向は尋ねれば、もう近くに運転手を呼んでいた。

「ザフラ達は?」

「午後から用事があるから近場に運転手呼んでるから、このまま降りよう」

「えぇ要人の挨拶回りがあるので、この付近まで来るよう手配しましたので」

 ザフラとアミーナは車から降り、日向は気をつけるよう言いながら、ザフラとアミーナも軽く返事して駐車場から出て行く。

「そうか分かった、気をつけて」

「あぁ」

「では進展あったら教えて下さいね」

 坂本も誰かに電話をしたかと思えば、車から降りた。

「ごめん、鶴野がパン珈にいるから、今からこの話をしながら情報共有してくるわ」

 まさかの鶴野もパン珈を使うのかと高等部男子3人組が驚き、話し出す中、日向は気にせず坂本と話す。

「分かった、子供達はわたしが近場までだが責任送っておく」

「了解、私も分かったら連絡するからじゃ」

「助かる、こちらも一達に情報共有した後また連絡する」

 どうやら、日向も一達に会う約束をしていたようだ。

 自分達にもとフィンが言うと光喜に言うから後で聞くようにと言いながら車が発進した。


 ――10分過ぎた頃、ホームセンターの近くで降ろして貰い、冬美也と優紀と日向と別れ、賑わう商業施設の道を歩く。

 ホームセンターまで後少しとの所で、回りの人間達が騒めくのに気付いた。

 決して悪い事ではなく、ある人物に皆が驚いているのだ。

 花壇とベンチが併設された場所にフレアが座っていた。

「お久しぶりですね2人共」

 

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